合法チート?世界初の安全な「スマートドラッグ」にどう向き合うか

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2015年09月08日 06:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

学生時代はもちろん、社会人になってからも度々挑戦する機会がある“試験”。自らの達成度を評価し、さらなる学習のきっかけに試験を利用することもあれど、やはり試験結果で何らかの評価がなされるのが大半だろう。

そんな時、試験の勉強で、更には本番で、自らのパフォーマンスを向上させる“薬”があったら、あなたはどうするだろうか。

かつては、こんな夢のような薬は非現実的か、もし存在するとしても極めて高額となり、一部の大金持ちを除けば、まるで縁のないものと考えられていたという。

しかし、現実には私たちのすぐ手の届くところにあり、効果も確かなものだと明らかにした研究が、大きな話題を呼んでいる。

ナルコレプシーなどの治療に用いられる「モダフィニル」

科学誌『Nature』が2008年に発表した調査によると、アンケートに参加した5人に1人が、試験前に集中力を向上させるために、なんらかの薬を利用したことがあったという。そして、そのうち実に44%が『モダフィニル』と呼ばれる薬を利用していたことが判明。この薬は睡眠障害の一種であるナルコレプシー(別名・居眠り病)などの治療に用いられる、“覚醒促進剤”のひとつだという。

こうした実態がある一方で、(ある意味では当然のことながら)睡眠に関する障害を持っていない人が、この薬を利用した際の健康への影響については、コンセンサスがなかったという。

そこで、ハーバード大学とオックスフォード大学の研究者からなるチームは、モダフィニルの包括的な調査を行った。

健康な人の脳の働きにポジティブな効果

論文は、神経精神薬理学を主な研究領域とする専門誌『European Neuropsychopharmacology』誌に掲載。

最近実施された、24にわたるモダフィニルの調査を分析した研究チームは、健康な人がこの薬を服用すると、注意力や記憶力の向上に加え、問題解決能力やクリエイティブな思考力にいたるまで、幅広くポジティブな効果が得られると結論づけた。その中のある調査によると、モダフィニルが取り組むべき課題を、より愉快なものにさせていたそうだ。

長期間の使用による作用の情報は、まだ限られたものだというが、短期的には副作用は少なく、研究で見られた吐き気や頭痛といった状態は、プラシーボ群でも同様に見られたとのこと。また、常習癖がつきやすいといったような性質もなく“安全”であることが分かったという。

カフェインやニコチンも短期的にはプラスの作用

モダフィニル以外の『スマートドラッグ』では、多くのマイナスの効果も見られることから、論文の著者のひとりは、このモダニフィルが、世界で初めての安全な『スマートドラッグ』のようだと指摘している。ただ、長期的な服用に伴う効果については研究が不十分であり、またそうした治験が承認されることは道徳的にも難しいだろうという見方も示している。

よく知られているように、カフェインやニコチンも短期的には脳の働きにプラスの作用をもたらすが、長期的には効果は打ち消され、さらには欠乏によって認識パフォーマンスに影響を与える。モダフィニルが、こうした物質と異なるという保証は、どこにもないと考えることもできるようだ。

言うまでもなく、研究チームは、モダフィニルを本来の用途に沿わずに使用することを助長する意図はなく、こうした結果が出たことを踏まえ、幅広い議論の必要性を提起している。

私たちは、治療以外の目的での使用を容認するのか、それとも異を唱えるべきか、またそれはどこで線引きされるべきなのか。今後、科学者や政治家を含めたコンセンサスづくりが求められているのではないだろうか。

【参考・画像】

※ Modafinil for cognitive neuroenhancement in healthy non-sleep-deprived subjects: a systematic review – European Neuropsychopharmacology

※ Poll results: look who’s doping – nature

※ nito / Shutterstock

※ ume-y / Flickr

このニュースに関するつぶやき

  • カシコくなった時に、用法用量の大切さについて考えてくれたらいいんだけどなーwどんなものでも長期にあるいは大量に摂取すれば害は出るよ。多分。
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