【未来予想図2020】ホンダが考える「スマートモビリティ」、クルマだけでなくエネルギーも作る

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2015年10月21日 06:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

最近話題の『スマートモビリティ』。

自動車メーカー各社が、EV(電気自動車、以下同)を使った実証実験を行っているニュースなどで、よく耳にする言葉だ。

CO2排出量を抑えるなど、環境も考えた“新しいクルマ社会”を示すキーワードだが、実際はどんなものなのか、いまひとつ噛み砕けて居ない方も多いことだろう。

今回は、そんな『スマートモビリティ』の実証実験を積極的に進めているメーカーの中から、ホンダをピックアップ。

超小型モビリティ『MC-β(エムシー ベータ)』の実証実験をはじめ、10月29日から開催される東京モーターショー2015で発表される、『新型FCV』(燃料電池車)などの話題も含め、ホンダが考える“未来のクルマ社会”に迫ってみた。

地方都市で超小型EVを実験

岩田氏

今回お話を伺ったのは、『MC-β』の開発に携わり、現在は『スマートモビリティ』の事業化を検討する、本田技研工業・スマートコミュニティ企画室の岩田和之氏だ。 まずは、『MC-β』とはどんなクルマだろうか?

<国土交通省が設定を検討している、“超小型モビリティ”という新しいカテゴリーにミートさせた電気自動車です。軽自動車より下、原付4輪(4輪の原動機付自転車)より上の車両です。

EUでは、すでにL7というカテゴリーがあり、(『MC-β』クラスの)小型電気自動車も公道を走れます。

ですが、今のところ日本では、自治体が申請を出して認定された場合に限り、その自治体のエリア内のみで走れるといった感じ。現在は、さいたま市と宮古島市、熊本県で公道を使った実証実験をやっています。>

『MC-β』のボディサイズは、全長2,495×全福1,280×全幅1,545(各mm)と超小型。

だが、前後シートに大人2人が乗れ、後部座席がオフセットされているため、パッセンジャーも足を伸ばして乗れる快適性を実現。

リチウムイオンバッテリーを搭載、充電時間は200Vで3時間以下、100Vで7時間以下だ。

日本でEVはCO2削減にならない?

超小型モビリティの実証実験を行っているホンダだが、スマートモビリティとは小型EVの普及を意味するのだろうか?

<世の中の多くの人が、そういった誤解をしていますね。PHEV(プラグインハイブリッド、以下同)やFCV(燃料電池車、以下同)だってスマートモビリティだし、海外ではスマートフォンでICT連携をして駐車場を探すこともそう呼んでいます。

スマートモビリティの定義は、私見ですが、“乗り物だけではない”と思っています。要は“かしこい移動”。

A地点からB地点までをいかに効率よく移動するか? なんです。乗り物はあくまでその手段ですね。

それに加え、環境にもきちんと貢献できるものが今求められています。世界的に厳しくなっている排ガス規制は、平たく言えば“化石燃料を燃やすな”と言っているようなもの。

ガソリン車でなく、EVなどが注目されているのはそのためです。ところが、EVは、今の日本ではトータルで考えると、CO2がゼロということにならないんです。

それはなぜか? 原子力発電所の稼働が止まっていて、(CO2排出量が多い)火力発電で電気を作っているからです。

『Well to Weel(ウェル・トゥ・ホイール)』と言っているんですが、燃料を採掘し、クルマに溜めて、クルマの中でその燃料を燃やし、タイヤを回すまでの全工程で、CO2を減らさないと意味がない。

EV自体は、確かにCO2はゼロ。ガソリン車は太刀打ちできません。ですが、走らせるための電気を作る過程で火力発電していてはCO2の削減にはならない。

だから、『スマートモビリティ』は、エネルギーとの連携が必須なんです。>

太陽光やガスで発電する電力を利用

具体的にエネルギーとの連携というと?

<宮古島で行っている『MC-β』の実証実験がいい例です。東芝さんが設置した充電ステーションで太陽光発電による電力だけで、走らせています。電力の“地産地消”ですね。

また、さいたま市に作ったスマートハウスでは、家庭で作った電気を『MC-β』で使う実証実験も行っています。こっちは『家産家消』ですね。>

さいたま市の実証実験用ハウスは、HSHS(Hondaスマートホームシステム)を採用。

ガスを燃料として熱や電気を作るガスエンジンコージェネレーションユニットを設置、充電・蓄電設備やエネルギーマネジメントなどで、家庭のエネルギーをエコで効果的にコントロールする実証実験を行っている。

HONDA_MC-β_mc1311002H

<大阪ガスさんが所有する大阪・酉島にあるスマートハウスでは、V2Hという電池をつかった実証実験もやっています。

エネファームという家庭用燃料電池コージェネレーション装置の余剰電力を、クルマに入れる実験です。>

ちなみに、エネファームとは、天然ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と科学反応させることで、エコな電気を生み出すシステムのことだ。

<V2Hは、例えば、家に設置した太陽光電池で作った電気をEVに溜め、夜間に使うことも可能です。電力を双方向で移動させることがでるんです。

これは、FCVでは無理。電気を溜めるには、一度水素にしなければいけないので。こういうことができるのも、EVのメリットですね。>

超小型モビリティは、いつ頃実用化されるのだろうか?

<国土交通省の当初の話では、来年(2016年)あたりに超小型モビリティのカテゴリーができるという話だったんですが、今はちょっとトーンダウンしているように感じます。

ただし、国土交通省は認定制度自体をなくすとは言っていないようなので、今後なんらかの形で進むとは思います。>

ホンダ流はエネルギーも作る

ホンダ広報用-1

『スマートモビリティ』の普及は、国の動きも関わってくるため、なかなか大変のようだ。

ところで、実際、ホンダとしてはどんな形での事業化を考えているのだろうか?

<先程も申し上げた通り、『スマートモビリティ』にはエネルギーとの連携が必須です。なので、ホンダはエネルギーも作ります。

(上の図を差しながら)ダブルループと言っていますが、エネルギーを作るところでもCO2をゼロにする、という考え方です。>

Print

<例えば、今度の東京モーターショーでは、『新型FCV』(燃料電池車)を発表しますが(画像上)、一方で水素を作る『スマート水素ステーション』も作ります。

実際は、イワタニ(岩谷産業)さんと共同でやるんですが、中の高圧水電解システムをホンダが供給します。

また、パワーエキスポーター(外部給電器)もつくります。これは、クルマが蓄電や発電した直流電力を、交流電力に替えて家庭用電源として使えるようにする装置です。

地震などの災害時に停電した場合、代替電力として使うことで『命をつなぐ』ことができます。>

ホンダ広報用-2

<要は、クルマ単独ではないということです。水素を『つくる』、クルマで『つかう』、命を『つなぐ』といった、全体での事業化を考えています。

我々が目指しているのは、『スマートモビリティ』という手段を使って、新しい価値や社会を作ることなんです。>

ホンダが考える『スマートモビリティ』は、なかなか壮大だ。

後編では、さらに具体的に、EVやFCV、PHEVなどが、今後どのように普及していくかについて迫っていく。

【取材協力】

※ 岩田 和之 – 本田技研工業株式会社

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