本当に怖い「ドーピング」クスリ漬けで性別変わった選手も

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2015年11月15日 18:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

ドーピング問題が、ここ最近になってまたクローズアップされている。

世界反ドーピング機関の調査によると、ロシアの陸上競技選手とその関係者が組織的なドーピング投与を行っていたというのだ。

調査の対象には、ロンドンオリンピックのメダリストも数名含まれていて、同機関はロシア選手のリオデジャネイロオリンピック出場停止を勧告している。

もちろん、これにロシア政府と同国関係組織は反発しているが、恐るべきスキャンダルであることに変わりはない。

我々日本人にとっては、2020年の東京オリンピックへの影響がどうしても気になってしまう。

果たしてこのドーピング問題は、今後のオリンピック競技にどのような変化が出てしまうのか。

国家による選手育成の裏で

スポーツの歴史は、ドーピングとの戦いの歴史と言ってもいいかもしれない。

かつて、ドイツ人民共和国という国があった。一般には『東ドイツ』と呼ばれている。その東ドイツは冷戦時代、ソビエト連邦の傘下にあった。だがスポーツに関しては盟主であるソ連に並ぶ活躍を見せている。

特にオリンピックに関しては、夏と冬合わせて519個ものメダルを獲得している。

それはすなわち、英才教育の賜である。全国各地の幼稚園や小学校にスカウトを巡らせ、才能のある子を奨学金付きでスポーツ学校に転入させる。

そこで四六時中競技漬けのスパルタ教育を施し、勝ち残った生徒をさらに“強化”させる。

ここで言う“強化”とは、投薬のことだ。現代ビジネスの記事に東ドイツのドーピングについて書かれた記事があるので、紹介させていただこう。

<犠牲者は皆、スポーツが大好きで、オリンピック選手を夢見てハードなトレーニングに励んだ青少年だった。

12歳のときから服用していたというある体操選手は、“午後のトレーニングで、力がみなぎるように感じた”と語っている。そんな彼に、コーチは安全ベルトなしで危険な技を練習させた。

その結果、まず左腕を折り、次に右腕を折り、最後に肩甲骨がバラバラになった時点で、体操をあきらめた。夢が壊れ、失望は大きかった。

しかし、彼の場合、そのおかげで経口トゥリナボールから離れることができた。練習場では、事故が非常に多かったという。(現代ビジネス2014年11月14日付記事より引用)>

エリートコースから脱落した少年少女は、結果的に幸運であった。

逆に大会で結果を出し続けた選手は、今も投薬による後遺症に悩まされている。

「元」女子選手の悲劇

80年代半ば、女子砲丸投げのとある東ドイツ選手が注目を集めていた。

彼女の名前は、ハイジ・クリーガー。女子選手とは到底思えない“筋肉の山”のような肉体の持ち主で、1986年のヨーロッパ選手権では21メートル10センチの記録で優勝している。

ちなみに、その2年前に開催されたロサンゼルスオリンピックでの同種目の優勝記録が、20メートル48センチ(西ドイツのクラウディア・ロッシュが投擲)だから、時期がわずかにずれていればオリンピックも充分に狙えた選手である。

しかも、この時のヨーロッパ選手権の開催地は、西ドイツのシュトゥットガルトだ。東ドイツ政府はクリーガーの優勝を“仮想敵国での勝利”という謳い文句で大いに宣伝した。

だが、クリーガーが1988年のソウルオリンピックで表彰台に立つことはなかった。

それどころか、彼女は長年のドーピングがもたらす副作用に肉体を蝕まれ、ホルモンバランスの異常が顕著になっていく。もはや女性として生活することが困難になり、ついには性転換手術をして「アンドレアス・クリーガー」という名の男性になってしまったのだ。

そして、さらに重要なのは、クリーガー自身は自分が投薬をされていたとは思っていなかったということだ。いや、クリーガーだけではない。当時の東ドイツ選手はコーチから「これはビタミン剤だ」と言われ、それをまったく疑うことなく飲んでいたという事実が明らかにされている。

東ドイツ代表選手として活動していた元アスリートの多くは、心臓疾患や糖尿病などに苦しんでいる。

罪なき若者の夢と才能を貪り尽くした国家的犯罪は、今もスポーツ界の黒歴史として記憶に刻み込まれてしまっている。

アメリカでも問題化

ドーピング問題は、何も旧東側諸国だけの出来事ではない。

共産主義国家と戦い、東ドイツのスポーツ界を散々非難してきたはずのアメリカも、プロスポーツ界でのドーピング横行が問題化している。

総合格闘技イベント『UFC』でも、契約選手たちが相次いで薬物陽性反応を出したという出来事が今年の初めにあった。

実は格闘技界は、長い間ドーピング対策については常に後手だった。アメリカのマット界はボディビルディング界とつながりが深く、そのボディビル界は“ケミカル”と“ナチュラル”に二分されている。

筋肉増強剤を使用しているかそうでないか、という違いだ。そして80年代から90年代にかけての時期は、より大きな筋肉を身にまとっている“ケミカル”の選手が花形だった。

ボディビルダーとトレーニングジムでの接点がある格闘家も、そうした流れで薬物を使用していた。

バランスの取れた食事と規則正しい生活習慣で肉体を管理しようという発想が主流になったのは、実はほんの最近のことなのだ。嘘のように思われるかもしれないが、日本ですらも「ビタミンと筋肉は関係ない」という理由で野菜を食べない選手(!)が多く存在した。

このようにアメリカの“ドーピング汚染”は東ドイツとは違った流れだが、選手たちに悲劇をもたらしていることに変わりはない。

東京オリンピックに向けた課題は、こうした方面からも噴出しているのである。

【参考・画像】

ロシア、「国ぐるみのドーピング」か リオ五輪出場停止も – CNN

※ 総合格闘技「UFC」に激震――人気選手に薬物反応、どうする? – ITmediaビジネスオンライン

※ Evlakhov Valeriy / Shutterstock

※ Cherries / Shutterstock

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