「会社の時計を撮影」「家族にLINE」残業代請求の「実践的証拠集め」弁護士が解説

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2015年10月26日 07:51  弁護士ドットコム

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(弁護士ドットコムの法律相談コーナー「みんなの法律相談」に寄せられた相談をもとに編集部が作成しました)


【関連記事:30分単位でしか残業代がつきません。そんなのアリですか?】


会社から残業代が支給されなかったら、どう請求すればよいのでしょうか。残業嫌いの上司のせいで、残業代を支払ってもらえないかもしれないとの相談が寄せられました。会社に請求するための「証拠集め」の方法を土井浩之弁護士に聞きました。 土井 浩之弁護士に聞きました。


 

Q. タイムカード無し、残業代は払ってもらえる?


もしかしたら、今月分の残業代が支払われないかもしれません。


勤務先はタイムカードがなく、上司の決裁を経て、本社に時間外勤務申請書を提出する必要があります。残業手当が先月までは給付されていたのですが、新しく着任した上司は残業に否定的で、先日、申請書が机の上に置きっ放しになっているのをみつけました。


上司にかけ合うと「私個人の責任で提出しないです」と言うので、私の仕事量が多いことは本社にも認識されていること、前月分までは支払ってもらっていることなどを説明し、納得してもらった・・・はずです。


本当に提出してくれているか、不安です。


本来であれば、来月に支給されるはずの残業代が振り込まれなかった場合、後から会社に請求することはできるのでしょうか。


A.  労働時間を示す証拠を残す


残業割増賃金を支払うことは、使用者の法的義務です。支払わない場合は刑罰を科せられます。残業をした以上は、割増賃金を請求できることは当然です。


上司から、「残業しろ」と命令されて残業した場合だけではありません。


ノルマや納期があるために、残業をせざるをえなかったような場合も、残業割増賃金を請求できます。


ただ、他の誰もが残業割増賃金を請求しないのに、一人だけで請求すると、事実上不利益を受けることがあるでしょう。


労働組合がある会社なら、まずは組合に相談してみましょう。


しかし、今は労働組合がないという職場も少なくありません。


そうした場合でも、できれば、不利益を受けないよう一人で行動しないほうが良いでしょう。最終的には裁判という手段もありますが、その前に、労働基準監督署に相談するのも有効です。


証拠としては、まず労働時間を示すものを残しておきましょう。


スマホなどで、会社にある時計を写してから帰るということも有効です。LINEなど時間が機械的に記録されるもので家族に「これから帰宅する」と毎日送ることによって、手掛かりになることもあります。ログインやログアウトの時間がわかるよう、会社のパソコンのログも活用できるでしょう。


次に「仕事をしていた」という証拠が必要です。


報告書など、仕事の成果物やそのデータがあれば良いですが、もしなければ、残業時間にどんな業務を行っていたのか、手帳に残した記録が有効になる場合もあります。


ところで、パソコンゲームなどをするとログに残ります。仕事をしていなかったという証拠になってしまいますから、注意してください。




【取材協力弁護士】
土井 浩之(どい・ひろゆき)弁護士
過労死弁護団に所属し、過労死等労災事件に注力。現在は、さらに自死問題や、離婚に伴う子どもの権利の問題にも、裁判所の内外で取り組む。東北学院大学法科大学院非常勤講師(労働法特論ほか)。
事務所名:土井法律事務所
事務所URL:http://heartland.geocities.jp/doi709/


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