更なる日本人学者の活躍!素粒子物理学の定説を覆した「ニュートリノ」研究がノーベル物理学賞に

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2015年10月07日 18:10  FUTURUS

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2日続けての日本人ノーベル賞受賞となった。

6日、スウェーデン王立科学アカデミーは、東京大学宇宙線研究所所長の梶田隆章氏と、クイーンズ大名誉教授で、カナダのサドベリー・ニュートリノ観測所ディレクターであるArthur B. McDonald氏の2人に、ノーベル物理学賞を授与することを発表した。

彼らが、素粒子『ニュートリノ』に質量があることや『ニュートリノ振動』と呼ばれる現象を実証したことが評価されたのだ。

この研究成果は、宇宙の成り立ちや物質の起源に関する研究に大きな影響を与えるという。

それでは梶田氏の受賞した研究とはどのようなものなのか。

「ニュートリノ」には質量が無いとされていた

『ニュートリノ』とは、素粒子の一つだ。素粒子は物質を構成する最小単位である。ただし、『ニュートリノ』には分からないことが多かった。

その存在は、1930年に物理学者のパウリが予測し、1956年に米国の原子炉で発見されることで明らかになった。

『ニュートリノ』には電子型、ミュー型、タウ型の3種類があり、素粒子物理学の標準理論では質量が無いと考えられていた。

また、電子のように電機を帯びているわけではないため、他の物質とはほとんど反応しない。

そのため我々の体も、地球でさえも通り抜けてしまうのだ。つまり、観測することが非常に難しいということである。

もし、質量があるならば、長距離を飛ぶ間に別のタイプに変化する『振動現象』があるはずだとされていた。この『振動現象』は、1962年に名古屋大の坂田昌一博士らが予測していた。

しかし、この予測は実証ができないままであった。そこに今回ノーベル賞を受賞した梶田氏の研究が重大な成果を出すことになった。

「ニュートリノ振動」現象を捉える

舞台は2002年にノーベル賞を受賞した小柴昌俊氏が建設した『カミオカンデ』に遡る。『カミオカンデ』は岐阜県飛騨市神岡町の地下鉱山跡に建設された施設だ。

この『カミオカンデ』で、宇宙線と大気中の原子核がぶつかって生じる大気『ニュートリノ』を観測したところ、ミュー型が理論予測値の60%しか検出されない現象が確認された。

消えた40%はタウ型に変身した振動現象が起きたのではないか? しかしこの時点では解明ができなかったのだ。

これを解明するには、梶田氏が故戸塚洋二氏らと建設したさらに高性能な『スーパーカミオカンデ』の完成を待たねばならなかった。

そして梶田氏は予測した。もし長距離を経てニュートリノが振動現象を起こすのであれば、『スーパーカミオカンデ』の真上の大気中から飛来する『ニュートリノ』よりも、真下、つまり地球の裏側から飛来する『ニュートリノ』はより多く変身しているのではないか。

大気中で発生する『ニュートリノ』の数は、ほぼ同じだからだ。

観測してみると、予想通りだった。地球を貫通してきた『ニュートリノ』のミュー型が、『スーパーカミオカンデ』上空から飛来してきた『ニュートリノ』の半分しか無かったのだ。このことは1998年に発表された。

そしてこの結果から、2010年にはミュー型からタウ型への変身を引き起こした振動現象を突き止めることができ、『ニュートリノ』に質量があることが実証された。

ちなみにもう一人の受賞者であるMcDonald氏も、2001年にカナダの観測装置で太陽から飛来する『ニュートリノ』でも振動現象を見つけている。

引き継がれていく素粒子研究

振動現象については、茨城県の研究施設から人工的な『ニュートリノ』を『スーパーカミオカンデ』に飛ばすなどの実験が続いている。その結果、ミュー型や電子型への変身も日本の研究チームで確認されている。

梶田氏たちの研究は続く。既に2025年の実験開始を目指して、『スーパーカミオカンデ』の20倍以上の検出能力を持つ『ハイパーカミオカンデ』が計画されているのだ。

小柴氏から梶田氏へと引き継がれた素粒子研究は、さらに引き継がれていくだろう。

【参考・画像】

※ The chameleons of space – Nobelprize.org

※ Ollyy / Shutterstock

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