「元夫よ、なぜローンを支払わない!」連帯保証人の元嫁の母に返済義務は?

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2015年11月25日 09:41  弁護士ドットコム

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(弁護士ドットコムの法律相談コーナー「みんなの法律相談」に寄せられた相談をもとに弁護士ドットコムライフ編集部が作成しました)


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「泣いて頼まれたから」、「自分がお金を支払うことにはならないと言われたから」――。そんな風に懇願されて、うっかり「保証人」になってしまった人からの相談は少なくありません。今回紹介するのは、別れた夫の車の購入する際に、母を連帯保証人にしてしまったという女性からの相談です。


 

別れた夫がお金を払わない場合、母親は代わりに払う必要があるのでしょうか。増田勝洋弁護士に聞きました。



Q. 連帯保証人になった母は、元夫の車のローンを払わなければいけない?


別れた夫が婚姻中に車を購入したのですが、その際、私の母が連帯保証人になりました。その後、私達は離婚しました。


その後、夫が自己破産をしたようで、車のローンの支払いの請求が母のもとに来ています。ローンの残りは100万円ほどです。正直、自己破産した元夫より、私の母の方が生活は苦しいです。


夫は、再就職をして、2LDKのマンションに住んだり、別の車を買ったりしています。それなのに私の母が元夫のローンを支払うことに納得できません。


母は車のローンを支払わなければならないのでしょうか。


A.  「支払い義務は免れません。ただし、元夫に求償することができます」


相談者のお母さんの、連帯保証人になっているということですが、連帯保証は単なる保証と比べて、大きく2つの点で異なります。


単なる保証の場合、「催告の抗弁権」といって、主債務者(今回のケースでは元夫)に請求してからでないと保証人は「払いません」といえます。


また、主債務者に請求した後でも、「主債務者はこんな財産を持っているから、先に主債務者の財産から執行してください」といえます。これを「検索の抗弁権」といいます。


連帯保証の場合にはこうした主張をすることができません。まさに自分がお金を借りた、あるいは、車を買ったのと同じ立場になってしまいます。


今回のケースでも、残念ながら、相談者のお母さんとローン会社との関係では、連帯保証することに同意して契約書に署名及び押印した以上、支払義務を逃れることはできないと言わざるを得ません。


お母さんがローンの残りを元夫の代わりに支払った場合、当然ですが、その分を元夫に請求することができます。これを求償といいます。


ただし、元夫が任意に支払うかどうかはまた問題となり、支払わなければ訴えを起こして判決を得たうえで給料を差し押さえるなど元夫の財産に対し強制執行をしなければならなくなります。


元夫のもとに前の車がまだあるのであれば、これをローン会社に引き取ってもらって売却の上ローン残金から差し引いてもらう、あるいは、自分のものとして元夫から譲受け、こちらで処分して代金を回収するなどの方法はあります。


しかし、いずれにせよ、回収はかなり困難ですので、連帯保証人になる場合にはやはりそれなりの覚悟が必要でしょう。




【取材協力弁護士】
増田 勝洋(ますだ・かつひろ)弁護士
大阪弁護士会、司法委員会、司法修習委員会委員
著書:『事例にみる遺言の効力』(共著、執筆担当)
法律事務所の携帯電話向けサイトURL:http://masuda-law.plimo.jp
事務所名:増田法律事務所
事務所URL:http://www.masuda-law.net/


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