スポーツは、人を選ばない。健康な肉体さえあれば老若男女問わず誰にでも楽しめる。それがスポーツだ。
だが今現在に至るまで、スポーツは男ばかりがその中核にあぐらをかいていたというきらいがある。現にスポーツ指導者は、一昔前までは「男性の職業」と見なされていた。
男性指導者が女性選手を指導することはあっても、その逆は珍しい。だからスポーツライターも常に“男の視点”で記事を書いていた。
女性アスリートは、スポーツに対して何を求めているのだろう? 筆者も含め、スポーツライターがそういうことを真剣に考えることはあまりしてこなかった。
しかし、そのような態度はこれから改めなくてはならない。
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注目されるスポーツメイク
読売オンラインの11月1日付の記事に、このようなものがあった。タイトルは『美しく汗かこう! 「スポーツメイク」広がる』というものだ。
<メイクを施して運動に臨む女性が増えている。
ランニングイベントでメイク講座が開かれたり、汗に強い化粧品が人気を集めたりと、「スポーツメイク」が広がりつつある。「汗をかく姿も美しく」という、女性たちの願いが表れているようだ。(読売オンライン11月1日付記事より引用)>
筆者は、一競技者としての経験をベースにスポーツ関連の記事も書いているが、スポーツメイクというものに注目したことは今まで一度もなかった。
“男の視点”のままだと、やはりそういうことは見落としてしまうのだ。男性指導者の中には「スポーツをしているのに化粧などするな!」と考える者が、残念ながら少なくない。
もちろんこれは女性に向けて、ということに限らず、男性がスポーツ時に髪型に気を遣っていたら、何らかの形でなじられたものだ。スポーツと“美意識”は相容れないものという考え方が、常識といっても過言ではない。少なくとも我が国日本では。
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だが女性にとっての化粧とは、嗜好というより身だしなみである。毎晩入浴し、下着を取り換え、歯を磨く。化粧はその延長線上だ。
だから、そうしたことに男性が口を挟む権利はない。女性の身だしなみは、やはり女性にしかできないからだ。
だがそうはいっても、“運動中に崩れないメイク”は女性にも難しい。そのような悩みを持つスポーツ愛好家のために、最近ではスポーツメイクの講習会も頻繁に開かれている。
東京マラソンとスマホ
石原慎太郎前都知事の評価は、人によって大きく分かれる。だが東京マラソン開催を主導し、しかもそれを毎年のイベントとして定着させた功績は誰しも否定できないだろう。
これにより、東京都民の間でランニングスポーツが「ダイエットや健康維持を越えたライフスタイル」と見なされるようになった。ランニングは全ての競技の基礎である。アマチュア競技の発展に欠かせない土台が、こうして築かれたのだ。
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そしてもう一つ注目すべきは、第1回東京マラソンが開催された2007年だということである。偶然だが、この年はiPhoneが発売された。すなわち“スマホ元年”である。
スマートフォンの登場は、SNSの発達を大きく促した。その場で撮った写真や動画を、即座にSNSに投稿できる。
「世界中の人々と写真を共有できる」という状況は、スポーツにも大きく影響した。「自分たちは常に見られているのだ」ということを、アスリートたちが自覚するようになったのだ。
女性ならば、なおさらそれを意識する。
このような要因から、スポーツメイクはその重要性が認識されるようになった。いつどのような状況においてでも、極力メイクをしておこうという女性が確実に増えたのだ。
これは立派な“スポーツ文化”の発展であり、アスリートならば男女の境なく歓迎すべきことであると筆者は考えている。
競技の中の「配慮」
2020年東京オリンピックまで、残すところ5年弱だ。その間に日本国内のアスリートは、何をしなくてはならないのだろうか?
断っておくが、ここで言う“アスリート”とは何もオリンピックを目指す選手のことではない。筆者のような、実績も可能性もない、凡百の選手も何かしらの形で力になれるのではないか、ということだ。
幸い、筆者には書く能力がある。書くことによって“これからのスポーツに求められる事柄”を、一般に向けて発表することができる。
女性アスリートのメイクと、それを当然と見なすスポーツ環境を作ることは必要不可欠の事柄だ。自分は男だからスポーツメイクなどとは関係ない、などと言っている場合でもない。“配慮”という単語の重みを、我々はじっくり考えるべきではないのか。
それを忘れたら最後、オリンピックは盛り上がりに欠けた不完全燃焼のイベントに終始してしまうだろう。
【参考・画像】
※ 美しく汗かこう! 「スポーツメイク」広がる – 読売オンライン
※ Valua Vitaly / Shutterstock
※ evgenyatamanenko / PIXTA
※ かず / PIXTA