少女「着エロ」販売業者が逮捕ーー水着姿なのに「児童ポルノ」になるのはナゼか?

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2015年10月04日 10:41  弁護士ドットコム

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水着や下着姿の少女を撮影した「着エロ」と呼ばれる動画を販売したなどとして、児童ポルノ法違反の疑いで、東京都内のコンテンツ卸会社の経営者や埼玉の販売会社経営者ら計7人が9月末、神奈川県警などに逮捕された。


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報道によると、逮捕容疑は、卸会社経営者ら4人が今年2月、児童ポルノ動画の入ったDVD500枚を納品した疑い。販売会社経営者ら3人は納入されたDVDを販売・所持などした疑い。



「着エロ」は、完全な裸体ではなく、水着などの着衣があるのが特徴で、販売会社の経営者は「グレーラインだと思っていた」という。なぜ、衣装を身につけているのに「ポルノ」とされてしまうのだろうか。また、昨年の児童ポルノ法改正の影響を指摘する報道もあるが、その点はどうなのか。児童ポルノの問題に詳しい奥村徹弁護士に聞いた。



●「着エロ」は単なる通称


奥村弁護士によると、ひとくちに「着エロ」といっても中身はいろいろで、専門家でも実際に見てみないと、それが児童ポルノかどうかは判断できないそうだ。



「実際に見てみないと判断できないのは、『着エロ』とは、あくまで極小の衣装を着けた児童を出演させた画像を指す『業界の通称』であって、厳格な定義がないからです。



その『着エロ』が違法かどうかを判断するためには、児童ポルノ法2条3項3号が定義する『児童ポルノ』(いわゆる3号ポルノ)に該当するかどうか、ひとつひとつ見なければわかりません」



●3号ポルノとは?


その「3号ポルノ」とは、どんなものなのだろうか。



「以前の児童ポルノ法2条3項3号は、次のような表現でした。



『衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの』



一方で現行の児童ポルノ法2条3項3号は、字句が加えられ、次のような表現になっています。



『衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの』」



表現が加わったことで、どんな点が変わったのだろうか? 奥村弁護士は次のように話す。



「実際の規制対象は、改正前後を通じて変わっていません」



奥村弁護士によると、法改正以前も、着エロは「児童ポルノ」として摘発されていたという。



●法改正前の「アウト」判決


「改正でつけ加えられた『殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているもの』という要件にあたるかどうかは、改正以前から、『性欲を興奮させ又は刺激するもの』という要件を判断する際に、重要な要素として考慮されていたという研究があります。



また、東京地裁は法改正前の2009年10月14日の判決で、次のように判断して、いわゆる『着エロ』を児童ポルノ(3号ポルノ)だと認定しています。



『被害児童が乳首や陰部がかろうじて隠れる程度の極めて小さい水着、ひも状のパンツあるいは半透明のレオタードを着用している様子が描写されていることが認められ・・・衣類の一部を着けない児童の姿態を描写したものと認められる』」



「着エロ=児童ポルノ」だと認めた判決は、他にもあるという。



「2010年5月19日の東京高裁判決でも、次のように『着エロ』を児童ポルノだと判断しています。



『本件デジタルビデオカセットテープを基にして製品化されたDVDの映像を見ると、被害児童が乳首や陰部がかろうじて隠れる程度の極めて小さい水着やひも状のパンツ等を着用した上、殊更に性器の部分を強調したり、性的行為を暗示したりするような姿態を撮影した場面が大半を占めることは原判示のとおりであり、これが児童ポルノ法にいう児童ポルノに該当することも明らかといえる』」



●裁判官には「周知」されていた。


「2010年3月23日の東京高裁判決も、『児童に極小の水着を着用させてはいるものの、その一部を陰部に食い込ませるなどして性器の周辺を露わにさせ、あるいは、臀部を露わにするようにずり下げるなど、社会通念上衣服の一部を着用していない状態で、殊更に性器や臀部等を強調した姿態をとらせて』いる動画について、児童ポルノだと認定しています。



この東京高裁の判断は、他の裁判官が参考にするように、『判決速報』として周知されています」



実際のところ、「着エロ」は、法改正前も取り締まられていたわけだ。そのあたりの事情について、奥村弁護士は次のように話している。



「今回の事件について、『これまで違法性を問うことが難しいとされていた』といった報道がされていますが、それは、警察が新鮮味・新規性を強調して威嚇効果を狙うため、メディアに対してそのように広報した結果だと思います」



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://www.okumura-tanaka-law.com/www/top.htm


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  • 芸術とポルノの違いを理解している映像制作者、検察官、裁判官が日本にいるとは思えない。
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