地元で収穫された食材を好んで消費する地産地消へのニーズの高まりや、都市部にいながら緑や土に親しんで生活したいといった“アーバンライフスタイル”の多様化を反映し、近年、大都市やその近郊で、都市型農業(urban farming)が広がってきた。
しかしながら、野菜・果物などの作物を栽培するためには、相応の時間と労力を要するのみならず、土づくり、水やり、害虫や疫病の防除など、一連の栽培プロセスにおいて、専門的な知識やスキルも不可欠だ。
カリフォルニアの都市型農業と地産地消をサポート
米ロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業Farmscape(ファームスケープ)は、2008年の創業以来、地元の学校や公共スペース、企業のオフィス、レストラン、個人宅の家庭菜園など、幅広い層に向けて、都市型農業のためのソリューションを提供してきた。
Farmscapeでは、それぞれの場所に合わせて農園を設計し、有機質土壌や点滴灌漑などを導入した独自の栽培インフラを設置。
ここで作物を栽培すると、水の消費量を75%軽減できるという。
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また、週に1回、経験豊富なスタッフが農園を訪問し、害虫や疫病の防除、灌漑の管理、農作物の収穫などを代行するメンテナンスサービスも提供。
初心者や多忙な人でも、作物を元気でおいしく育てられるよう、継続的なサポート体制を整えている。
Farmscapeは、これまでに、ロサンゼルスとサンフランシスコ・ベイエリアで、500カ所に“都市型農園”を設置し、現在、200カ所以上のメンテナンスを担当している。
レストランをはじめとする地元事業者と積極的に連携しているのも特徴だ。ロサンゼルスの日本食レストラン『n/naka』やサンフランシスコの『STEM Kitchen & Garden』などでは、敷地内にあるFarmscapeの農園で収穫した旬の食材を活かしたメニューで、食通たちの舌をうならせている。
都市型農業を推進するためには?
地元で収穫された生産物を地元で消費する“地産地消”は、生産者から消費者までの距離が近いため、旬の食べ物を鮮度の高いうちに消費できるのはもちろん、輸送のためのエネルギーが削減されることで、環境負荷の軽減にもつながるメリットがある。
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しかしながら、従来、ヒトやモノが密集する都市部で農業を営むには、法規制やコストなどの観点から制約があった。
このような課題に対し、昨今、米国の地方政府では、都市型農業を積極的に推進。
Farmscapeが事業を展開するカリフォルニア州は、各市郡が定める都市型農業推進地区を対象に、農地として土地を利用した所有者に対して、税の優遇措置を適用する法律『Urban Agriculture Incentive Zones Act』を2014年から施行している。
規制緩和や優遇措置の導入といった法的インフラの整備と、Farmscapeのような実務的なソリューションの“両輪”がうまく組み合わさることで、今後、都市型農業をさらに推進していきそうだ。
【参考・画像】
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※ n/naka
※ STEM Kitchen & Garden
※ num_skyman / PIXTA