まるでパニック映画の始まりのようだ。
シベリアの永久凍土から、3万年前のウィルスが目覚めようとしている。
『米科学アカデミー紀要』(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に掲載された論文によれば、ロシア北東部の永久凍土から、フランスの研究チームが発見したのは、現代のアメーバにも感染する可能性がある、全長0.5ミクロン以上の巨大なウィルスだ。
この発見は、大きな危険を秘めているのだという。
永久凍土からはこれまでもウィルスが発見されている
実は、永久凍土から古代の大型ウィルスが発見されたのは、2003年以降今回で4例目となる。
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今回発見されたウィルスは『Mollivirussibericum』と名付けられた。「シベリアの柔らかいウィルス」という意味らしい。このウィルス自体は人には感染しないらしいが、まだ永久凍土にはどのようなウィルスが眠っているか分からないのだ。
全長が0.5ミクロン以上のウィルスは巨大ウィルスと分類されるため、全長0.6ミクロンとなる『Mollivirussibericum』は巨大ウィルスに分類される。
このウィルスを発見した研究チームは、2013年にも同じく巨大ウィルス『Pithovirussibericum』を発見しており、そのウィルスを研究室で蘇生させて遺伝子構造を分析していた。
今回見つけたウィルスについても同様に、安全な実験室内でアメーバと同じ環境に置いて、蘇生させて調べるつもりだという。この際、このウィルスが人間や動物に感染して発病しないことを調べなければならない。
永久凍土にウィルスが眠っている危険
永久凍土からウィルスを発見した研究者らは警告する。永久凍土にはどのようなウィルスが眠っているかわからないからだ。
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しかし、永久凍土の一部は気候の変動によりどんどん溶け出している。
それだけではない。ちょうど今回のウィルスが発見された地域の永久凍土では、石油を初めとする鉱物資源を得る為の乱開発が進められているのだ。
これらの理由から、永久凍土はもはや“永久の凍土”ではなくなっている。
映画のようなパニックが起こりうるかも?
その結果、例えば既に根絶したはずの天然痘ウィルスのような危険なウィルスが、蘇ってしまう可能性があると、研究者らは警告する。
しかし、気候変動や開発による永久凍土の溶融は、研究者等の調査を待ってはくれない。彼らが気付く前に、どのようなウィルスが目覚めてしまうか分からない。
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以下はパニック映画の始まりのシーンを筆者が想像したものだ。
……近い未来のある町。
シベリアの採掘現場に、出稼ぎに来ていた一人の作業員が帰ってきた。その数日後から町には奇妙な病が流行り出す。
調査に乗り出した研究者は、患者から発見されたウィルスを見て目を疑う。
こんなシーンは映画の中だけにしてほしいと願うが……。
【参考・画像】
※ In-depth study of Mollivirus sibericum, a new 30,000-y-old giant virus infecting Acanthamoeba
※ 3万年前の新種巨大ウイルス蘇生へ、シベリア永久凍土で発見 仏研究チーム – 時事ドットコム
※ Stockdonkey / Shutterstock
※ Peeradach Rattanakoses / Shutterstock