“FPS”というジャンルのゲームをご存知だろうか。
これは一人称視点のシューティングゲームを指す単語で、今現在世界的に急成長を遂げているジャンルでもある。
この世界には様々な種類のコンピューターゲームが存在するが、インターネットとの親和性に関してはFPSの右に出るものはない。
何しろリアルタイムで、世界中のプレイヤーと同じフィールドで戦うことができるのだ。これほど人の心を興奮させる要素は、他にないのではないか。
そしてこのFPS、実は新興国の経済成長の度合いを示す物差しでもあるのだ。
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FPSは「生活の指標」
先日、『カウンターストライクオンライン』というタイトルのFPSの国際大会が開催された。
場所はインドネシアの首都ジャカルタである。
この国でオンラインFPSの国際大会が開かれたということは、非常に大きな意味合いを含んでいる。というのもインドネシアは“インターネット速度が遅い国”として長らく知られていたからだ。
普段、インターネットとあまり関わりのない人にはピンとこないかもしれないが、経済成長が見込まれている新興国においてネット速度の充実は政治課題である。
例えば、日本の高度経済成長期は1960年代にあたるが、その頃の“豊かになっていく生活の指標”は家電製品だった。テレビ・洗濯機・冷蔵庫のいわゆる“三種の神器”だ。
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だが、2010年代に経済成長を遂げている国の場合は、家電製品よりも先にインターネットがある。ミドルクラス以下の人々は、冷蔵庫よりもネット通信の費用に可処分所得を投じる。
そのような環境で生きる市民にとって、“豊かになっていく生活の指標”はネット環境の充実に他ならないのだ。
誰しもがゲームを楽しむ時代に
オンラインFPSは、当然ながらある一定以上の回線速度がなければ満足に作動しない。何しろ、プレイヤーの一挙手一投足をリアルタイムで共有させなければならないのだ。
数年前までは、インドネシアでそうしたゲームをプレイすることは困難だった。理由は先述の通りである。
オンラインゲームどころか、通常のブラウジングすらも、1クリックごとに待ちに徹する必要があった。
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だが、そんな環境は、少しづつだが確実に変わっていった。今やごく普通の小学生ですらもキーボードの前に座り、ゲームに興じている。
インドネシアのインターネットカフェにいけば、大抵の店のパソコンにFPSが用意されている。
子どもたちは小遣い銭で、許される限りの時間プレイし続ける。ほとんどの場合は数人の友だちと一緒に1台のパソコンを囲む。
そうすれば料金は1人分で済むからだ。それに文句を言う店員はいない。
実況動画も続々配信
YouTubeなどの動画サイトで、自らのゲームプレイを実況する人たちがいる。人気の実況者はたった1日で数万という再生回数を稼いでしまうから、その影響力は非常に大きい。
インドネシアでも、そうしたことがちょっとしたブームになっている。
最近では『Phantomers』という作品がリリースされた。この作品の実況解説動画があるので、ここでご紹介しよう。
この国ではオンラインゲームのプレイヤーが増加するに伴い、こうしたユーチューバーも急増した。
もともと国民平均年齢が若い国だから、文明の利器を素早く上手に取り込み自分のものにしてしまう。
インドネシアは、やはり有望な“巨大市場”である。だが同時に、この国の経済成長は、日本のそれとはまるで違う形だということを忘れてはいけない。
インドネシアに出向してくる日系企業の社員の中には、「60年代の我が国と同様の市場開拓をすれば必ず成功する」と信じて疑わない人もいる。
だが、この記事をここまで読んでくださった読者なら、その考えが間違いだというのはお分かりだろう。
今や家電製品(特に白物)のライバルとして、FPSを始めとしたオンラインコンテンツの存在があるのだ。
それを念頭に置いた市場開拓が、これからは強く求められる。
2010年代はそのような時代だ。
【参考・動画】
※ Phantomers Online Indonesia – GAME FPS BARU INDONESIA ! – YouTube
【画像】
※ guteksk7 / Shutterstock