現在日本では、年間約1,700万トンもの食品ロスが出ているが、近年は業務用では残飯の飼料化を始め企業努力が進んでいる。
今回は、その事例や我々が家庭でも見直せることを紹介したい。
食料自給率は低いのに、食品ロスも深刻
日本では国内外から年間約8,424万トンの食用農林水産物が調達されているが、食品関連事業者(食品製造業者、食品流通業者、食品小売業 者)から約641万トン、一般家庭から約1,072万トン、あわせて年間約1,700万トンの食品廃棄物が排出されている。
そのうち食品ロス(食べられると考えられる量)は、事業系が300〜400万トン家庭系が200〜400万トン合計で500〜800万トンで、世界全体の食料援助量の約2倍にもなる。
世界的な人口増加に伴い、食料需要も増大や気候変動等の影響から食料の安定供給には不安もある中で、日本は食料自給率40%程度と先進国の中でも最低水準でありながら、食べられる食品を大量に捨てているのが現状だ。
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廃棄物の最終処分場の確保や経費も大きな負担となっており、循環型社会を構築するためにも、食品ロスの発生抑制への取組みは緊急課題だ。
着実に再生利用を増やしている事業系廃棄物
食品リサイクル法が施行された平成13年度以降、事業系の再生利用等実施率は着実に上昇し、廃棄料は少しずつ減ってきている。
例えば、規格外品をお菓子やジャム等の二次加工に利用したり、未利用食品を家畜飼料にするシステムが実践されている。
また、飲食店や料理旅館等では、もてなしの文化として“食べきれない”ことに重要な意味があったが、近年は健康への配慮もあり、食べきれる量のコースを設定したり個別の希望を確認することで、食品ロスを抑えるだけでなく社員の意識が高まり、顧客満足にもつながっているという。
また近年は『フードバンク』というボランティア活動が広がっている。品質に問題がないのにラベルやパッケージの損傷等の都合で廃棄せざるをえない食品を、メーカーや小売店から寄付してもらい、低所得者やホームレスのシェルター・児童福祉施設等の必要としている人に無償で届ける。
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ただし、輸送などにかかるガソリン代や事務運営費を寄付などで賄うのはなかなか苦労が多いようだ。
伝統食の乾物を見直してみよう
食品ロス統計調査の年間推移(平成26年度)を見ても、平成16年度からほとんど変化がないのは家庭だ。
食品ロスの中で最も多いのは『過剰ロス』。『過剰ロス』とは、調理の際に皮の厚むきなど過剰に廃棄した食品で、廃棄されるのが多い食品は、野菜8.8%、果実8.6%、魚介類5.8%となっている。
では、家庭ではどのようなことができるだろうか。微力ながら私が心がけているのは、買い物前に冷蔵庫などのストックを確認する。
ストック食品だけで調理する日を定期的に設定する。また多めの野菜等がある時には、悪くなる前に自家製乾物を作る。乾物は漬物と同様に、旬の時期に大量に収穫したものを保存するための先人の知恵だ。
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何も難しくはない。使いやすい形に切り、ざるなどに広げて干すだけ。例えばお味噌汁には、鍋にだしと干し野菜を入れて火にかけるだけ、包丁も使わずできあがり。
乾物食品を常備しておけば防災用食品としても活用できる。これからの季節は乾燥するので、乾物を作るのにも適している。しかも水分が抜けて旨味が凝縮されおいしく仕上がる。
食品ロスの低減という一石が、三鳥にも四鳥にもなること、まちがいなしだ。
【参考・画像】
※ 食品ロス統計調査・世帯調査(平成26年度) – 農林水産省
※ YsPhoto / PIXTA