運動会、子の成長・親の成長 ―― 「コンテンツ」ではなく「コンテクスト」がもたらす感動

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2015年10月16日 10:31  MAMApicks

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子どもの運動会が終わった。

今年は兄弟が別々の日に別の場所で運動会ということもあり、下の子の運動会が終わった後の、なんともいえない“やりきった感じ”……おわかりいただけるだろうか。



■運動会の過去戦歴を振り返る
我が家の兄弟二人、通う園は異なるが、同じ区内の認可ということで、だいたい似たようなスケジュールでイベントが組まれている。年度の中ではじめて大勢の前に出るのは、ふたりともやはり運動会なのであった。

長男の運動会が過去4年どんな様子であったか、ふと思い出してみた。

0歳:
雨天だったので近隣の小学校の体育館で行われた。
運動会の競技、ハイハイでの「マット山登り」が始まる前に号泣、登山拒否。“先生に抱きかかえられて運ばれるだけの簡単なお仕事”に変更となった。

1歳:
この年も体育館での運動会。
競技はなんとか持ちこたえたものの、運動会終盤には眠くなっており、練習した体操をグズっていっさいやらない始末。

今にして思えば、1歳児などそんなものなのだが、当時は「なんでやらないのー!」と私が内心穏やかではなかった。

2歳:
はじめての、小学校の校庭での開催。
そして、はじめて親から離れ、園児席に座っての参加となった。
すると、なかなか離れない。泣く。親を探す。座らない。帽子もかぶらない……。

先生に抱えられて入場し、運動会の歌は歌わず、準備体操は座り込んで拒否。
かけっこは、名前を呼ばれても知らんぷり。レーンから逃亡し、先生に抱えられてゴール。メインの器械体操では、勝手に平均台から降り、隣のレーンに逃亡した。

イヤイヤ期真っ最中らしいエピソードではあるが、当時はこれを楽しめるほどの心の余裕はなく……。

3歳:
この年も小学校の校庭で開催。
かけっこは一緒に走った4人中ビリ。
器械体操の種目ではご機嫌斜めになりストライキ、同級生からの「がんばれ!」コールの中、ほぼなにもやらずに終了したが、集合写真だけは最前列センターを陣取って、一人だけものすごい笑顔でダブルピース……。

本人曰く「(器械体操の時に)裸足で足の裏が痛くて帰りたくなっちゃった」「お腹空いて帰りたくなっちゃった」とのことで、言い分はわからなくもない。


……さて、これを受けての今年である。

毎年、運動会楽しかった?と聞くと横に首を振る長男。
親としては、さすがにもう「運動会で何もできなくても、わが子の仕様だからしょうがない」というのが前提になったものの、たまには楽しい思い出にしてあげたい気持ちもあり、過去実績から、せめて不安要素を取り除こうとしてみた。

■「たのしかった運動会」になるために行った、いくつかの準備
さかのぼること1ヵ月前。私は長男の担任からこのような報告を受けていた。
「ちょっと鉄棒が苦手みたいでして……。」

運動会の器械体操種目に鉄棒があるのだが、前回りなど回転を伴うものがこわいのだという。器械体操といえば、過去2年苦い思い出になっているはずである。そこに苦手意識が加われば……想像に難くない。

そこで、鉄棒とかけっこに関しては、体育の少人数指導をお願いしてみた。
いわゆる「習い事」ではなく、都度払いでレッスンしてくれるサービスがあったのだ。

“大人数の中のひとり”であることが苦手で、クラスメートの前で失敗することが恥ずかしい長男には、少人数で、クラスの子が来ないようなところでのレッスンが向いていたようだ。鉄棒はあっという間に上達し、かけっこも、走らせてみたらなかなかに速かった。

今年の運動会は体育館での開催が決まっていたので、「裸足で痛い」とストライキを起こす心配はない。その代わり、初めて行く体育館になるので、場慣れをさせておく必要が出てきた。

これについては、朝早く出て対応しよう、ということになったのだが……。

「わー!もう7時じゃん!なんで起こさないの!」
「前の晩遅かったからだよ!」
「あぶ〜!はぐ〜!(叫ぶ赤子)」
「あー!ミルク!急いで!」

上記、当日朝の筆者宅である。お察しいただきたい。
なんとか集合時間には滑り込んだが、一抹の不安を残した。

保護者としてできそうなことは一通りやってみたつもりだ。あとは子どもが自力でがんばるのみである。クラスメートと合流し、水筒を抱えた長男は、わー!っと集合場所に走っていった。

■1年間の成長を改めて知る運動会
そもそも、「0歳児の運動会とはなんなのか」である。

長男にとって初めての運動会は、まだ歩けもしなかった0歳11ヵ月のときだった。
メインは親子ダンス(という名の、子どもを抱っこして親が踊るだけのもの)であったが、こちらもどこか斜に構えた感じで、茶番劇に付き合っている印象が強かったのだ。

それが、学年が上がるにつれ、できることも多くなり、競技数も増えていく。
去年は泣いちゃってなにもできなかったあの子が、今年はこんなにがんばっている。
1歳児のかけっこは、ほぼハイハイレースに近い雰囲気だったところ、だんだんその速度が上がっていき、5歳児にいたっては本気のレースになっている。

保育園も幼児クラスになると、付き合いもそこそこ長いので、お互いの子どもの成長にジーンとくるものがあるのだ。

さて、我が家の長男だが、かけっこでは先頭でテープを切ることができた。心配していた器械体操も無事にやり遂げ、練習どおりに鉄棒も成功した。

“もう、去年とは違うよ!”
そんな顔をして、遠くからこちらになにか話しかけるような長男の姿があった。

開会式では『運動会のうた』というのを子どもたちが歌っていたが、歌詞のとおり、長男の中から「よわむしなんか」いなくなっていたのだろう。

■「人の子でも泣ける!」というあの心理の謎
団体競技もいくつか行った後、トリは4歳〜5歳児の紅白リレーである。
長男は第一走者だったが、緊張に負けることもなく、ほぼ同着でバトンを渡し、いい勝負を見せてくれた。

途中、走るのが遅い子や、大舞台の緊張で動けなくなった子が先生に手を引かれて走る中、紅組と白組で2周も差がついてしまう事態が起きた。

周回遅れ側のアンカーは、誰もが認める、クラスで最も運動神経のいい子である。彼はバトンを受け取ると、4歳児とは思えない速さでトラックを走った。

──わきあがる歓声。応援するクラスメート。

歯を食いしばりながら走るその子は、テープを切った瞬間、先生の胸に飛び込み号泣したのだ。負けたのがよほど悔しかったのだろう。

会場からは惜しみない拍手が送られ、もらい泣きする保護者の姿も見られた。

……これを書きながら思い出してまた泣いている、「もらい泣きしていた保護者」こと筆者である。


これまで「子どもの運動会?感動?はぁ?」という態度を一貫していた筆者なのだが、“長年知っている子”の“普段の姿を知っている”上で、“練習の成果を発表”という3つが合わさったときに、どうやらケミストリーが起こるようである。

つまり、親にとって、感動とは「コンテンツ(演目)」によってもたらされるのではない、「コンテクスト(文脈)」によるものではないか、と。

そうであるならば、昨今問題となっている組体操の巨大ピラミッド。
「保護者の感動を誘うものなのでやめられない」という学校関係者のコメントが新聞記事に載っていて引っかかっているのだが、別に高さを競わなくてもいいのではないだろうか。

子どもが学校にあがる年齢の親であれば、そこにいたるまでの経験から、感動のハードルは、ある程度下がっているだろう。

もし、学校側に「保護者の感動を!」という思惑があるのであれば、競技がはじまる前にメイキングでも流したら、たいていの演目では泣いてしまう自信があるのだ。

よく子育てにまつわるTipsで、「結果をほめるのではなく、過程やがんばりをほめよう」というわりに、組体操についてはそうではないのかなあと、少しだけ気になるのだった。

■改めて、0歳児の運動会に参加する
2週間後、今度は次男の保育園で運動会が行われた。
次男は早生まれなので、お座りもままならない。この状態で、いったい何を……!と思っていたが、競技も特に個人種目はなく、親子ダンスのみだった。

世間的にはまだ“赤ちゃん”である0歳児たちが、いっちょまえに紅白帽をかぶる。「やべー!ちょーかわいい!」と写真を撮りまくるのが、私の4年前とは違うところだろう。

0歳児の親子ダンスでは、子どもたちはひよこの格好をさせられ、大人はビニール紐で作った腰ミノのようなものと花のついたハチマキをつけ、輪になった中央に子どもたちを置いて、その周りを大人が踊る……。

いうなればこれも“茶番”である。
しかし今は、その茶番を喜んで楽しむ余裕もあるのだ。

1年後の運動会では立って歩く姿がおそらく見られるのだろう。
我が子の、12ヵ月での運動能力の向上に、来年の筆者はもしかしたら涙しているかもしれない。

ワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。

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