女の自爆が西欧にとって大問題なわけ

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2015年11月19日 16:41  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

 フランスの治安当局は昨日未明、週末の同時多発テロの首謀者の潜伏先とみられるパリ郊外のサンドニのアパートを強制捜査した。このとき現場にいた女1人が自爆したが、テロ対策専門家によると、西ヨーロッパで女性が自爆したのはこれが初めて。


 AFPによれば、捜査の目的はフランス史上最悪のテロを計画したとみられるアブデルハミド・アバウド容疑者の逮捕だった。アバウドが現場にいたかは不明で、自爆した女の身元もまだ特定されていない。現場にいた一味はテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)と関係があったとみられる。


 イギリスの危機管理コンサルティング会社、リスク・アドバイザリー・グループの「テロ追跡」データベースには、07年1月以降に西ヨーロッパで起きたテロのデータが入っているが、女性の自爆テロは1件も記録されていない。


 それ以前にも西ヨーロッパの10カ国では、女性の自爆テロは起きていない。


 同社の調査スタッフ、アンドルー・マジョランは、テロ組織が西ヨーロッパで新手の戦術を使い始めた兆候として今回のケースに注目している。自爆した女は新たなテロ攻撃の準備をしていた可能性があるという。


 地政学的リスクの分析を専門とする英コンサルティング会社、ベリスク・メープルクロフトの記録もこうした見方を裏付ける。


 同社のヨーロッパ担当責任者フロリアン・オットーによると、ISIS関連組織がパリ在住の女性メンバーに自爆テロを指示したことは、ヨーロッパにおけるテロの脅威が一段と増したことを意味する。ISISやヌスラ戦線などのイスラム過激派に加わるために中東に渡ったヨーロッパ人女性はかなりの数にのぼるからだ。「たとえばシリアに向かったドイツ人およそ750人のうち、110人は女性とみられている」


 テルアビブに本拠を置く危機管理コンサルティング会社、レバンティン・グループのマイケル・ホロウィッツも警戒する。「(女の自爆は)フランスではこれが初めてで、極めて異常なケースだ」


衝撃を最大限にする戦略資源として


 世界の他の地域では、女性の自爆テロは珍しくない。東ヨーロッパ、アジア、中東、アフリカでは、反政府組織が数十年前からショック戦術として、また戦略的な資源として、女性を自爆テロに駆り出してきた。10年3月にモスクワの地下鉄で起きたテロでは、女の犯人2人が2つの駅で自爆し、40人近い死者が出た。


 レバノンでは80年代に左派のアラブ民族主義組織が盛んに女性メンバーを自爆テロに利用。ロシア連邦のチェチェン共和国でも、分離独立派が2000年以降、紛争で夫や兄弟を失った女性たち、いわゆる「黒い未亡人」を自爆テロ要員に仕立ててきた。


 パレスチナ過激派は00〜05年の第2次インティファーダ(抵抗運動)で、イスラエル人を標的にした自爆テロに女性を駆り出した。イラク出身の女性テロリスト、サジダ・リシャウィは05年、ヨルダンの首都アンマンのホテルで行われた結婚披露宴で自爆テロを実行しようとした。


 テロ対策専門家によると、女性が残虐なテロに駆り出されるのは、警戒されずに標的に接近しやすいメリットがある上、女性の凶行は衝撃が大きく、メディアが派手に取り上げてくれるからだ。社会を震撼させ、人々に恐怖心を植え付ける効果も大きい。


「(女性の自爆テロは)テロリストに対する一般の人々の認識を変える」と、マジョランは言う。「いかつい男や過激な若者だけの凶行ではなくなり、疑心暗鬼に陥ってしまう」


 ISISはこれまで女装した男に自爆テロをさせることはあっても、テロ攻撃に女性を使うことはなかった。




ジャック・ムーア


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