三井不動産グループが販売した横浜市都筑区の大型マンション「パークシティLaLa横浜」(2007年竣工)で、4棟のうちの1棟が傾いていることが発覚し、建物を支える杭打ちのデータが改ざんされていたことがわかり、大きな問題となっている。マンションを販売した三井不動産レジデンシャルは10月27日、住民に対して補償案を示した。
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報道によると、マンションを建て替える場合は、傾きが発覚した1棟を含む4棟すべての建て替えを実施する。建て替え後、住民は以前と同じ部屋に入居することができ、工事の間の仮住まいにかかる家賃や引っ越し代金などは、すべて三井側が負担する方針だという。また、転出を希望する住民については、建て替え後の新築販売価格で買い取るという提案をした。
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問題のマンションでは、建物を支える52本の杭のうち、少なくとも8本が強固な地盤に届いておらず、地盤に打ち込まれた深さが不足していた。ところが、施工した旭化成建材がデータの改ざんをおこなっていたため、建築時の検査で見抜くことができなかった。元請けの三井住友建設の地盤調査によると、傾いた棟に新たな施工不良は見つからなかったという。今後は、残りの3棟でも調査を進める予定だ。
今回のようなケースで、住民はどう対処すればいいのだろうか。また、補償については、どう考えればいいのか。建築紛争の問題に詳しい福島敏夫弁護士に聞いた。
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「住民の方は、こういうときこそ、できる限り冷静になって事態に対処してほしいと思います。
念頭に置いてほしいのは、『データの改ざん』と『建物の安全性』とは別の問題であるということです。
今回問題になっている建物の傾きは、現状では、ただちに危険なレベルまでは達していないようです。また、通常、建物の構造計算は、かなり安全性を重視しています。
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現在住んでいる建物に傾き等の不具合が特にみられないということであれば、基本的には、施工会社の調査結果を聞くまでは、安心して住み続けてもよいと思います。
その一方で、今回の問題がマンション建設業界一般の問題ではなく、特定の人物が行った異常な事態であるというのであれば、事業主や施工会社側はよく協力して、速やかに改ざんの有無の調査報告を行い、建物の安全性に問題がないということを証明してほしいです。
そうでなければ、市民の不安はいつまでも、取り除かれることがないのではないでしょうか」
三井側から補償案が示された形だが、法的責任については、どう考えればいいだろうか。
「さきほどの繰り返しになりますが、杭工事のデータ改ざんの問題と建物の安全性の問題は、切り分けて考える必要があります。
そして、厳密には、建物に『瑕疵(かし)がある』とか、『安全性が確保できていない』ということが証明されて初めて、事業主の法的責任を問うことができることになります。
しかし、今回は事業主が任意で補償の対応を行うとのことです。その点では住民の方々の負担は軽減されたと言えるのでないでしょうか」
住民に提示された補償の内容については、どう考えればいいだろうか。
「データ改ざんによって住民の方々の信頼を損ねたということもあってか、項目を見る限りは、ある程度充実した内容という印象を受けます。
しかし今回のような大型マンションでは、住民の方々の置かれている状況はそれぞれ異なり、合意までにかかる時間もさまざまですので、最終的にいつどのようにして納得のいく補償額を算出するのか、という問題は残されたままです。
合意形成までにいたずらに時間を費やすようなことになると、さらに住民の方々からの信頼を損なうことにもなりかねませんので、いかにして企業の社会的責任を果たしていくのか、これからの事業主の対応を注目していきたいです」
そのほか、現状では、どんな点が課題として残っているのだろうか。
「区分所有建物の権利関係は複雑です。そうした中で、建て替えに向けて合意形成をどのようにして円滑に行うのかという点は課題でしょう。
また、事業主側についても、売主と複数の施工会社との間で責任をどのように分担するのかという点も明らかになっていません。残された課題は多いと言えそうです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
福島 敏夫(ふくしま・としお)弁護士
元建設会社社員で、杭工事を含む施工管理全般を担当した経験を持つ。一級建築士、一級施工管理技士の資格を持ち、現在も建築関連の案件を専門的に取り扱っている。
事務所名:弁護士法人ボストン法律経済事務所
事務所URL:http:www.boston-lawfirm.jp
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