ワークライフ・バランスの実現に力を入れ、1990年以降、育児休業制度や育児時間勤務制度(短時間勤務)など、さまざまな制度を導入してきた資生堂。先駆的な取り組みもあって、就職人気ランキングでは常に上位。特に女子学生から強い支持を集めている。
しかし、その資生堂が昨年の4月から「子育て中の女性社員にも、他の社員と平等なシフトやノルマを与える」と方針転換を行っていたのだという。11月9日放送の「おはよう日本」(NHK)では、これを「資生堂ショック」として特集していた。
業績不振の原因は「美容部員の短時間勤務」なのか
方針転換が行われたのは、デパートなど店頭で対面販売を担う美容部員(ビューティーコンサルタント)の働き方。会社は1991年に短時間勤務を導入したが、美容部員まではなかなか浸透せず、2007年に当時の社長が制度の利用を勧めたところ一気に利用者が増えた経緯がある。
ところが時期を同じくして、国内売り上げが1000億円も減少する事態が発生。会社はこの原因のひとつに、書き入れ時である17時以降に美容部員の数が足りなくなっているためと考えるようになった。
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資生堂ジャパンで営業部長を務める新岡浩三さんによると、短時間勤務者は早番という暗黙のルールが存在していたという。しかし通常の早番の退社は18時45分だが、時短勤務制度を最大に利用すると退社は16時45分に。ピーク時に人手が一時的に足りなくなることが「(販売の)機会損失につながっていたのではないか」と分析する。
また現場では、子育てをしていない美容部員に遅番や土日勤務の負担が集中したため「不公平だ」「プライベートの時間がない」といった声も相次いだ。制度運用の見直しに迫られた会社は、子育て中の美容部員に「仕事と育児の両立 新たなステージへの進化」というDVDを配布。冒頭で女性の執行役員が、短時間勤務制度についてこう訓示したという。
「月日を重ねるごとに、なんとなく『育児時間』取るのが当たり前になってきた。甘えが出てきたりだとか、取るという権利だけ主張しちゃったり」
短時間勤務でも「月2日の土日祝勤務」「月10日の遅番勤務」は必須
見直された新制度には、短時間勤務利用者であっても原則「月2日の土日祝勤務」や「月10日の遅番勤務」は必須であり、日程は会社が決定するといった内容が盛り込まれている。
美容部員として入社14年目、昨年11月に職場復帰した木内枝里佳さんもDVDを渡された。方針転換を聞き「正直『えっ!?』とは思いました」と明かす。資生堂が「女性に対して優しい会社というイメージ」があったというから、なおさらだろう。
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しかし木内さんは、復帰後は短時間勤務を利用しながら月3回の遅番と4回の土日勤務をこなしている。1日の接客ノルマは18人でフルタイムと変わらず、育児とキャリアアップの両立も視野に入ったようだ。
「時短者だから無理、やる気がない、そうは思われたくないので。今後はひとつ上のステップで、店を統括できるチーフやマネージャーの立場を目指せればと思う」
資生堂人事部ビジネスパートナー部室長の本多由紀さんは「確かに厳しい部分はあったかもしれないが、会社も社員もどちらも成長していく意義のある大事な取り組み」と話していた。会社は育児中の女性を、重要な戦力にしたいと考えているようだ。
ネットでは「イメージダウン」「就職人気落ちる」と批判も
子育て支援の導入による資生堂のような問題は、他の企業でも直面する可能性がある。法政大学経営学部の佐野嘉秀教授は、次のように指摘した。
「企業としては短時間勤務社員の働き方に配慮しつつも、通常社員の働き方に負担が生じないよう、社員の間で負担の平等化、公平化を図ることが必要です」
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スタジオでも「職場の不公平感をなくすことで、お互い助け合おうという意識がより強くなるのかもしれませんね」と今回の取り組みに理解を示していた。
しかしツイッターには「資生堂ショック」がトレンド入りし、辛辣な意見が相次いでいる。「資生堂には本当にがっかりだな」「私の中での資生堂のブランドイメージダウン」といったもののほか、「家に資生堂の化粧品があったら捨てよう」という激しいものもある。
人手が足りないのであれば「定年した人を一時雇用して代替要員として充当」「ワークシェア」といった方法も考えられるとして、何とかならないのかという声も多い。これまで資生堂には他社のお手本になって欲しいという期待があったためか、
「TL上の資生堂ショックの話が企業にとって非常に悪い方向に傾いてて、これで不買が起こって業績更にダウンとかシャレにならんのでは…」
「子育て中の待遇改善している中、逆行している! 資生堂の就職人気は落ちるのでは?」
などと、今回の方針転換が業績回復に悪く作用するのではとの意見もあがっていた。
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