東京モーターショー2015で盛り上がる「パーソナルモビリティ」の未来

3

2015年11月04日 21:10  FUTURUS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

東京モーターショー 2015が大盛況だ。週末の来場者数は10万人に及ぼうとしており、来週末には10万人を越えることは間違いがないであろう。

その東京モーターショーで注目したいのが“パーソナルモビリティ”だ。

2013年にも体験試乗コーナーを含め、パーソナルモビリティは注目であったが、今年注目したいのはレガシーな“パーソナルモビリティ”。それは2輪車である。

盛り上がる自転車、小型2輪車

ここ最近自転車ブームであり、その影響は間違いなく自動車メーカー、二輪車メーカーにも及んでいる。

電動アシスト付き自転車PASを推進するヤマハ発動機では、2013年にロードバイク型電動アシスト付き自転車『YPJ-R』のコンセプトモデルを出展、今年商品化にこぎつけた。

さらに今年はMTB型のコンセプトモデルを出展しているが、こちらも市販化前提だろう。

yamaha mtb

スズキは、自転車に原動機をつけた形の、まさに本来の意味での“原動機付き自転車”、原付クロスバイク『Feel Free Go!』を参考出品。原点回帰とも言えるだろう。

意外なのはスバル。

こちらは『VIZIV FUTURE CONCEPT』に搭載する未来感溢れるデザインの自転車を展示した。

subaru

ホンダでは、伝統あるカブのデザインを引き継いだEVカブを展示。

同じデザインで原動機付きモデルも用意したことから、今後は同一フレームで、マルチパワーユニットに対応していくことを示唆している。

honda cub

その他、従来型のバイクは新興国市場の盛り上がりに対応し、125ccクラスが活性化している。

ホンダは人気の『グロム(海外名:MSX125)』のバリエーションを展開、カワサキも125ccの『Z125PRO』をマーケットの大きな海外市場へ投入する。

kawasaki z125 pro

安定性のある三輪車

2輪車はどうしても安定性、安全性に欠けるため、先進国では昨今3輪車に注目が集まっている。

3輪車は自立するタイプとリーン(倒れる)タイプの2種類あるが、いずれも走行中はフロント2輪の安定性が安全性に寄与、シニア世代を中心に広がりを見せている。

honda neowing

ヤマハは、LMW(リーニング・マルチ・ホイール)の『TRICITY 125』を昨年市場投入、今年はその上位モデルとなる900ccモデル『MWT-09』を展示。

またホンダでもパワーユニットにハイブリッドを採用した、ネオウィングを展示している。

北米市場で人気の火付け役となった『BRT Can-Am Spyder』は自立タイプ。

ポラリス『スリングショット』は横2名乗車可能な3輪で、幅も1,800mm以上と、もはや自動車といっていいほどのサイズだ。

brt can-am

3輪車で注意しなければならないのは、法規上の扱いだ。

2輪免許が必要なものと、4輪免許が必要なものとがあり、ヘルメットの着用義務や保険、首都高速での2名乗車が可否など大きく異なる。

パーソナルモビリティに立ちはだかる法規の壁

personal mobility

これまでもパーソナルモビリティとして各メーカーがEVを中心に開発、実証実験を重ねている。しかし予想以上にコストがかかり販売にまで至っていない。

なぜなら日本には軽自動車があるからだ。燃費がよく維持費も安い軽自動車が、マイクロカー扱いのパーソナルモビリティの普及を阻んでいる。

同様にセグウェイのような、フットプリントの小さなEVの開発が流行ったが、日本では公道走行不可ということがネックとなっており、今年は目新しいものがない。逆に公道、しかも車道を走行可能な自転車が人気となっているのが現実だ。

この背景にあるのが日本の法規だ。戦後のモータリゼーションの中で作られた、現行法規は旧態然としており、新しいモビリティの入る隙間を与えない。

そのためこの法規に合わせて、または盲点をくぐりぬけた2輪車、3輪車が提案されているというのが実際だろう。しかし21世紀の交通社会に合わせて見直しが必要だ。

国際競争力のある交通社会に向けて

原動機付き自転車はもともと自転車に原動機(エンジン)を装備したところからはじまった自転車の発展形だ。

そのため1980年代までヘルメットの着用義務はなく、購買の手軽さとあいまって主婦の足として広まった。

ところが重大事故が多発したことからヘルメットの着用義務が生まれ、髪型が乱れるといった理由から女性から敬遠されてしまった。現在主婦の足の主力は自転車、特に電動アシスト付き自転車へ移っている。

普通免許に付帯する原付免許は排気量50cc以下の原付一種を運転可能だが、多くの海外地域では125ccクラスまで運転可能だ。

そのため二輪メーカーは海外向けには125ccクラスを、国内向けに50ccクラスを開発、販売する構造となっている。

日本の原付市場が縮小、新興国を中心とした125ccクラスが主流な現在において、日本向けの50ccエンジンを搭載したモデルを用意するのはメーカーにとって負担となっている。

二輪メーカーは共同で、現在小型二輪免許が必要な原付二種、125ccクラスまで普通免許の付帯免許で運転できるようにと国へ嘆願している。これが叶えば国内専用の50ccモデルを作る必要がなく、効率よい生産が可能だ。

また、原付二種モデルは制限速度が30km/hではなく法定速度の60km/hとなる、二段階右折が不要など、高速道路に乗れない以外の不便はない。

市街地での足としては最適で、保険も自動車保険についているミニバイク特約が使えるため維持費もミニマムで済むのがメリットだ。

もう一つの理由として、自転車が改めて車両として扱われ、車道を走行するように道路交通法が変わったことがある。

自転車は免許不要、ヘルメット不要、登録料や税金といったものがかからないことから手軽な足としてより普及している。特に速度が出るロードバイクがここ最近人気だ。

しかし、この自転車には制限速度がなく、実質上原付一種の30km/h制限を越えて走行可能だ。また重大な違反を2回行ったものに安全運転講習を義務づけしたが、免許制度ではないために実効性や抑制力は疑わしい。

つまり、車道での自由度や、購入・維持コストを考慮すると原付一種が、明らかに自転車に対し不利なことが明白だ。この点からも原付を125ccクラスまで引き上げるのは妥当であろう。

またフットプリントの小さなパーソナルモビリティ、具体的にはセグウェイやその類似品は日本では公道走行が認められていない。

海外では電動スケートボードなど、ベンチャー企業が自由な発想で様々な形態のパーソナルモビリティを提案、販売しているが、日本では法規の壁に阻まれて、産業育成という面でも後塵を拝している。

世界にさきがけて超高齢化社会を迎える日本において、パーソナルモビリティの拡充は必至の課題である。

車両区分や免許制度、歩道と車道の区分けを含め、大きく見直す時期がきているだろう。

【参考】

※ 原付二種スクーター 虎の巻 – バイク スクーター – ヤマハ発動機株式会社

ニュース設定