プラセボとは偽薬(ニセの薬)のこと
新薬の効き目を調べるときは、「薬を飲んだ患者」と「飲んでない患者」とで比較するのでなく、「本物の薬」と「偽薬」との間で比較します。偽薬、つまりニセモノの薬は、ブドウ糖など無益無害の成分で出来ていますが※1、見た目は本物の薬と全く同じに作ってあるため患者も医師も区別できません。これは、検査数値が公平に扱われやすくするためです。薬としての承認を得るための「治験」では、この2重盲検・比較対照試験という手法が一般的に採られます。
ここで面白いのは、偽薬でもわずかながら症状が改善することです。薬と思って飲むだけで私達の身体は反応し、実際に病気が良くなることがあるのです。これを「プラセボ効果」といいます。さらに面白いことに「効かないはずの薬」にも「効き方の違い」があります。たとえば変形性膝関節症に関する149の研究を検証したところ、注射偽薬は経口偽薬より「効く」と判明※2しました。確かに、注射を打ってもらう方が、効き目が強そうなイメージ、ありますよね。
ところで偽薬は、医療現場で仕方なく使われることもあります。精神疾患や認知症で薬物依存症状がある患者さんに対して、過剰投与になってしまうよりはマシだと、偽薬を代わりに飲んで安心してもらうケースです。薬が足りないと患者さんが勘違いをして介護者に乱暴を働く場合など、どうしても必要な場合に限定されます。偽薬はあくまでニセモノなので、人と人との信頼関係を崩してしまいますから、ごく一時的な措置にとどめるべきだとされます。
※1 最近では倫理的問題に配慮して、全く薬効がない偽薬は使用せず、類似薬との間で比較することが増えている
※2 Bannuru RR, et, al. Ann Intern Med. 2015 Sep.
人によってはプラセボ効果よりも強い、「見られる」効果
「プラセボ効果」以外にもう1つ有名な「病は気から」現象があります。それは「ホーソン効果」と呼ばれ、自意識が強くなることで投薬効果があがるケースです。
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周囲の医療者や家族の期待に応えたい、あるいは良く見られたい、という気持ちが働くと、実際に症状データが改善することがあるのです。この延長で、“褒められて伸びる子”“叱られた方が伸びる子”もきっといることでしょう。
「気の持ちよう」がそんなに治療効果を左右するのであれば、積極的にそれを利用しない手はありません。もちろん私たちの身体が持つメカニズムや健康によい生活習慣と、医学で実証された医療行為に加えて、の話ですが。具体的には、自分とコミュニケーションの相性が良い医師・医療機関を選ぶことです。極端な話、美人やイケメンがいる医療機関を選ぶのも1つの手かもしれませんね。(QLife編集部)
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