アフリカの無電化地域を「IT×ソーラー」で変えていく

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2015年10月31日 18:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

エアコン、パソコンに照明と電気なしでは成り立たない私たちの暮らしだが、世界を見渡してみると未だ電気のない無電化の暮らしをしている人が約13億人もいる。

そして電化が最も遅れているのがアフリカのサハラ以南の地域である。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、ケニアは16%、タンザニアは14%しか電化されていないという。そしてこの傾向は農村部で著しい。

これらの無電化地域ではケロシンと呼ばれる灯油が明かりのために使われているが、その煙は呼吸器系の病気など健康にも悪影響を与え、また火事を起こす原因ともなっている。

このような問題を受けて、ケニア政府でも2020年までに地方電化率を40%まで引き上げる地方電化マスタープランを策定し、大規模な太陽光発電や地熱発電などの開発も行っているが、農村部ではまだまだグリッド(送電線)が行き届くところまではいかない。

何せ、アフリカの大地は広大で人口密度も低い。送電線を引く費用を考えたら独立型の電源を設ける方が現実的だ。

立ち上がった若い日本の起業家

このような課題解決のため、アフリカの大地を駆け回る若い日本の起業家たちがいる。

2013年度に創業したベンチャー企業のデジタルグリッドソリューションズ株式会社のメンバーだ。

彼らが手掛けているのは、新しいIT技術と太陽光発電を組み合わせた電気の量り売り事業『WASSHA(ワッシャ)』。

農村地帯には、それぞれの村にひとつは日用品や飲料などを売るキヨスクと呼ばれるお店がある。村人にとって最も身近なこのキヨスクを電化し、村人に必要な分だけ電力を売るというビジネスだ。

キヨスクのオーナーには、150Wのソーラーパネル、蓄電池、チャージャーボックス、コントローラー替わりの携帯電話が無償で貸与される。

そして発電された電気をまずはオーナーが携帯電話の専用アプリから電気をチャージし(エアーワット)、それを村人に小売していく。

この事業のポイントは2つある。

■1:決済に使われるのがすべて携帯電話

ひとつは決済に使われるのがすべて携帯電話という点だ。アフリカでは電気の通っていない無電化地域でも、携帯電話は7~8割もの多くの人に普及している。

そしてその携帯電話で決済のできるのが『エムペサ(M-PESA)』という電子マネーサービスだ。

銀行の口座やクレジットカードがなくても使えるこのサービスは、あらゆる階層に利用者が広がり、ユーザーは1,400万人とも言われている。

この携帯電話を使った電子マネー決済で、キヨスクオーナーは必要なだけ電力を購入し、携帯電話を充電したり、レンタルのLEDランタンやラジオなどを借しだすことができる。

今まで、何十キロも携帯電話の充電のために遠くまで歩いて行っていた村人が、近くのキヨスクで充電できる。

村人に人気なのがLEDランタンのレンタルだ。

ケロシンのランプよりずっと明るく、臭いや煙もない。子供たちが夜も本を読むことができたり、夜店の店頭でも灯りとして活躍する。

何はなくても灯りがあれば、暮らしが変わる。

■2:チャージャーボックスに備わったデジタルグリッド

そしてもうひとつは、チャージャーボックスに備わったデジタルグリッドの技術だ。

これにより各電力変換器(ルーター)にアドレスを付加し、変換動作情報を目的のアドレスに送信した後、動作開始情報を送信する。

つまり、この情報と電力が融合した電力のインターネット化により、電力の量り売りが可能になり、売上などさまざまな情報を収集、管理することができる。

東京大学の阿部力也特任教授が開発したもので、その技術との出会いが『WASSHA』を生み出したという。

「今はタンザニアに拠点がありますが、ここでソーラーキヨスクの売上情報や、発電、蓄電データを遠隔で管理することができます。」

現地に駐在するデジタルグリッドソリューションズの飯沼俊文さんは、デジタルグリッドの仕組みを使うことで将来的には遠隔医療やモバイル・アグリカルチャーなどにも応用できると話す。

デジタルグリッド技術では、顧客情報や市場の情報などさまざまなデータを蓄積することも可能なため、それらを活用してさまざまなサービスやマーケティングをしかけていくことができるのだ。

将来的にはさまざまな応用が可能なシステムだが、今は毎日、ローカルスタッフとアフリカの農村地域のキヨスクに営業に行く毎日だという。

現在、タンザニアを中心に約100ヶ所を超えるソーラーキヨスクを開設した。

今後はスタッフも増やして、独立型の電化拠点の拡大を加速させたい意向だ。

拠点が増えるにつれ、この技術を使ってさまざまなサービスが生み出されるだろう。

まずはコミュニティに電気を。アフリカの大地を走り回る彼らを待っている人たちが今日もいるはずだ。

【参考・画像】

デジタルグリッドソリューションズ

※ WASSHA

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