「本物」に近づく義手のテクノロジー、進む低コスト化。スマホでパターン学習も

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2015年11月17日 23:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

義手と義足、どちらが作るのにより手間がかかるのか。その答えはやはり義手である。

義足は製作が比較的容易だ。立って歩くだけなら身体を支える棒だけでも構わない。ところが義手になると、片方計5本の指を作らなくてはならない。もっとも昔の海賊のような鉤手型にするのなら簡単だが、いずれにせよ“本物の手のような義手”を作ることは今も困難を極める。

だが、技術の進化は“本物の手のような義手”を生み出そうとしている。

3Dプリンターがもたらしたもの

少し脱線した位置から話を始めるが、以前3Dプリンターで拳銃を製造した男が逮捕されたということがあった。これは日本での出来事だ。

アメリカには「銃の製造データを無料で配信しよう」という団体があり、逮捕された男もその団体からデータを入手していた。これにより日本国内では、一部から“3Dプリンターを規制しよう”という声が挙がった。

確かに3Dプリンターは、時に大多数の市民にとって“望まれざるもの”まで生み出してしまうこともある。だがそれと同時に、この世の全ての人々が、自由と平等を得るための機会を与えている事実があることも、決して忘れてはいけない。

まずはこちらの動画『6歳の仏少年にヒーロー風の義手、3Dプリンターで US foundation helps French boy get ‘superhero’ hand – YouTube』をご覧いただきたい。


動画を別画面で再生する

未発達な右手を持つ6歳のフランス人少年に、アメリカの支援団体が義手を送ったという内容だ。

この義手にはちゃんと5本の指があり、しかも動かせるではないか。握手もできるしボールも掴める。これは3Dプリンターで作ったものだ。

少し前なら、これだけの義手を作るのには高額な費用を要した。だが3Dプリンターによって、その製作費は50ユーロ以内に抑えられたという。

規制論は正統的か?

義手の低価格化は、特に子どもたちにとっては朗報である。

これは義足でもそうだが、子どもは当然ながら日々成長している。それに合わせた義肢の交換は欠かせないが、先述の通りそれなりのものを作るとしたら、経済的負担が巨大なものになってしまう。

だから、子どものうちは関節可動が一切ない簡単な(すなわち低コストの)義手しかはめられない……という例が多いのだ。

3Dプリンターは、そのような現状をもはや覆しつつあるのだ。

拳銃製造事件を取り上げ、3Dプリンター規制論を唱えるのはもちろん各人の自由である。だがその規制が成立したとして、それが義手を待ち望む子どもたちにどのような影響を与えるのかを考えることは、大人としての義務ではないのか。

「悪用される危険性があるから所持を規制しよう」という発想は、いささか短絡的のような気がするのは筆者だけだろうか。

スマホでパターン学習

先日、電気通信大学が新型の筋電義手開発を発表した。

これは前腕部の筋電信号をセンサーにキャッチさせ、それを基に義手の各関節を動かそうという技術だ。

しかも、筋電信号のパターン学習は、スマートフォンを介して行うことができるという。


動画を別画面で再生する

今までの筋電義手は、このパターン学習に大変な手間暇を要した。それがスマホを使うことで、短時間のうちに義手を取り扱えるようになる。

このように、人口義肢の世界ではあらゆる技術革新が進められている。数年前までは「SFのような未来技術」に過ぎなかったものが、今や現実になりつつあるのだ。

明るい未来への扉が、開かれようとしている。

【参考・画像】

子どもに「スーパーヒーロー」の義手、3Dプリントで活用広がる – AFP

※ 電通大など、簡単に動かすことができる個性適応型筋電義手の臨床実験実施へ – マイナビニュース

※ S.Dashkevych – Shutterstock

【動画】

※ 6歳の仏少年にヒーロー風の義手、3Dプリンターで US foundation helps French boy get ‘superhero’ hand – YouTube

※ 電気通信大学 記者会見、筋電義手関連 平成27年11月11日 – YouTube

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