プロ野球選手に気付かされる、人生二毛作の時代

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2015年11月29日 22:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

「あなたは、その会社で一生働き続けられますか? その会社は、あなたを一生雇い続けてくれますか?」

デフレと共に打ち寄せてきたグローバル化の波は、日本の終身雇用制度を崩壊させてきた。

しかし、皮肉なことに日本人の平均寿命は延び続けている。

また一方では、年金支給開始年齢はどんどん上げられている。

冒頭の問いかけは、もしかしたら考えたくもないことかもしれない。しかし、一度は向き合わねばならない問題だろう。

そんなことを考えさせてくれたのは、プロ野球選手たちだった。

プロ野球選手の再就職事情

プロ野球選手達が引退後に、引き続き野球に関わった仕事を続けられる割合は僅か1割程度だという。

我々は、テレビに映り続けている元野球選手ばかりを見ているため、なんとなくプロ野球選手が引退したら各種コーチや解説者、あるいはタレントとして第二の仕事を続けているという印象を持ってしまうが、それはごく僅かなのだ。

一部は飲食店経営を始めて、“元(チーム名)●●選手の店”として、現役時代に獲得した知名度を利用することもあるだろう。

しかし、殆どの選手は家業を継いだりセールスマンになるようで、そのような再就職も年齢的に決して楽ではないようだ。

彼らが直面する第二の仕事探しは、これからは一般の会社員にとっても他人ごとではなさそうだ。

この様な事態に既に直面している人も、これから直面することを予測し不安がある人も、以下に紹介する野球選手たちから勇気をもらえないだろうか。

■ケース1:元埼玉西武ライオンズ・森本稀哲氏

2015年11月23日、球界随一のムードメーカーとして“ひちょり”の愛称でファンから親しまれてきた森本稀哲(もりもと・ひちょり)氏34歳は、ファンの感謝イベントで、引退後の道として一般企業に入社したことを発表してファンを驚かせた。

野球好きなら誰もが知るひょうきん者だったため、第二の人生として芸能活動が予想されていたからだ。北海道日本ハムファイターズ時代にはベストナインやゴールデングラブ賞といった表彰も受け、またファンからも愛される選手だった彼ならば、コーチという道もあっただろう。

しかし、本人はこれまでの人生で野球しかしてこなかったため、いろいろ勉強することがあるとして、一般企業への入社を決めたという。

しかも彼には、さらにその先の展望があるらしい。業種は決めていないが、いずれ起業も考えているというのだ。

そのためにも“野球人”でなく“企業人”としての経験を積もうとしている。

■ケース2:元ソフトバンクホークス・江尻慎太郎氏

2014年10月31日に球団から戦力外通告を受け、翌月22日に引退した江尻慎太郎氏38歳は、2015年2月4日に、プロとは全く畑違いのIT関連企業に入社し、クラウドマーケティング推進室に配属された。

自ら会社員となった奮闘記をブログで紹介し、新橋のサラリーマンになったと語っている。

2ヶ月もすると新橋の人混みや満員の通勤電車にも慣れたと語りながら、変化することの大切さを訴えている。

氏のブログを見ると、全く未知の業界に飛び込んだにも関わらず、非常に元気で前向きな言葉が綴られている。

このあたりのポジティブさは、さすがスポーツ選手だと感心させられるし、元気をもらえるだろう。

■ケース3:元千葉ロッテマリーンズ・佐藤隆彦氏

2014年10月5日に戦力外通告を受け引退した、“G.G.佐藤”こと佐藤隆彦氏36歳は、同年中に父親が社長を務める測量会社に入社した。所属部門は開発営業部で、肩書きはマネージャーだ。

プロ時代は、埼玉西武ライオンズで右打ちのスラッガーとして活躍、イタリアプロ野球を経て千葉ロッテマリーンズへと渡った。2008年の北京五輪では代表選出されるなど、球界を代表する選手の一人だった。

そんな彼は現在“社会人”として慣れないデスクワークに悪戦苦闘しながらも、測量士補の資格を取得すべく勉強しているという。

しかし、彼もまた、スポーツで培った前向きさを見せており、大変勇気づけられる。

野球は存分にやらせてもらったと語る潔さが気持ち良い。(彼の言葉を借りるなら「キモティー!」だが、あえて言わないでおく。)

彼は、野球選手の引退後の実態を知っている。社会人クラブチームのロキテクノベースボールクラブでは社会人野球の厳しさも、その身をもって体験した。

そのような道を歩んできた“G.G.佐藤”、今後は野球選手たちのセカンドキャリアをサポートする側にまわりたいと語っている。

人生二毛作の時代

既に文字数が嵩張ってしまい恐縮だが、最後に有名ブロガーであり作家でもあるちきりん氏の著書『未来の働き方を考えよう 人生はニ回、生きられる』(文藝春秋)の中から、考えさせられる文を引用して紹介したい。

<寿命が100歳となる時代には、働き方も大きく変わります。

そんな時代になれば、一生のうちにひとつの職業しか経験しないなどという人は、珍しくなるでしょう。

80歳まで働かねばならない時代になれば、働く期間は57年(23歳から80歳)にも及びます。なんと半世紀以上も働くことになるのです。そんなに長い期間、ひとつの職業に就いていると想定するのは、ほんとうに現実的でしょうか?>

実は私自身が、長ーい会社員生活から畑違いのフリーライターという新境地に飛び込んだ身であるので、上記の野球選手たちの第二の人生への意気込みや、ちきりん氏の著書には共感できる部分が多い。

野球に限らず、プロスポーツ選手を目指す若者にも、企業への就職という選択をした若者や既に会社員として働いている人たちにも、「人生二毛作の時代が到来しているのかもしれない」ということを、考えてみる機会が必要かもしれない。

【参考・画像】

※ 「元プロ野球選手」の再就職事情。コーチや解説者になれるのはわずか1割 – 日刊SPA!

※ 【西武】ひちょり“第二の人生”は起業 一般企業入社で「勉強したい」 – スポーツ報知

※ 「皆さん、153km/h投げれます?」元ソフトバンクホークス江尻慎太郎のマーケティング奮闘記第一弾! – Marketing Bank (マーケティングバンク)

※ 再出発、G.G.佐藤の挑戦「野球人のセカンドキャリアを創造したい」 – 日刊SPA!

※ Stokkete / Shutterstock

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