新しい機構の製品が登場し、それが爆発的に普及すると、それ以前の形式の製品は捨てられてしまうのか?
必ずしもそうなるとは言えない。むしろ旧型製品の使い勝手が再認識され、失われていたシェアがV字回復する場合もある。携帯電話がまさにそれだ。
スティーブ・ジョブズがiPhoneを開発してから、この世はまさに“スマホ時代”と呼ぶに相応しい状況となった。ところが日本では、今現在もフィーチャーフォンの人気が根強い。性能過多になりやすい、誤操作しがちといったような問題が判明してから「やっぱりガラケーがいい」という声も聞かれるようになったのだ。
それと同じことが、掃除機にも起きつつある。
サイクロン式VS紙パック式
サイクロン方式という掃除機の機構は、それ自体は第二次世界大戦前から存在する。
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だが長らく忘れ去られていたサイクロン式掃除機を改良し、再び世に送り出したのがジェームズ・ダイソンという企業家だ。
もっとも、ダイソン社の見解では「サイクロン式掃除機は我が社の発明」ということになってはいるが。
サイクロン式掃除機を発売したダイソン社は、宣伝広告に惜しみない資金を投じた。
だがそれは見方を変えれば、従来の紙パック式掃除機に対する“ブラックプロパガンダ”でもあった。
あたかも紙パック式は時代遅れの代物のように、そしてサイクロン式はすべてにおいて紙パック式を凌駕しているように宣伝した。
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しかし現状、サイクロン式は紙パック式を市場から駆逐できてはいない。それどころか日本の家電メーカーは、今も紙パック式の製品開発に力を入れている。
それはすなわち、紙パック式への大きな需要が健在ということだ。
紙パック式の利点
ダイソンをはじめとした、サイクロン式掃除機を製造するメーカーは、「紙パックは交換の手間と費用がかかる」と語っていた。
それは本当だろうか?
掃除機の紙パックの値段はいろいろだが、安いものでは1枚あたり100円といった程度の製品もある。Amazonで探してみたら、何と10枚入りで268円というものもあった。
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10枚もあれば、こまめに取り替えたとしても1年以上はもつ。
1年で数百円の出費を、負担と考えるかどうかは人によるかもしれないが、少なくとも筆者はそのくらいならあまり気にならない。
それに紙パック式のメカニズムは非常に単純だ。外蓋を開けて新しいパックを差し込めばいい。フィルターとダストボックスの役割はすべてパックが行っているから、基本はメンテナンスフリーだ。
一方でサイクロン式は、定期的な製品の清掃が必要になってくる。エアコンの室内機のように、フィルターやその周辺部分には必ず埃が溜まる。それをユーザーの手で分解して綺麗にしなければならない。
中には「この部分は専用のブラシで清掃してください」という製品もあるから、そういう意味でサイクロン式は面倒くさいと感じているユーザーがいるのも事実だ。
一つ言えるのは、サイクロン式は紙パック式を完全に凌駕してはいないということだ。
難攻不落のアドバンテージ
紙パック式掃除機の製造で存在感を発揮しているメーカーは、やはりパナソニックである。
このメーカーはサイクロン式の製品も投入しているが、どうやら紙パック式に対して何かしらの愛着というか、どことないこだわりを持っているようにも思える。
現にパナソニックは先ごろ、業界初の紙パック式ふとん掃除機を市場に投入した。
室内掃除機よりも遥かに小型のふとん掃除機は、そのほとんどが固定のダストボックス式である。
そこを敢えて紙パック式にした理由は、パナソニックのプレスリリースによると「ゴミを捨てる際に埃やハウスダストをほとんど出さないから」だそうだ。
この点はもちろん、室内掃除機にも言えることだ。
極力手を汚さない清潔さと構造の簡単さが、紙パック式のアドバンテージとして存在し、それは今後しばらく覆されることはないだろう。
【参考・画像】
※ 当社独自の「ハウスダスト発見センサー」と業界初「紙パック式」を採用 ふとん掃除機 MC-DF500G を発売 – パナソニック
※ KPG_Payless / Shutterstock