ファーストリテイリング「世界共通」の人事システム運用、どの国の法律が適用される?

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2015年11月22日 09:21  弁護士ドットコム

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衣料チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、外国人を積極的に登用する方針を決めたという。外国人社員の母国の店舗だけでなく、日本の本社などの幹部にも起用する世界共通の人事システムを始めると、日本経済新聞が報じた。


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報道によると、店舗スタッフから幹部まで、世界9万人の人事データから、国境を越えて優秀な人材を登用できるようにする。社員の職務履歴や査定、今後の希望キャリアなどを一括して管理するシステムが完成予定だという。



世界共通の人事システムというと、各国の制度や慣習とどう折り合いをつけるのか興味がわく。一般論として、人事制度を世界共通にする場合、どのような課題が想定されるだろうか。山田長正弁護士に聞いた。



●各国の「強行規定」の尊重が大事


「労働争議になった場合、(1)日本で裁判を行うケースと(2)海外で裁判を行うケース、どちらを想定しているのかで区別する必要があります」



このように山田弁護士は切り出した。



「まず、(1)日本の裁判所で裁判を行うことを前提としているケースを考えてみましょう。



日本の法律では、労働契約を締結する際、どの国の法を適用すべきか、契約当事者の選択が認められています(法の適用に関する通則法7条)。ですから、基本的には当事者間での話し合いで、どの国の法を適用した労働契約も、結ぶことができます。ファーストリテイリングも海外人事で、日本の法を適用すること自体は差し支えありません」



ヨーロッパで働いていても、日本の法律を適用した雇用関係が成り立つということか。



「労働者と会社側で合意があった場合は、そういうことになりますね。それでも、各国には、どんな契約でも絶対に守らなければならない強行規定というものがあります。



仮に、労働者Aさんが働くB国に『労働者は、2週間以上のバカンスを取らなければならない』という強行規定があったとしましょう。Aさんがこの強行規定を適用してほしいという旨の意思を会社側に示したときには、その強行規定が適用されます(同法12条)」



では、(2)海外で裁判を行うケースはどうなるだろう。



「その外国の国際私法によることとなりますので、当然、その国の法が適用されることとなります。



ですから、(1)のケースでも、(2)のケースでも、ファーストリテイリングのようなグローバルな人事制度を作る場合は、各国の強行規定を踏まえる必要がありますね。強行規定と矛盾しない制度設計が、一番求められることだと思います」



山田弁護士はこのように話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/


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