【FPSを知る・後編】ゲームで戦争を追体験

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2015年11月29日 21:00  FUTURUS

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FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

※ 前編はこちら 【FPSを知る・前編】オンラインゲームと経済成長 http://nge.jp/2015/11/27/post-124718

前回、筆者は“オンラインFPSと新興国の関係”についての記事を書いた。

インターネットインフラの整備により、ゲームの中でもよりネット親和性の強いFPSが人気を集め、結果的にそれが経済成長の指標となる。市民の可処分所得は、結果的に家電製品の購入ではなくオンラインゲームのための通信費に使われるという流れだ。

それがすなわち、FPSが新興国に与える影響である。

一方で、経済先進国にもFPSは大きく作用している。それは「過去の歴史を思い返す」という、重大な効果をもたらしているのだ。

塹壕の中のFPS

史実を取り扱ったFPSというものが存在する。平たく言えば、過去の戦争を舞台にしたものだ。

たとえば、第二次世界大戦もののFPSというのはインターネットが端々まで普及する以前から存在する。だがそれは、ドイツや日本を敵役にした、すなわち連合国軍視点の作品が大半である。枢軸国軍側の視点の作品を制作するには、やはりデリケートな問題があるのだ。

そして、第二次大戦よりひとつ前の戦争、つまり第一次世界大戦に関する取り扱いも、ヨーロッパでは未だに根深い問題だ。第一次大戦とは早い話が“同盟国の同盟国同士の戦争”で、にもかかわらず膨大な死者を出したから、今も市民の間では黒歴史と認識されている。

だが、そんな第一次大戦をテーマにしたFPSがある。タイトルは『Verdun』。その名の通り、1916年の西部戦線ヴェルダン攻防戦を舞台にした作品だ。


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※ Verdun Trailer – YouTube

プレイヤーはドイツ軍かフランス軍いずれかの陣営に属し、ラウンドごとに攻守を繰り返す。ここで言う“攻守”とは、要するに塹壕の奪い合いだ。狭く汚い塹壕がリアルに描写されている。

しかも、ほとんどの歩兵は単射式のライフル銃しか持っていない。一発撃つごとにボルトを引く、というものだ。遠くにいる敵兵に銃弾を当てるのはなかなか難しいが、もし当てたら大抵の場合それが致命傷になる。もちろん、こちらが被弾しても同じだ。だから運要素も強い。

敵の塹壕にたどり着くまでに大半の戦友が屍と化すが、そこはさらなる兵力を投入して力押しするというリアルさも兼ね備えている。非情な部分まで凝りに凝った作品だ。

先込め単発銃の世界

第一次大戦の歩兵銃は単射式ではあるが、それでもボルトと引き金の動作を繰り返せば連発が可能だ。だが、それ以前の銃は、当然ながら一発撃つたびに銃弾と火薬をいちいち装填しなくてはいけなかった。

そんな時代の戦争をゲームにしても、そもそも成立しないのでは……、と思いきや、何と19世紀中葉のアメリカ南北戦争をFPSにしようという取り組みがあるのだ。

それが以下の動画、ゲームタイトルは『War of Rights』である。


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※ War of Rights – Kickstarter – YouTube

南北戦争の頃の銃は、弾と火薬を銃口から込めるタイプのものだ。火縄銃に毛の生えたような代物である。

だから隊列を組み、指揮官の号令の下で一斉射撃を行なう。まずはそれを両軍繰り返し、兵力減少の頃合いを見て突撃をかける。こちらの銃剣が届くのが先か、敵軍の弾込めが済んで撃たれるのが先か、19世紀の戦争独特のスリルが忠実に再現されている。

この作品のリリースはまだ行われていないが、それに向けた投資の募集はすこぶる順調だという。その投資はPayPalで受け付けているので、興味のある方はぜひ振り込んでみよう。

バンザイ突撃

先ほど、第二次大戦を題材にしたゲームはデリケートな問題があると書いたが、だからと言って枢軸国視点で書いた作品が一切ないというわけではない。

『Rising Storm』というタイトルは、太平洋戦争を題材にしている。プレイヤーは日米両陣営を選択可能だ。しかもそれぞれに特徴があり、たとえば火炎放射器は米軍側でしか操作できないが、日本軍も八九式擲弾筒という独自の小型火器を装備している。

そして軍刀を手に「天皇陛下万歳!」と叫びながら突撃することも可能だ。


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※ Rising Storm Launch Trailer – YouTube

バンザイアタックの際に発する日本兵の声が、かなり生々しい。だがそれは、制作元の努力の賜である。

ちなみに『Rising Storm』は、現在続編が制作中で、次はベトナム戦争が舞台となる。


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※ Rising Storm 2: Vietnam Announcement Trailer – E3 2015 PC Gamer Press Conference – YouTube

当然、次作も両陣営選択可能の作品になる。ベトコンを操作して米兵を撃ちまくるということもできるわけで、退役軍人省から横槍を入れられないかと心配になってしまう。

以上、過去の戦争を取り扱ったFPSをいくつかご紹介した。どのタイトルも、当時の戦場の様子をよく伝えている。

それが故に心臓の弱い方、ショッキングな映像が苦手な方にはオススメできないが、戦争の歴史を勉強したいという方にはまさにうってつけだろう。

【参考・画像】

※ Verdun

※ War of Rights

※ Rising Storm

※ Keith Tarrier / Shutterstock

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