リーダー必読!JAL運航責任者の3大決断に学ぶ「スピーディに最善策を出す方法」

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2015年10月15日 10:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

朝、空港に着くと、乗るはずの便が欠航! 大切な商談や楽しみだった旅行のスケジュールが台無しに。安全第一はわかるのだが、もっと早く分かっていれば……。

天候や機体の故障などによる旅客機の欠航は、しばしば起こる。多くの人命を扱うだけに、航空会社の決断は重大だ。

が、一方で、欠航は多くの利用者に混乱を招き、航空会社にとっては利益の損失にも繋がる。

JAL(日本航空)の『ミッション・ディレクター』は、時に難しい決断を迫られる。

国内約600便、海外約150便、1日約750便ものJAL航空便の運航管理を一括して行う『オペレーションコントロールセンター』の責任者だからだ。

その職務について、『ミッション・ディレクター』の甲斐荘一氏にお話を聞いた。

運航について社長を代行

任務についているのは、甲斐氏を含めた計8名。8時〜17時と15時30分〜9時の各シフトに1名ずつがつく、1日2交代制だ。

まずは、仕事内容について。

「第1は、“安全に飛ばす”こと。安全に飛ばせないと判断した場合は、社長代行として欠航の決定権を持っています。次に、何かトラブルなどが起こった際、素早く対応できる初動体勢の確立。また、欠航などの情報を的確に各部門へ伝えることも任務です。」

判断材料を出すのが、1日80名体制の『オペレーションコントロールセンター』のメンバーだ。

「オペレーションや旅客、整備や天候予測など、各部門の専門家が集まっています。彼らは、世界各国で飛ぶ便の運航を、24時間体勢で管理しています。で、問題が生じた場合は、各部門がその対処法を検討し意見を提出。それらを総合して判断を下すのが、私たちの仕事です。」

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史上初!150便の欠航を決定

今までで、最も決断に苦労した経験を3つ挙げてもらった。

まずは、2年前(2013年10月)に、台風26号が関東を直撃した時。

「(台風が来る)前日夜までに、150便の欠航を決めたときですね。弊社で、前日にこれだけの数の欠航を決めたのは初めて。

それまでは、何とか便を飛ばしたいという意向が強かったため、決定を延ばす傾向にありました。でも、それだと当日朝から空港が大混乱、お客様にかなり迷惑がかかっていました。

早めに欠航が分かっていれば、旅行を止めるとか新幹線に替えるなど、お客様の選択肢も増えますよね。より安全を考え、お客様へのご迷惑も最小限にしようという、会社の新方針も後押した決定でした。

決定後も、翌朝まで天候がすごく気になりました。“台風の進路がもしそれたら……”とね。

当日はやはり台風。前日は弊社の約半分だった他社の欠航数も、結局は弊社とほぼ同じ数になっていました。空港での混乱を考えれば、早めの決断は大正解でしたね。」

ネパール大地震でチャーター便を急手配

次の大決断は、今年4月に起こったネパール大地震の時。

「JICA(ジャイカ、国際協力機構)から、災害救助隊を運ぶチャーター便を出して欲しいという要請を受けたんです。

災害救助は、最初の72時間が勝負。でも、チャーター便を出すには、飛ばす機材(航空機)をやり繰りするのに通常3日はかかる。それを、なんとかやり繰りすることで、要請を受けて12時間以内に飛ばす決定をしました。

“救助隊をなんとか送ろう”という、(部署)みんなの気持ちがあったおかげですね。」

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国際便で意識不明の急病人!

急病人が出て、便を引き返させる決断をしたこともあるという。

「一年ほど前、(アメリカの)サンディエゴから日本に戻る便の中で、意識不明の重体になった急病人が出たんです。

その時は、機長や契約しているメディカルサポートの医師とも相談し、一旦は最も近いアンカレッジ空港へ緊急着陸することに。けれど、アンカレッジにはJALの定期便がないため、現地スタッフがいない。着陸後の急病人や他のお客様へのケアは、航空委託先の現地空港スタッフにお願いするしかなかったんです。

その後、急病になった方の意識が戻ったため、少しだけ緊急性がゆるんだ。そこで、通り過ぎたけれど、自社スタッフがいるバンクーバー空港へ戻すことに。3時間かかるけれど、身内がいる空港の方がよりケアができる、という判断でした。」

これも、結果的に正解。急病人をはじめ、他の利用者へも可能な限りのケアができたそうだ。

人の話を聞き、冷静に判断

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なにかと大変な判断を迫られる『ミッション・ディレクター』だが、一番大切なことはなんだろう?

「個人的な考えでは、やはり“安全”を最優先することですね。で、そのためには人の話をよく聞く。

我々『ミッション・ディレクター』は、全部門の専門家ではない。だから、『オペレーションコントロールセンター』各部署の専門家たちが出す意見をよく聞く。時には、専門家同士で意見が食い違い、熱い議論になることも。

そんな時に、一緒に熱くなってはだめ。冷静にみんなの意見を聞き、素早く最善の決断をする必要があるんです。」

周囲の意見に耳を傾け、冷静な判断を心がけることが、素早く適正な判断をするポイントなのかもしれない。

判断が正しかった時は「やはりうれしい」と語る甲斐氏。背負う責任が大きいほど、達成感もひとしお。

これぞ、リーダーの醍醐味だ。

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  • )運行遣り繰り不可能なとき』は【新幹線&在来線特急へ振替輸送判断だって重要選択判断】でしょう
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