シニア世代の“重症事故発生率”は約6倍にも
順天堂大学 医学部総合診療科教授の内藤俊夫先生(右)と ジェイアイ傷害火災保険株式会社の加藤修さんここ数年、団塊の世代の大量退職に伴い、シニア世代の多くが趣味に打ち込んだりや旅行に出かけたり、セカンドライフを満喫しています。なかでも多いのが海外旅行。60歳以上の海外旅行者は2007年に302.3万人と、はじめて300万人を超え、2013年には331.2万人と増加傾向にあります。しかし、待ちに待った海外旅行で思わぬ病気やケガ、事故や事件に巻き込まれ、楽しい思い出が一瞬で台無しになってしまうことも。
シニア向け海外旅行保険を販売するジェイアイ傷害火災保険株式会社の加藤修さんは、「海外でケガや病気になった場合、高額の医療費を請求されるリスクがあります」と、MSD株式会社主催のメディアセミナーで語りました。これまでに保険金が支払われたケースの中には、肺塞栓症・肺炎・肺結核を患い、治療費や帰国用のチャーター機の代金で1億円近い支払金が必要になったケースもあるとのこと。
また、加藤さんによると海外旅行における重症事故の5割以上は65歳以上のシニア世代によるもので、その発生率は64歳以下の約6倍高いのです。海外旅行中は、長距離移動による疲れや無理がたたって、感染症やケガをするリスクが高まることが背景にあると考えられます。
ワクチンなど事前の対策で、病気のリスクは回避できる!
こうしたシニア世代に多い病気のリスク、回避できるものは極力旅行前に対処したいもの。そのひとつが肺炎です。「肺炎は日本人の死亡原因の第3位です。肺炎で亡くなる方の96.5%が65歳以上のシニア世代です」と語るのは、順天堂大学 医学部総合診療科教授の内藤俊夫先生。肺炎の病原菌としてもっとも多いのは、「肺炎球菌」です。肺炎の原因のおよそ3割を占めるこの菌は、普段から鼻やのどの粘膜にもいるありふれた細菌ですが、老化による免疫力の低下やインフルエンザなど他の感染症や病気にかかった時、突如として牙をむくのです。
この肺炎球菌の感染は、ワクチンで予防することができます。しかし、海外から『ワクチン後進国』と揶揄される日本。内藤先生の研究によると、全国での平均接種率は20.9%にとどまるといいます。これはイギリスの68.9%、アメリカの59.7%と比べると、明らかに低い値です。こうした背景をふまえ、昨年10月からは65歳以上の高齢者では、肺炎球菌の予防接種が定期接種化されました。内藤先生は「今までにワクチンを打ったことがあるかないか覚えていない方は、念のため打つように勧めています」と語り、今後接種率がより高くなるよう期待を寄せました。
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65歳以上の日本人の人口は2015年9月の時点で3384万人。総人口に占める割合は26.7%まで高まっており、海外旅行を楽しむ高齢者の数も、2040年代半ばまでは増加することが予想されています(国立社会保障・人口問題研究所データより)。待ちに待った海外旅行。自分のためにも、家で無事の帰りを待つご家族のためにも事前の準備は怠らず、楽しい思い出を作ってきてくださいね。(QLife編集部)
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