2015年の「バックミンスター・フラー」は?
『バックミンスター・フラー・チャレンジ(BUCKMINSTER FULLER CHALLENGE)』とは、『宇宙船地球号』を提唱した人物として知られ、20世紀に建築やデザインなど、幅広い分野にわたって活躍した米国の偉人バックミンスター・フラー(Richard Buckminster Fuller)にちなみ、2007年に創設された国際デザインコンペティション。
地球温暖化の防止、生物多様性の保全、再生可能エネルギーへのシフトなど、世界が直面する喫緊の課題に対して、具体的なソリューションを示す優れたプロジェクトが、毎年受賞している。
2015年度は、136カ国400以上のプロジェクトの中から、海洋生態系の再生と沿岸地域の雇用創出に取り組む『GreenWave(グリーンウェーブ)』が、最も優秀なプロジェクトとして表彰された。
世界初の垂直型複合養殖システムが誕生
GreenWaveは、海面にロープを浮かべ、海藻、ホタテ貝、ムラサキイガイを栽培しながら、海底で、牡蠣やカニのためのカゴを設置する、世界初の垂直型複合養殖システムを開発。
二酸化炭素や窒素を吸収する海藻の作用によって、海水を浄化しながら、1エーカー(約4,047平方メートル)あたり、年間、海藻10トンと貝類25万個を収穫する。
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海洋生態系の維持と雇用創出の両立がカギ
ロンドン動物学会(ZSL)によると、乱獲や水質汚染などの影響により、2012年時点での海洋生物の個体数は、1970年に比べて49%減少。
海洋生態系が損なわれ、気候変動にも影響をもたらす可能性が指摘されている。
また、従来型の漁業に依存してきたがゆえ、苦境に陥っている沿岸地域の産業構造を変革し、雇用を確保することも不可欠だ。
このような複雑な課題に対して、海洋生態系を再生しながら、魚介類の生産量を増やす、『GreenWave』の養殖システムは、いわば“狩猟型”だった漁師たちを“農耕型”に変える仕組みとしても、高く評価されている。
『GreenWave』では、加工食品や医薬品、化粧品、飼料、肥料、バイオ燃料など、海産物を活用した様々な商品開発にも、今後、さらに注力していく方針だ。
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海藻のパワーに注目!
海苔、わかめ、昆布など、海藻類の養殖は、日本でも、長年実践され、沿岸海域の浄化に貢献してきた。
『GreenWave』もまた、この海藻類の特性に着目し、活かすことで、持続可能な養殖システムを構築している。
これまで見過ごされがちだった海藻のパワーに、改めて注目が集まりそうだ。
【参考・画像】
※ BUCKMINSTER FULLER CHALLENGE
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※ GreenWave
※ Crisis in global oceans as populations of marine species halve since 1970 – Zoological Society of London
※ ノリの養殖は沿岸海域環境を浄化している – 有賀祐勝(一般財団法人海苔増殖振興会)