結婚式の貸衣装「キャンセル料」が高すぎる! 当事者ではない消費者団体が訴えたワケ

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2015年09月12日 11:11  弁護士ドットコム

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結婚式の貸衣装をキャンセルした場合の「解約金」が高すぎるのは、消費者を保護する消費者契約法の趣旨に反するとして、大阪府のNPO法人「消費者支援機構関西」が9月上旬、貸衣装会社2社を相手に消費者団体訴訟をおこした。


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報道によると、NPO法人には、複数の消費者から、2社の高額なキャンセル料について相談が寄せられていた。2社の契約では、結婚式の30日前までにキャンセルする場合は、契約額の「30%」を解約金として支払う必要があった。相談の中には、結婚式の5か月前に挙式衣装を予約し、その3日後にキャンセルしただけで、10万5000円を請求された人もいたようだ。



訴訟の内容とともに注目したいのは、提訴したのが当事者ではなく、相談を受けたNPO法人だったという点だ。なぜ、第三者が提訴できたのだろうか。また、今回の裁判の意義はどんなところにあるのだろうか。消費者問題に詳しい上田孝治弁護士に聞いた。



●消費者団体が事業者の「不当な行為」を止めるために提訴


今回は「消費者団体訴訟」という仕組みが使われている。



「消費者団体訴訟とは、国が認定した『適格消費者団体』と呼ばれる民間団体が原告となり、消費者契約法などに違反する事業者の行為を裁判手続を使って差し止める制度のことです。2007年からスタートしています。現在、この適格消費者団体は全国に12団体あり、すでに多数の訴訟が行われています」



普通の裁判と違いはあるのだろうか。



「通常の裁判は、個別の被害者が、自分の被害を回復するために起こします。しかし、個別の被害者の被害回復ができたとしても、事業者がその後も不当な勧誘や不当な契約条項の使用を続ければ、同種の被害が繰り返されることになります。



そこで、国は、当事者ではない消費者団体に、そのような不当な行為の差し止めを裁判で求める権限を与えたわけです。消費者契約法などに違反する事業者の行為をやめさせることができ、被害の未然防止や拡大防止につながります。



この制度では、今回のようなキャンセル料の問題だけではなく、幅広く、消費者契約法などに違反する事業者の不当な勧誘や不当な契約条項の使用などが差し止めの対象になります。



今回のケースでは、貸衣装会社2社の定めている解約金額が妥当かどうかが争われることになります。仮に消費者契約法に違反して不当ということになれば、2社は今後、同様の解約金条項を使用できないことになります」



では、被害を受けた消費者には、不当に取られたお金は戻ってくるだろうか。



「いいえ。この制度はあくまでも差し止め、要するに不当な行為をやめさせるよう求めることができる制度です。したがって、仮に解約金条項が不当であると判断されたとしても、この解約金条項に従って解約金を支払ってしまった個別の被害者が、事業者から返金を受けるというものではありません。返金を受けるには、個別の対応が必要です」



上田弁護士はこのように話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/


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