ロボットだからこそ難しいことがある。
私たちは立っているとき、無意識に体中の筋肉を微調整して重心を移動し、バランスを保っている。
改めて考えると、私たちは成長と共に、実に複雑な動作を学習してきたのだ。だから重たい腕を前方に突き出して伸ばしたりしても、その重みで前に倒れることは無い。
しかし、そんな無意識に行っている絶妙なバランス調整を、ロボットが自分で学習できたらどうだろう。
子供のように学習するロボット
その『ダーウィン』と名付けられた小型の人形ロボットは、人間の幼児の様な不安定さで立っている。
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しかし、彼のその不安定な様子は、ロボットが人間の子供が学習するときと同じ様な神経学的なプロセスを経て、新しい動作を学習しようとしている姿なのだ。
『ダーウィン』の学習は、カリフォルニア大学バークレー校のPieter Abbeel准教授の研究室で行われている。
彼が不安定な動作をとると、いわゆる『ディープラーニング』によって成長する。これは生物の脳で起きているのと同様のアルゴリズムだ。
そこでは神経細胞をシミュレートした非常に複雑なニューラル・ネットワークが利用されている。
例えば、片方の腕を単純に伸ばせば重心が移動して倒れてしまうが、そんな時に重心を保つにはどのような姿勢で腕を動かすべきか学ぼうとする。
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また、地面が傾いたときにも、倒れないように腕を動かしてバランスを取ることを学ぼうとする。
また、押されても倒れないように重心を移動させてバランスを取ろうとする。
簡単に言うと、『ダーウィン』は、“不安定な動作体験”を経て、“不安定な状況である”と認識し、成長していくのだ。
人や動物が、数多の失敗を経て成長するのと何ら変わりない。失敗は成功のもと、だ。
ニューラル・ネットワークの可能性
この様な学習能力があれば、ロボットはより多くの変化に対応できるようになるだろう。
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ワシントン大学のコンピュータ科学とエンジニアリング部門のDieter Fox教授は、「このニューラル・ネットワークによる学習というアプローチは、ロボットに巨大な可能性を与える」と語る。
確かに、ロボットにありとあらゆる動きや環境への対処方法を想定したプログラムを与えるよりも、ロボット自身が自ら様々な環境への対応方法を学習できれば、もう、SF映画の世界が現実になる様ではないか。
将来、災害現場や工事現場の複雑な環境を、“試行錯誤しながら”歩いている、人間くさいロボットの姿を目にすることになるかもしれない。
人工知能、そしてロボットの将来にワクワクしてくる。
【参考・画像】
※ A Robotic Toddler Uses Deep Learning to Walk – MIT Technology Review
※ Sunny studio / Shutterstock
※ Arthimedes / Shutterstock