東京に巨樹と野生のイルカ100頭!奇跡の島「御蔵島」

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2015年09月12日 22:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

野生のミナミバンドウイルカ100頭以上が生息し、手つかずの原生林が広がる島『御蔵島』は、東京都でありながらその生態系は奥深く、エコツーリズムの拠点としても注目されている。

奇跡の島「御蔵島」

東京から南へ約200km、いわゆる伊豆七島のひとつである『御蔵島』は、人口約300人の小さな島だ。

島をめぐる海は黒潮が流れ、火山活動が5,000年以上なかったことから、原生林や1,000年を超えると思われる全国有数の巨樹の森がある。この豊かな森があることで、栄養豊富な水が海に流れ込みイルカをはじめとする海洋生物も豊富に生息している。

『御蔵島』を船で一周すると、島は切り立った崖におおわれ、水の流れが崖線に幾つもの滝を作って、海に流れ落ちる様を海上から見ることができる。

『御蔵島』は豊かで清涼な水にも恵まれており、それが森の形成にも役立っている。

御蔵の森の大部分が、スダジイ、ツゲ、クワの原生林だ。島の南東にある南郷の森には、『大シイ』と呼ばれる幹回り約14メートルもある、日本でも最大級のスダジイの木がある。圧倒されるような大きさはまさに森の主のようだ。

『御蔵島』には『大シイ』をはじめ、確認されているだけで、巨樹が350本以上ある。これは、屋久杉で有名な屋久島の約5倍にあたるという。あまり知られていないが、『御蔵島』は、日本一の巨樹の宝庫なのである。

村人は、その昔から森の木を大事にし、森の中には、神山として崇めてきた場所があちこちに点在している。

島は地形が急峻で崖崩れが起きやすいうえに、冬には激しい季節風が吹きつける。巨樹が林立し、大地にしっかり根を張ることで、天然の防災要塞となっていることを村人たちは昔からよく知っていたのだろう。

古来からの巨樹が息づく森(写真:筆者)

森を歩くと、いたるところで、島で『カツオドリ』と呼ばれる、オオミズナギドリの巣穴が見られる。

カツオドリとは翼を広げると約1.2mになる海鳥である。毎年2月から11月にかけて『御蔵島』で営巣し、子育てをする。その数は数10万羽以上。あまりにも多いため生息数を正確に把握できていない。

たぶん世界でも最大級の繁殖地だろう。10万羽以上の鳥が飛び立つための飛行台にもなっている樹木は、カツオドリのひっかいた足跡だらけだ。

苔むした倒木から、新しい生命が芽吹き、鳥たちのゆりかごとなる御蔵の森は、そこにいるだけで命の循環が確かに感じられる。

名前で呼ばれる御蔵島のイルカたち

群れで行動するイルカに会うことも多い(写真:友人許可済み)

『御蔵島個体識別調査2011』によると、『御蔵島』には、110頭ほどのイルカが近海で確認されている。このイルカたちは、もちろん餌付けをされていない野生のイルカだ。

彼らは、非常にフレンドリーで、人間を恐れず、時には一緒に泳ぎ、遊んでくれる。世界各地にイルカが生息している場所は数多くあるが、これほどまでに無防備に人間と交流してくれる、野生のイルカがいる海が東京都にあるというのは、驚嘆に値する。

この島に、これほどの野生のイルカが生息している理由にはいくつか理由があるようだ。ひとつは、黒潮と『御蔵島』の豊かな森に育まれた豊かな海域があるということ。もうひとつは、島の人にとって、イルカははるか昔からいつもそこにいるもの、当たり前のものであったにもかかわらず、『御蔵島』では大規模な漁をしたり、攻撃をしてこなかったこと。

イルカの存在が、村の貴重な観光資源となったことについて、村の観光ガイドを務める広瀬豊彦さんは「イルカの恩返しかもしれない」と話してくれた。

島では20年ほど前から『イルカの個体識別調査』が行われ、ほとんどのイルカは、ヒレや体に残る傷を元に識別され名前がつけられ、繁殖や成長状況なども明らかになってきている。イルカ1頭1頭が村民のように名づけられ、その成長を見守ってきた村人たちがいるからこそ、イルカがこの海を変わらず棲み家としているのだろう。

エコツーリズムを通じて新しい東京の魅力に

この貴重な生態系を守ろうと、『御蔵島』は2004年に自然環境保全促進地域に指定され、エコツーリズムがスタートしている。イルカウォッチングや巨樹の森に入るには、東京都の認定自然ガイド資格を有している村の人が同行することや、1日に出港できるイルカウォッチングの船の数を30隻までとするなど、持続可能な観光の形を探っている。

『御蔵島』へのエコツアーを通じて、自然体感型の環境教育プログラムを12年続けているNPO法人 みらいじま代表の根岸弥之(みつのぶ)さんは、長年国内外の海を体験した中で、「本物の自然体験ができて、東京から週末だけでも行ける場所」として、『御蔵島』を選んだと説明する。

子供参加の回では、最初は海を怖がっていた子供たちが、勇気を出して飛び込み、野生のイルカと触れ合うことによって変わっていく姿を毎回目の当たりにするという。

参加者は子供たちからOL、ビジネスマンまでさまざまだが、誰もがこの島の自然に触れ笑顔で帰っていく。根岸さんは「『御蔵島』での自然体験が、身近な環境問題への糸口になってほしい」と言う。

東京オリンピックを控え訪日観光客が急増する現在、『御蔵島』を含め、自然の多様性にあふれた、伊豆七島は新しい東京の魅力と可能性を秘めている。来訪者を増やしながらも、島の人が守ってきた生態系をどう保全し、それをどう活かしていくか、より戦略的でかつ考慮されたエコツーリズムが求められている。

【参考・画像】

※ NPO法人 みらいじま

※ 『御蔵島個体識別調査2011

このニュースに関するつぶやき

  • 写真が素敵…… 見ているだけで癒される。イルカが住む、この綺麗な海を…世界を、ずっと守っていけたらと思う。
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