牛丼はかっこいい!インドネシアの若者に浸透する「YOSHINOYA」

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2015年10月18日 23:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

“その店”は、あの街にも必ずある。

今年に入り、日系フード関連企業のインドネシア進出が過熱化している。

今までは“日系進出企業=重工業関連企業”というイメージが強かったが、今後は飲食・サービス関連がインドネシアでの出店攻勢を強めていくだろう。実際に、日本で馴染みの看板がジャカルタ市内にも増えている。

もともと、和食は世界的に人気のある料理だ。インドネシア市民も日本の味を愛し、貴重な小遣いと時間をそのために投じている。

そしてその話をすると、多くの人からこのようなことを聞かれる。

「それじゃあ、インドネシアで一番成功している飲食企業は?」

その質問の答えは回答者によって違うと思うが、少なくとも筆者はこう答えている。

「それは間違いなく、吉野家だ」

吉野家は「レストラン」

“ジャカルタのヘソ”とも言うべきブンダランHIの脇に位置する、グランド・インドネシア。ここは富裕層向けのショッピングモールである。

土日には高級車で駆けつけた裕福な家族連れが、数人のメイドを引き連れ買い物を楽しむ。テレビでよく見る人気スターも時折見かけることができる。ここはそんな場所だ。

吉野家2(澤田オフィス提供)

日本では「ブルーカラーの人たちが安い牛丼をかっ込む店」というイメージがまだ強い吉野家をはじめとした牛丼屋だが、インドネシアの現地店舗は決してそうではない。

買い物を済ませたミドルクラス以上のファミリー客が、心と腹を同時に満たすため、ゆっくり食事をする所。要するに吉野家はレストランなのだ。

ここで注意していただきたいのは、インドネシアで“レストラン”という単語はまた特別な意味を含んでいるということだ。

ワーキングクラスの庶民は、よほどの大きなイベントがない限り、“レストラン”と呼ばれる店には行かない。

外食する場合は“ワルン・マカン”という、どこの町にも必ずある個人経営の食堂を利用する。それよりも少し規模の大きい飲食店は、大抵“ルマー・マカン”と呼ばれる。

主にこの二つが、ワーキングクラスとローワーミドルクラスの人々の胃を満足させているのだ。

普通名詞での“レストラン”とは、それらよりも格式の高い飲食店を指す。吉野家はこの位置にあたる。鉄の腕を持った現場作業員の諸兄は、ここにはいない。

日本の味を手頃な値段で

ここで敢えて矛盾しているかのようなことを書くが、インドネシアの吉野家は“手頃な価格の店”である。

だがそれは、“単に値段の安い店”というニュアンスではない。インドネシアでは、“日系飲食チェーン店”という事柄自体にブランド性がある。「メイド・イン・ジャパン」と書かれた家電製品が消費者から信頼を得ているのと同じことだ。

吉野家は、そのブランド性を最低限の価格で提供しているのである。

「どなた様も、ご家族みんなで日本の味を楽しんでください」

平たく言えば吉野家は、現地市民に対してそう言っているのだ。そういうこともあり、日本とは店内構造も違う。

まず、インドネシアの吉野家にはカウンター席というものがない。何しろファミリー客がメインターゲットなのだから、広々としたテーブル席が喫食スペースとなる。日本のファミリーレストランと似たような造りだ。

吉野家3(澤田オフィス提供)

だが面白いことに、ドンブリのデザインは日本と同じである。インドネシア人にとって、ああいう形の陶器は珍しいものだ。

そもそも陶器を使う習慣はインドネシアにはあまりなく、見かけるのはせいぜい平皿とスープ皿とカップくらいである。

しかも、それらは絵柄のないシンプルなものが殆どだ。だから、吉野家のあのドンブリは、とてもお洒落なものに映るらしい。

また、インドネシアは箸文化圏ではない。中華料理や日本料理の影響で箸を使う機会は増えているものの、普通はスプーンとフォークを使って食べる。

牛丼の場合はフォークでご飯を掻き上げてスプーンですくう、という具合に。こうした細かい部分を観察しても、日本との差異が明確だ。

サブカルの影響力

日系企業が主催するイベントには、必ず吉野屋の看板がある。

たとえばインドネシアでも、サブカルチャー関連のイベントがしばしば行われる。

日本の漫画やアニメは現地の若者にも大人気だ。そのような催し事に、吉野家は頻繁にブース出店している。

吉野家4(澤田オフィス提供)

そのイベント限定の臨時店舗。だが吉野家が知名度を高めてきたのは、そうした取り組みによるものが大きい。

若者は正直だ。自分たちがかっこいいと思ったものに、すぐさま飛びつく。そして吉野家も“クール・ジャパン”の一部であり、“ビーフボール”とやらの味を経験しないわけにはいかない。

今や路上でマクドナルドのバーガーをかじることよりも、吉野家のドンブリを手に牛丼を食べることのほうが“かっこいい”と見做されている。嘘のようだが、本当だ。それだけ日本の影響力は絶大なのだ。

もっとも、こういうことは吉野家だけに限ったことではない。今回はたまたま吉野家に焦点を絞って記事を書いたが、たとえばラーメンもインドネシアの若者たちに人気の料理だ。

日系飲食企業は、この国のフードカルチャーを大きく変えようとしている。それについての記事は、また機会があればぜひ執筆したいと筆者は考えている。

ところで日本では冬の限定定番商品『牛すき鍋膳』、『牛チゲ鍋膳』が間もなく再登場するようだ。

ともかく、今回はこの辺で。

このニュースに関するつぶやき

  • 文中のワルン マカンは屋台、ルママカンは文字通り食堂���åɡʾ������インドネシアの米は細長い水稲米で汁ものとの相性メッチャ良い���줷����牛丼ツユダクで七味てんこ盛りなんやろなぁ���åɡʾ������でも個人的にはワルンでサテアヤンを食べるんが好き���줷����
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