【インドネシア市民と日本観光・前編】四季への憧れを胸に

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2015年11月28日 18:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

2011年は6万2,000人だったのに対し、2014年は15万9,000人。この数字は何を指しているかお分かりだろうか?

日本を訪れたインドネシア人観光客の数である。

2011年という年は、日本人にとってまさに地獄のような時期だった。東日本大震災が、あらゆる方面に巨大な影を落としたからだ。

「福島第一原発が爆発し、日本は放射能に汚染された。もはや日本を訪れるのは危険だ」

これが真実か否か、という問題ではない。風評が我が国の観光産業を大きく傷つけたということだ。

だが幸いなことに、2010年代はASEAN地域の経済成長が目覚ましい頃合いでもあった。特に、2億5,000万人の人口を有するインドネシアでは、もともとが親日的な国というのもあり、日本旅行がトレンドになっている。

風評被害のダメージは、インドネシア人観光客のおかげで回復しつつあるのだ。

大盛況のトラベルフェア

11月20日から3日間に渡り、ジャカルタ市内のショッピングモールで“ジャパン・トラベルフェア”が開催された。

これは言わば、旅行商品の即売会で、観光関連各社の臨時ブースには大勢の来客が押し寄せた。インドネシアの消費者は、これと思ったものを即断で購入する。このイベントでも様々なツアープランや航空券が飛ぶように売れた。

日本には四季があり、夏はインドネシアと変わらず高温多湿だが、冬には雪が降る。秋には紅葉というものが見られ、そして春に桜が咲く。日本人にとっては当たり前の自然現象だが、インドネシア人にとっては夢にまで見た異国の幻想的な風景なのだ。

そして、経済先進国日本を象徴するインフラ整備も観光の見どころとなっている。JRが外国人向けに発行する特別乗車チケット“ジャパン・レールパス”も、このイベントでは大変な注目を集めた。

何だかんだで日本の新幹線は、現地市民の憧れの的だ。

澤田オフィス提供

インドネシア人にとっての海外旅行は、数年前まで“アッパークラスにしかできない贅沢”だった。いや、今でも気軽にできるものではない。だがそのハードルは確実に下がっている。

ミドルクラスの市民が、日本旅行を本気で考える時代となったのだ。

食と旅行

インドネシア市民は和食が大好きだ。寿司や刺し身だけではなく、ラーメンやうどん、カレーライス、牛丼、たこ焼きまでも食べるようになった。

澤田オフィス提供

和食に憧れ日本を訪れるインドネシア市民は、今までにも多かった。よく考えたら日本は、食の禁忌が少ない国だ。

大抵の肉は食べるし海魚もある。米文化圏だが小麦やそばの加工品も作る。そして日本列島は亜寒帯から亜熱帯にかけて伸びる地域で、各地の物産の特色が非常に豊かでもある。

一つ例を挙げれば、インドネシアでは日本の果物市場が時折大きなニュースとなる。宮崎県産のマンゴーが2個1セットで20万円を超える値をつけたという話題は、インドネシア市民の度肝を抜いてしまうのだ。

そこまでいかずとも、ジャカルタのスーパーマーケットでは1房数千円のぶどうなどが売られるようになった。

インドネシア人の日本旅行は、そうした事柄の延長線上にあるのだ。

雪に憧れる市民

ジャパン・トラベルフェアと同時期に、日本からジャカルタへ総勢1,000人もの大型交流団が派遣された。

この交流団の主目的は、観光客の誘致である。だから観光関連企業の経営者がこの交流団には多く参加した。だがそれ以上に強い存在感を発揮していたのは、地方自治体の観光局職員だ。

11月、日本ではこれから冬に向かう。雪に強い憧れを持つインドネシア市民は、旅行時期を2月頃にする場合が多い。HISが配布していたパンフレットを見ても、スキーツアーのパッケージ企画が前面に押し出されている。行き先は北海道、長野、そして福島。

交流団派遣の時期が11月下旬に設定された理由は、筆者には知り得ない。だがもしかしたら、こうしたことも要因にあるのでは……と何となく考えている。いずれにせよ、スキーシーズンを間近に控えた頃合いのトラベルフェア開催は正しい選択だった。

こうしたことは、地方自治体にとっては歓迎すべき現象である。「我が町にはスキーリゾートがある」という点を活かし、海外で大々的なPR活動を行なうことができる。

特に日本のスキーリゾートは、バブル崩壊後の不況時代に被ったダメージが未だに残っている。今はそれを修復するチャンスが訪れているのだ。

後編につづく。

【画像】

※ Norikazu / Shuttertstock

このニュースに関するつぶやき

  • 十月のツーリングで十和田湖の宿の外人さんたちの中にインドネシアのおばさんがいたなぁ。
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