溢れる「無料の」就活塾 実態は有料コースへの誘導と人格否定?大学生が潜入レポ

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2015年10月02日 16:00  ソーシャルトレンドニュース

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"溢れる「無料の」就活塾 実態は有料コースへの誘導と人格否定?大学生が潜入レポ"

就活解禁が3月に後ろ倒しになり、多くの企業の採用スケジュールが後ろ倒しとなった2015年。企業からも学生からも批判の声が多く、今後また就活時期が変更になるかもしれないと噂がありますが、確実なのはただひとつ。

就活に対して漠然とした不安がある大学生が多い

ということ。「いつまでになにをすればいいの?」「だれが指導してくれるの?」「ちゃんと内定もらえるの?」などなど心配は尽きません。

とくに大学3年は先輩たちの「就活つらい話」を抗う術なく聞かされて、正直ソレについては考えたくもない人が多いと思います。


就活を助けてくれる塾があるって、本当?

実は筆者も1年前まではそんな迷える子羊のひとりでした。
そんな悩みを持っていたところ、知り合い以上友人未満の男子大学生が「いいところがあるんだけど、くる?」と余裕そうな表情で誘ってきました。

よくよく話を聞くとどうやらそれは就職塾なるものらしいのです。

一瞬目を輝かせ、詳しく内容を尋ねると要点は4つ

・学生を対象に就活をサポートしてくれる
・1人の学生に対して1人の指導官がついて、相談や私生活の悩みも聞いてくれる
・塾の中で多くのイベントが催され、自分に合った企業を紹介してくれたりする
無料

いやいやいやいや、お兄さん。

このご時世、無料でそこまでしてくれるなんてないでしょう!

なにが嬉しくて、しがない学生の就活のお世話をしてくれるんですか! どんな見返りを用意すればいいわけ?

と、心の中でツッコミを連打していたところに一言。
「俺はワンランク上の有料のやつに通っているんだけどね」

ははーん。なるほどどうやら学生がおいしいだけの話ではないようですね。
そんなにうまい話があるわけがない、日本には古来より「タダより高いものはない」という文化があるものです。

実際にその塾に通っていたとある女子大生は
「私は友人の猛プッシュに押されて入塾しました。月1万円近く支払って通いましたが、半強制的なのと有料イベントへの勧誘が多くてイヤになってやめてしまいました。今でも来るようにと連絡がありますが無視しています」
と語っていました。


仮に本当に良い就活ができるなら誰にも教えず、ひっそりと通うものだと思います。就活において、ライバルは減らしてナンボですもんね。もしかしてその友人とやらはすでに組織に洗脳された手先なのではっ!
なんて妄想は広がるばかり、これはどうやら調べてみる必要がありそうです。

うさん臭さムンムンな就活塾の真相を暴くため、現役大学生の立場を利用して半年通ってみました

その模様と、実際に通っていた学生の声を交えてレポートいたします!

塾内部に潜入!無料でここまでしてくれるのっ?

都内某所……。ひしめく雑居ビルの7フロアを借りて開講しているその塾。

メインフロアの階は教室くらいのスペースで、簡易的な仕切りで作られた15くらいの小部屋で埋められています。高校生が通う個別塾のような雰囲気ですが、狭くて人が多いので熱気で少々空気が悪く感じます。行きかう指導員とたくさんの大学生にその盛況ぶりがうかがえました。

さっそく、筆者のサポートをしてくれる指導員の方と対面しました。
自己紹介から塾の仕組みまで、ハキハキと笑顔で話す会話は実に和やかな雰囲気です。

要点をまとめると

・自己分析やESなど就活に関することのお手伝いをする
・学生に合いそうな企業を紹介してくれる(しかも優先的に説明会を予約できたりする)
・スカウトや自己PR大会など多くのイベントがあり、学生同士の交流もある
無料

とのこと。右も左もわからない状況でも、これだけのことをしてくれるなら就活への不安も和らぎそうで、大盛況なのも頷けます。筆者も胸を躍らせ、週1回のペースで通うことになりました。

通い始めて1か月ほどがたち、就活のノウハウや自己PRのコツを真剣に教えてくれる姿に親しみを覚えすっかり打ち解けたところ、指導員からこんな一言が……。

「実はさらに就活を意識したコースもあるんだよね。そっちは有料だけど、絶対に力になるし説明だけでも受けてみない?」

き、きた……!

内心そう思いました。これが噂の勧誘でしょうか。もともとそれを暴くために潜入捜査を開始したのですから(誰も頼んでない)、前のめりで参加することにいたしました。

とうとう有料コースへ。言葉巧みな手口とは……。

数日後、有料塾の指導員の方に個室で説明を受けます。その方も、美人で常に笑顔を絶やしません。

「私たちの塾に興味を持ってくれてありがとう。有料コースと聞くと怪しいと思ったでしょう、宗教か?とか身構えてしまうよね。私も最初はそうだったんだ」

と、いきなり核心を突いてきました。しかし逆に相手の不安点を話題に出し、油断させる作戦かもしれません。こちらは簡単に気を許すほど軟弱ではありません、一層身構えて戦闘態勢の疑いの目を向けます。

有料塾の要点は以下の通り。
・話し方の練習や社会人としてののマナーなど、実践的な内容
・定期的にテストがあり、徐々にランクアップしていく
・好きな時間にレッスンを受けられる
月額8千円ほど

優しく物腰柔らかな口調で、有料塾は学生向けにお安くしてあることや、必ず力がつくことをきらきらした瞳で力説されました。


「内定が就活のゴールではなく、立派な社会人となるためのスタートであり、本番は社会人スタートである4月から。塾では、その時に困らないようなスキルを身に付ける。そして実際、企業が採用したいのは「いい社会人になりそうな学生」だから、結果として就活にも強くなる」

塾の仕組みはこんな感じで、なるほどと頷きました。

正直、話のうまさや優しい雰囲気に「ちょっといいかも」と気持ちが引っ張られたことは確かでした。とはいえ、筆者は入会する気ゼロです。そんな本心が見透かされたのか、その指導員からこんな言葉が出ました。

「あなたは、とても冷めているように見えます」
次から次に筆者への印象を投げつけられました。

「冷めていて、ネガティブで、心配性ですぐに他人と比べて落ち込むでしょう。1時間話していて思ったの。大久保さんはとても頑張っているけど努力してない。悩んでいるけど考えてないなって」

え? 急になに。でも、確かにそうかなぁ。なんて少し考えていると。

「もしかしたら、まだ大久保さんがうちの塾に入るのは早いかもしれません。少し間を置いてそれでも入りたいと思ったら連絡をいただけますか?」

「あ……はい」
一瞬の出来事で唖然としましたが、どうやら私は

塾への入会を拒否された

ようです。

これは予想していなかった展開でした。

有料コースの説明に出向いて1時間以上説明を聞き、誰にでも当てはまるような悪口を突き付けられて挙句の果てに入会を拒否されるなんてっ!

え、私は今日一体何をしにきたの?とあまりの衝撃にメンタルを抉られた筆者は最後にその指導員に救いの手を求めました。

「あの、じゃあこの冷めた性格ってどうしたらいいんですか……?」

「そうですね。まずいろんなことに興味を持つことかな」

説明が終了し1人とぼとぼと帰りながら、こぼれる涙を止められなかったのでした

それから有料塾には入会せず、内定が出て就活を終えるまで約半年無料のコースに通いました。


上手な活用の仕方。ポイントは100%信用しないこと?

かつて有料コースに通っていた女子大生はこう言います。

「就活のために、話の仕方やマナーはとても勉強になったし学べて良かったと思っています。しかし1回5万円もする合宿への参加を促されたり、半強制的にレッスンに通わなければいけなくてイヤになってしまいました。私は就職しないことを決めたので、連絡も無視しています」

レッスンの内容はとても充実しているけれど、合宿やイベントなど言われるままにしていると首が回らなくなるのかもしれません。

「指導員はみんなとてもいい人たちです。なので学べることは吸収して、のめり込み過ぎないように距離を置いて付き合えばいい関係が築けると思います」

筆者の場合はおそらく特殊で、大抵の大学生が勧誘されたその場で入塾を薦められるのでしょう。
誰もが不安な就職活動を支えてくれる存在は貴重です。

ただ、優しい“だけ”のオトナなんていません。きっと裏にはそれなりの思惑があると思っていたほうがいいかもしれません。
今思えば「いろんなことに興味を持て」だなんてアバウトすぎてアドバイスになっていませんよね!

あの時の自分の落ち込みを返してほしい!!

実際に通ってみて特にこれといって「役に立った」と思う点はありませんが、親や友人には言えない不安感や就活の愚痴を吐き出すよい場なのではないか、という結論に落ち着きました。

オトナ達のお節介なほどの熱心な就活サポートとやらが、人生に1度の新卒就活の邪魔をしないといいなぁ、と筆者は切に祈るばかりです。

(文:大久保彩乃)


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