VW「排ガス不正」4年前に社内で指摘――「通報」が放置されたら、どうすればいい?

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2015年10月17日 13:51  弁護士ドットコム

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独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が、ディーゼル車に違法な「排ガス制御ソフトウェア」を搭載していた問題で、2011年の段階で、VWの社員がソフトウェアの利用は法律に違反する恐れがあることを指摘していたことがわかった。


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報道によると、VWは、排ガス規制を逃れるため、ディーゼル車に試験のときだけ有害物質の排出を低く抑える不正なソフトウエアを搭載していた。2011年の段階で、VWの社員が、ソフトウェアの使用は法律に違反するおそれがあると社内で指摘していたが、対策が講じられないままになっていた。



一般論として、もし日本で企業の不正を発見した場合、社員はどのように行動すべきだろうか。内部通報制度の問題に詳しい山本雄大弁護士に聞いた。



●告発した社員への不利益な取り扱いは禁止されている


「本来、企業の不祥事の是正等を目的とした正当な告発は保護されます。しかし、これまでの判例では、通報の目的や態様等により、通報者が保護されないケースもあり、慎重な検討が必要です。



2006年に施行された公益通報者保護法では、企業内部への通報、行政機関への通報、マスコミ等の外部への通報の3つのカテゴリーを設け、カテゴリーごとに定められた要件を満たす公益通報をした労働者への不利益取扱い等を禁止しており、同法の要件を満たす通報をすることも一つの方法です」



今回のVWのように、内部通報しても対策が講じられなかった場合はどうすればいいのか。



「行政機関やマスコミに通報することが考えられます。その場合、公益通報者保護法による保護を受けるためには、真実相当性の要件を満たす必要があります。また、名誉毀損などの観点から、証拠資料等の確保という難しい問題にも直面します。



通報する場合に匿名性が保持できるか、どのようなリスクがあるか、個別の法律による保護が受けられるのか、類似の事例に関する判例等も検討し、通報や告発の方法を考えなければなりません」



もし、通報したことが会社にばれて、社内で嫌がらせを受けたり、減給などの不利益処分を受けたらどうすればいいだろう。



「通報により不利益取扱いを受けた場合は、その不利益な取り扱いの無効確認や、損害賠償請求等の対応を検討することになります。この点は、一般的な労働事件と同じです。



いずれにしても、弁護士に相談することが望ましいでしょう。公益通報に関しては、東京三会、大阪、京都の各弁護士会で相談窓口を設けています」



山本弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
山本 雄大(やまもと・たけひろ)弁護士
1995年弁護士登録(大阪弁護士会)、欠陥商品被害救済を中心に消費者問題に取組む。公益通報者保護についても法制定時から取組み、内閣府消費者委員会に設置された公益通報者保護専門調査会では委員を務めた。
事務所名:藤巻・山本法律事務所


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