口の中で増殖する細菌が、さまざまな合併症のリスクに
静岡県立静岡がんセンター 歯科口腔外科部長 百合草健圭志先生近年、抗がん剤を使ったがん治療を進めるにあたり、口内環境を整える重要性が注目されています。2006年から、静岡県立静岡がんセンター、静岡県歯科医師会と共同で、「がん治療における口腔合併症の予防、軽減するための共同研究」をおこなっているサンスター株式会社がメディアセミナーを開催。静岡県立静岡がんセンター 歯科口腔外科部長の百合草健圭志先生が、がんの医科歯科連携とこれからの課題について講演しました。
「抗がん剤治療時の口腔合併症には、口腔感染や誤嚥性肺炎などがあり、口内炎があると敗血症(重篤な全身性の炎症反応が起こる)を起こすリスクが4倍にもなります」とし、百合草先生は、口の中で増殖する細菌を口腔合併症を起こす原因のひとつに挙げました。また、合併症を予防し、がん治療を確実に遂行するためのサポートとして、「治療が始まる前に歯科支持療法に入ることが非常に重要です」と語りました。
しかし、全国の病院のうち歯科部門をもつ病院は20%に過ぎず、それをカバーするための地域歯科医院との連携はまだ始まったばかり。この医科歯科連携の推進がこれからの課題だといいます。超高齢化社会における医療では、加齢に伴うフレイル(筋力や心身の活力が低下した状態)対策として、口腔ケア・支持療法が必須であり、医科歯科連携はその重要な柱だと百合草先生は強調しました。
食道がん手術前の口腔ケアが、術後肺炎の発症を低下させる可能性
続いて、同がんセンター 食道外科部長の坪佐恭宏先生が、50〜70代男性に多い食道がんと、手術も含めたその前後の時期における口腔ケアの重要性について講演しました。坪佐先生は、食道がん手術で術後に合併症を起こす頻度は現在でも約60%と高く、「喫煙や口腔内汚染、誤嚥などによる術後肺炎は、重要な合併症のひとつ」であることを指摘。
そして、食道がん術前に口腔ケア介入を始め、地域の歯科医院と連携した、静岡がんセンターでの取り組みを紹介しました。この取り組みは、口腔ケア介入による術前口腔内の衛生状態の変化と、術後肺炎との関連研究を行うもの。講演では、その結果のデータを示すとともに、術前に口腔ケアを行うことで、口腔内の衛生状態が改善傾向を示し、術後肺炎の発症を低下させる可能性を示唆しました。(QLife編集部)
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