東京モーターショー 2015が閉幕し、いよいよ2016年の足音が聞こえてきた。
東京モーターショー 2015の動員数はプレスデーの盛り上がりからは多少期待外れの10%減の812,500人に留まったが、好天に恵まれた前回と比較し今回は天候不順といった影響が大きく、満足度でいえば前回87.3%から91.0%と向上している。
それだけ自動車業界への期待も高まっていることだろう。
そこで今回は2016年の自動車業界に期待したいこと、そして未来予想をまとめてみたい。
復権するスポーツカー
東京モーターショー2015では、トヨタがスモールFR『S-FRコンセプト』、マツダがロータリースポーツ『RX-VISION』、ホンダは発売間近の『新型NSX』の量産モデル、ニュルブルクリンクFF最速の『シビック・タイプR』、スズキは待望の『アルト・ワークス』と、庶民的なものからスーパースポーツまで、幅広くカバーされたのが特徴だ。
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また、2015年に発売されたホンダ『S660』やマツダ『ロードスター』は、前評判から売れ行きまで好調である一方、排気量、パワー不足も指摘されている。
当初から噂されていた『S1000』、100馬力規模のエンジンを『S660』に搭載するのかどうか、ロードスターはアメリカ市場向けに2000ccエンジンを搭載。
このモデルを日本市場に投入するのは、時間の問題と見られている。いずれにしても、購入を迷っていた人にとっては、大きな後押しになるだろう。
また、海外勢で注目なのは『ルノー・トゥインゴ』だ。
メルセデスのスマートと共同開発された『トゥインゴ』は、昨今珍しいレイアウトであるRR(リアエンジン、リア駆動)を採用。
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当面は通常モデルを投入するが、期待はじきに発表になる『ルノー・スポールバージョン』だ。
ハンドリングに定評のある『ルノー・スポール』とRRの組み合わせだけに、隠れた名車になるのではないだろうか。
進撃の新型プリウス
満を持してトヨタが投入するのが『新型プリウス』。
新しいプラットフォーム、『TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)』を全面採用し、パワーユニットのコンポーネントからシャーシに至るまで、共通化したモジュールを組み合わせることで、トヨタ車全体のクオリティを引き上げるものだ。
同じような考えはVWの『MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)』が先行しているが、さきごろのディーゼル・ゲート事件によりVWは大打撃、停滞を余儀なくされるだろう。
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クリーン・ディーゼルと凌ぎを削ってきたハイブリッド車だが、これによりハイブリッドやPHV(プラグインハイブリッド車)にとって優位な状況が決定的となり、ますますプリウスを中心として新型ハイブリッドがトヨタ車の主力となるに違いない。
自動運転まであと4年
テスラの強みは電気自動車なだけではない。
さきごろソフトウェアバージョンアップにより、日本国外で自動運転機能が追加された。
もともと車両自体には、自動運転を可能とするデバイスがついているため、あとはそれを制御するソフトウェアさえ備われば自動運転が可能となる仕組みだ。
しかし、早速無謀なドライバーによるエクストリームなチャレンジが行われ、運転モラルが問われる事態となっている。
手放し運転はもちろん、助手席にうつる、後部座席にうつるなど、いざというときにドライバーが操作できないことを平気でやり、その動画を動画共有サイトにアップするほどだ。
幸いまだ事故は報告されていないが、緊急自動ブレーキが作動するなど事故一歩手前だ。日本では、まだこの自動運転機能は導入されていないが、事故時の責任問題など、法整備も含めてまだまだ課題は多い。
東京モーターショー 2015の出展で、自動運転に関する技術はひとつのトレンドになっており、各メーカーとも東京オリンピックの開催される2020年に焦点をあわせ、自動運転自動車を導入すべく着実に開発を進めている。
これまで自動ブレーキでは、スバル『アイサイト』が一歩抜きんでいる感があるが、各社の追い上げは激しく2016年は、ますます自動運転関連技術に注目したい。
カーナビの存亡
新しい技術が生まれれば、消えていく技術もある。そのひとつがカーナビだ。
スマートフォンの急速な普及と、それ上で動くカーナビアプリが車載カーナビの立場を危ういものとしている。
特に今年ヤフー、グーグルと相次いでカーナビアプリを無料で導入、特に渋滞情報まで無料で提供している Yahoo! カーナビの破壊力は絶大だった。
オンラインのため、常に最新の地図が表示されるカーナビアプリは、これまでの車載カーナビ、PNDで必要だった地図アップデートが不要という点も高評価だ。
そのため、2016年はさらにカーナビアプリ市場が激化することだろう。その中でキーとなるのは『プローブカー』である。『プローブカー』とは実際に走行したデータをセンターへと送信、ビッグデータとして蓄積・解析することでリアルタイム渋滞回避ルートの案内や、未来の渋滞を予測することまで可能となる。
『プローブカー』は、自動車社会全体にとって経済損失の軽減に役立つ技術である上、自動運転技術にも転用可能なものである。
2016年は転機になる年
これまで自動車とは自らハンドルを握って運転するものだった。
しかし、自動運転技術の急速な発達により、今後は乗せてもらうものになるかもしれない。
一方で、ハンドルを握って運転する楽しみを満喫するスポーツカーも復権の兆しを見せており、両極化していくのではないだろうか。
2016年はその転機となる節目の年になるだろう。