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東芝の不正会計問題で、奈良県に住む個人株主が9月上旬、東芝の歴代役員28人に10億円の損害賠償を請求する訴訟を起こすように求める文書を同社に送った。
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報道によると、株主らは、室町正志社長ら歴代役員には、粉飾決算を長年放置してきた責任があると考えている。大阪の弁護士らでつくる「株主の権利弁護団」が支援している。東芝が60日以内に裁判を起こさなければ、株主代表訴訟を東京地裁に起こす方針だという。
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ここで問題となっている「株主代表訴訟」とは、どんな手続なのだろうか。会社法に詳しい今井俊裕弁護士に聞いた。
「取締役その他の役員等や執行役は、会社から委任を受けて日頃から任務を遂行しています。任務中に注意義務違反があり、そのために会社に損害を与えてしまえば、当然ながら会社に対して損害を賠償する責任が生じます」
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賠償責任を追及するのは、誰の役割なのだろうか。
「この役員等への賠償請求は、本来は会社の業務の一環です。ですから、会社の種類によっては監査役や監査委員等が、会社を代表して追及するのが本筋でしょう。
しかし、同じ会社の役員等の間では、しがらみや馴れ合い、あるいは『明日は我が身』等の思惑があるケースもあるでしょう。
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そのため、きちんと責任の追及をせずに、うやむやにされてしまうリスクがあります」
そんななれ合いをされては、株主が困るのではないだろうか。
「そうならないようにするための制度が『株主代表訴訟』です。
これは、責任を追及すべき者が、その職務を果たさない場合は、会社の実質的な所有者であり最終的な被害者である株主自らが、会社のために、注意義務違反のある役員等に対して、損害賠償を請求できる制度です。
『代表』と呼ばれますが、会社の代表者としてではなく、あくまで株主それぞれが原告として訴えを提起できます」
今回、東芝の株主はいきなり役員に裁判を起こすのではなく、まず会社に対して「裁判を起こせ」と求めている。遠回りのようにも見えるが、なぜ、そんなことをするのだろうか。
「手続として、株主が訴える前に、まず会社に対して、責任原因のある役員等を訴えよと請求しなければなりません。責任原因のある役員等を訴えるべき主体は、第一次的には会社だと考えられているからです。
今回東芝の株主が、直接裁判を起こさず、東芝に対して請求したのは、そうした理由があるからです。
この請求を会社が受領してから60日以内に訴えない場合は、その訴えない理由を逆に株主に通知して回答しなければなりません。その回答に株主が納得できなければ、株主自らが代表訴訟を提起できるのです」
今井弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
平成11年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における個人情報保護運営審議会、開発審査会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/
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