「生涯現役」を貫く人々、オールドアスリートの活躍

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2015年10月30日 10:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

アスリートの選手寿命は、競技によって大きな差がある。

例えば新体操の選手は20代前半ですでに“ベテラン”と呼ばれる一方、マラソンランナーは30代から本格的に練習を初めて世界レベルに達したということも珍しくない。

筆者はグラップリングの選手だが、この競技はかなり選手寿命の長いほうだ。

筆者の知っている中では、50代後半から初めてグラップリングの練習を受けて還暦過ぎに全国大会出場を果たしたという勇者がいる。

もっとも、格闘技というのは案外長く続けられる性質のもので、アマチュアボクシングの世界でも40代、50代の人はたくさんいる。

いずれにせよ言えるのは、そのスポーツに携わった以上生涯現役を貫きたいと誰もが思っているということだ。

ベッドの上で何もできないまま死を待つのは真っ平御免である。顔に何十本の皺を刻もうと、頭髪の大半が抜け落ちようと、やはりアスリートはアスリートのままでいたい。

現に、それを実現している人達がいる。

鉄の肉体を持つ老人

ドイツ出身の機械体操選手ヨハンナ・クアスという人物がいる。彼女は3年前に話題になった人物だが、2012年の時点で86歳を迎えている老婆である。

いや、老婆と言うのは無礼になってしまう。何しろこのヨハンナさんは、現役の体操選手なのだから。

まずは、こちらの動画をご覧いただきたい。


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何と、平行棒を使って空中静止をやっている。これは相応の握力と腕力、肩の筋力、そして体幹がないと不可能である。ヨハンナさんが超人的な肉体の持ち主だということは、誰の目にも一目瞭然だ。

素晴らしいフィジカルを誇るヨハンナさんだが、こうしたスーパー高齢者は世界中にまだまだ存在する。

アメリカ・ニューヨーク在住のウィリー・マーフィーさんは、70代半ばからパワーリフティングを始めて77歳で世界大会優勝という成績を収めた。

片方25ポンドのダンベルを両手にウェイトトレーニングをする姿は、まさに“鉄人”と表現するべきだ。


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老いを知らないその肉体と精神に、筆者は感服する他ない。

果たして50年後の自分は、ヨハンナさんやウィリーさんのように現役アスリートとして活動しているのかと考えると、正直自信がない。

105歳のスプリンター

日本は世界一の“長寿大国”だ。やはり驚異的なオールドアスリートは存在する。

京都市で先月23日に開催されたマスターズ陸上競技記録会は、国内のみならず世界からも注目されていた。というのも、この記録会には105歳の男性が出場していたからだ。

宮崎秀吉さんは、記録会の前日に誕生日を迎えていた。つまり宮崎さんの生年は1910年、明治43年だ。鈴木梅太郎博士が世界で初めてビタミンを発見したのと同じ年である。第一次世界大戦もまだ始まっていない。

宮崎さんは、この記録会の100メートル走に出場。見事42秒22の記録で走り抜けた。当然これは、すぐさまギネス記録となった。


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さらに驚くべきは、宮崎さんも先述のウィリーさんと同じで高齢を迎えてから競技を始めたという人物なのだ。

何と、90代を過ぎてから陸上を始めたとのこと。しかも10月30日、つまり本日岐阜市で行われる全日本マスターズ陸上選手権にも、堂々出場する予定だという。

約1ヶ月の間に2大会をこなすというのは、陸上選手にとってもかなりのハードスケジュールのはずである。

それを実際にこなしてしまおうとする105歳の現役アスリート。世界は確かに広いが、こんな信じ難い超人が我々の身近にいるのだ。

スポーツは平和の象徴

なぜ人はスポーツをするのか。もちろん健康や自己実現などその答えは決して一つではなく、いろいろあるだろう。

でも人と人との繋がりの中でもっと大切な、そして温かいものがあるはず。

ここで筆者なりの答えを言わせていただければ、それは“平和のため”である。

人は対立しやすい動物だ。国家間、民族間、宗教間、そして世代間での衝突が、今も昔も絶えない。

スポーツは、その緩衝材としての役割を果たしている。例えば「格闘技は野蛮な傷つけ合いで、一刻も早く禁止するべきだ」という声をたまに聞くが、それに対する反論は非常に簡単だ。

「格闘技の試合は平和な環境でしか成立しない」。

オールドアスリートたちの活躍も、それに通じる部分がある。老人と若者は、残念ながら互いを侮辱しがちだ。

若者から見た老人は「時代についていけない懐古主義者」で、老人から見た若者は「近頃の若者は情けない」という具合に映ってしまう。

当然それらは全て誤解なのだが、その誤解を打破する手段があまり存在しないのも事実だ。少なくとも、話し合いでは余計に関係がこじれる。

だが、オールドアスリートたちはそのようなくだらない誤解とは無縁だ。なぜなら、彼らはスポーツの価値を知っているから。スポーツこそが平和の象徴であるということを、細胞の隅々まで実感しているから。

勘のいい読者の方はお分かりだろうが、これこそがオリンピックの精神の根源なのだ。

【参考・画像】

105歳ギネス走者・宮崎さん、秘訣は「週5回肉40g」「30回噛む」(産経WEST)

※ kurhan / Shutterstock

【動画】

※ World’s Oldest Gymnast – Meet The Record Breakers – Guinness World Records – YouTube

※ This 77-year-old grandma can lift more than you – YouTube

※ 105歳宮崎秀吉さん、100メートル完走でギネス認定 Japan’s ‘Golden Bolt’ sets world record – YouTube

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