インドネシアの「電子書籍元年」 電子書店MangaMonグランドオープン

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2015年11月10日 06:10  FUTURUS

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FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

スマートフォンやタブレットは、確実に我々の暮らしを変革させた。

一つ例に取ると、本だ。スマホやタブレットを介した電子書籍というものが普及すると、社会のペーパーレス化が一気に進んだ。

少し前までは「版権を脅かすペリー艦隊」と見られたKindleも、今ではそのシェアを着実に伸ばしている。それ以外の電子書籍サービスも、機能をより使いやすく充実させることで液晶画面の中に定着した。

だが、スマホが普及しているにもかかわらず、そうした電子書籍サービスが未発達の国も存在する。インドネシアがそうだ。

それ故に、この国の電子書籍市場は広大なフロンティアが広がっている。

海賊版対策の一手に

意外なことだが、インドネシアの電子書籍は今年2015年を“元年”と表現してもいいくらいに未開拓の分野だ。

筆者はFUTURUSでもその他のメディアでも、インドネシアのサブカル人気についてそれぞれ切り口を変えながら記事を手がけてきた。

日本で好評の漫画は、インドネシアでもやはり好評だ。そういう意味で日本人とインドネシア人はセンスが似ている。ところが様々な問題もあり、インドネシアの出版事情は日本のそれほど恵まれているとは言えない。

しかし、そんな状況はあと数ヶ月で大きく変わるかもしれないのだ。

“ペリー艦隊”ことKindleにまったく引けを取らない書籍配信量を誇る、『eBooksJapan』。

イーブックス=澤田オフィス提供

電子書店『MangaMon』は、インドネシア語に訳された日本の漫画作品を提供するコンテンツページとして、大きな期待が集まっている。サービス開始時点での書籍数は25タイトル179冊のみであるが、新たな作品の翻訳作業や電子化は急ピッチで進められている。

そう遠くない将来、書籍数が日本並みに充実することは、想像に難くない。

『MangaMon』は、現地で強力な後ろ盾もえている。インドネシアを代表する総合メディア企業コンパス・グラメディアグループがそれだ。

イーブックスイニシアティブジャパンの現地パートナーは、このコンパス・グラメディアグループ傘下の企業だ。

ここまで準備を整えて巨大市場に臨むのは、決して利益だけを追求するという考えからではない。『MangaMon』は、大きな社会的使命を負っている。

海賊版対策だ。インドネシアでは、版権ビジネスを蝕む問題として海賊版作品が横たわっている。

この話題については非常に多岐に渡り、詳細を書くことはまた別の機会に譲りたいと思う。だが一つ言えるのは、インドネシア政府も現地市民も海賊版問題に対抗する決定的な一手をまだ持ちあわせてはいないということだ。

逆に言えば、『MangaMon』がその“決定的な一手”になるかもしれないということである。

デジタルの下の平等

筆者は3ヶ月ほど前に、インドネシアのスマホ事情についての記事を書いた。

数年前まではBlackBerryの独壇場だった巨大市場は、今ではAndroidが台頭し価格も安くなっている。いわゆる“100ドルスマホ”がこの国の4G回線普及に一役買ったという背景があるのだ。

振り返れば、時代の進歩は早いものである。筆者がバックパッカーとしてあちこちへの放浪を始めた頃は、まだスマホというものがなかった。

日本人の持っている“音楽も聞けるカメラ付き携帯電話”は発展途上国の人々の憧れで、時として盗難の対象になったほどだ。ところが携帯電話の性能の向上は、結果として“デジタルの下の平等”という状況を生み出している。

“富裕層のための高級品”だったスマホやタブレットが、ミドルクラス以下の市民にまで普及すると、誰しもが同じアプリを楽しむようになった。

そしてインドネシア国民は、平均年齢がまだ30歳に満たない国だ。新しいアプリの配信情報には非常に敏感である。半年前には影も形もなかった新しいサービスがいつの間にか普及している、ということも珍しくない。

だからこそ、インドネシアという国から一瞬でも目を離すことができないのだ。

サブカル情報をいつでもお届け

イーブックス=澤田オフィス提供

『電子書店MangaMon』と運営企業は銘打っているが、部外者である筆者の感想はそれと異なる。

『MangaMon』の配信サービスは、電子書籍のみに留まらない。インドネシア国内で行われる、サブカルイベントやコスプレコンテストなどの情報、最新ポップカルチャーについての記事などが掲載されている。これを鑑みると、『MangaMon』はすなわち“サブカル総合情報サイト”という位置付けなのだ。

サブカルファンやオタクというのは、不思議なことに世界共通の進化を遂げる。何やらいろいろと詰まっているらしいバッグを抱え、“聖地”があると知ればどんな遠い場所からでも、いの一番に駆けつける。そんな彼らには、常に“ポケットの中の最新情報”が必要とされている。

『MangaMon』は、その需要に見事応じた形となっている。インドネシアに進出する日系企業は、もはや重工業だけが花形というわけではない。

視点を変えれば、将来有望な進出企業はまだまだたくさん存在するのだ。

【参考・画像】

※ eBookJapan インドネシア語訳された日本マンガを販売する – PR TIMES

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