今、小学生や中学生の子供を持つ親が我が子の授業風景を見たとき、あるいは既に孫がいる世代が、最近のテレビドラマなどで授業風景を見たとき、「ああ、懐かしい光景だなぁ」と思うことに違和感を覚えたことはないだろうか。
いや、覚えるべきなのだろう。何しろこの半世紀で、ITを初めとして、技術も社会も大きく変貌しているのだ。子供達の授業風景だけがあまり変わっていないことは奇妙なことではないか。
そんな指摘をしてくれるのは、株式会社COMPASSの神野元基氏だ。
同社は、人工知能を活用する事で、戦後70年間変わらなかった教育の現場を変えようとしている。
生徒の躓きをサポートできない従来の授業スタイル
同社は12月から東京の三軒茶屋に、人工知能が講師を行う、中学生向けの学習塾を開校しようとしている。そのために、クラウドファンディングの『Makuake』で資金調達を開始した。
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既に同社のオフィスでは少人数の中学生を対象に授業を行っているが、より多くの生徒をサポートする為に、新しい教室が必要と考えたのだ。
神野氏は4年前から八王子で学習塾を運営していたが、ある壁にぶつかっていたという。それは、一端どこかで授業が理解できないことがあると、その生徒はもうリベンジできないと言うことだ。
特に、数学のような積み重ねが重要な学科であれば、“比例・反比例”、“方程式”、“文字式の単元”などのどこかで躓いてしまうと、もはやその先の“1次関数”以降は理解できなくなってしまう。
しかし、教師1人に生徒が約30人と言った現在のスタイルでは、このような躓きをサポートすることができないのだ。
教師は密かに躓いてしまった生徒のことなど気付きもせずに、どんどんスケジュール通りに授業を進めて行ってしまう。もはや一人ひとりに合わせて後戻りすることなど、不可能なシステムなのだ。
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このような躓きを経験してしまった生徒をサポートするには、マンツーマン方式による指導が考えられるが、授業料が高いため、経済的な負担が大きくなってしまう。
そこで登場したのが、人工知能が講師をすることで、低コストで個人指導をできるではないか、という発想だった。
人工知能が生徒一人ひとりに合わせた教材で対応する
こうして辿り着いたのが、『Qubena(キュビナ)』アカデミーだ。
『Qubena』というのは、人工知能が算数・数学を教える教材で、タブレット端末で利用する事ができる。
この人工知能の講師が優れているのは、生徒一人ひとりの理解度に合わせて教材が柔軟に変化することだ。
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例えば、1次関数の問題を解く際、生徒が方程式の割り算でミスをすれば、『Qubena』はこの生徒には方程式の割り算に立ち返って学習をする必要があると判断し、そのような教材を提示して生徒を導くのだ。
このことによって、算数や数学と言った積み重ねが重要な科目においても、確実に躓きを克服させることができるようになる。
この当たり前であるにもかかわらず、長いこと教育の現場では対応してこなかったことに、この『Qubena』は従来の7倍の学習効果を達成して見せた。
教師は生身の人間にしかできないことに注力
しかも、『Qubena』は、生徒が何人になろうともタブレットさえ用意すれば一人ひとりに対応できるため、その分負担が軽くなった教師は、生徒のメンタルな部分をサポートしてあげることが可能になる。
つまり、教師は“生身の人間”にしかできないことに注力できるのだ。
ここにきてようやく新しい授業のスタイルが生まれようとしている。人工知能を活用する事で、躓きの無い学習機会を生徒に与える事ができるかもしれない。
人工知能が新しい授業スタイルを切り開こうとしている。
【参考・画像】
※ 人工知能があなたの先生に!未来型学習塾キュビナアカデミーを12月に開校したい! – Makuake(マクアケ)
※ Tatiana Shepeleva / Shutterstock
【動画】
※ Qubena Academy – YouTube