筑波大の研究によるとサッカー熟練者は状況判断が速い!?

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2015年12月01日 06:10  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

ある程度スポーツの経験があるひとなら実感していると思うが、熟練してくると(その種目のプレー中における)状況判断は速くなる。まぁ、常識といっていいだろう。

しかし、その種目とは関係ない場面での状況判断も速くなるものだろうか?

筑波大学の研究によれば、サッカー熟練者は、一般学生と比較して、状況を素早く見きわめる処理が速い上に、反応を出力するまでの処理も速いことが確認できたという。

脳波も測定する

この研究は、国立大学法人筑波大学体育系 浅井武教授、同大学院人間総合科学研究科 松竹貴大氏らの研究グループによるものだ。

まず、この研究には脳波を使った新しい手法が採られている。というのは、これまでスポーツ選手の情報処理能力の評価には、刺激を受けてから反応が起きるまでの時間である『反応時間(Reaction Time:RT)』がおもに用いられていたという。

しかし、このRTはその経過時間のなかに筋活動も含んでいる。

そこで、この研究では、情報処理能力をより詳細に評価するために、事象関連電位(Event Related Potentials:ERP)の指標もあわせて分析したという。

事象関連電位(ERP)とは、「ある出来事(事象)を脳が処理する過程に関連して出現する電位」のことだという。これは脳波を測定して検出する。

そうすることで、反応実行を起こす前の、刺激評価に費やされた時間を調べることができるのだ。

サッカー熟練者とサッカー競技経験のない被験者

この手法を使って、同研究グループは全日本大学選手権で優勝経験のある、大学サッカー部レギュラー選手8名とサッカー競技経験のない大学院生8名の協力を得て、難易度の異なる2つの選択反応課題と、複雑な判断を伴う選択反応課題を実施した。

複雑な判断を伴う選択反応課題のほうは、画面 (1,366×768px)の4つのエリアからランダムに提示される赤円と青円に対して、あらかじめ決められたパターンの提示 にのみ反応するというものだという。

その結果、より複雑な状況判断課題においては熟練者のほうが非熟練者よりも“探求・知覚”、“刺激評価”までの段階で検出される成分が有意に速く、RTにおいても同様に熟練者が非熟練者よりも有意な短縮が認められたという。

つまり、サッカー熟練者のほうが状況を素早く見極める処理が速く、更に反応を出力するまでの処理も速いことを明らかになったというのだ。これらの研究結果は、サッカー選手は一般の人と比較して、複数の選択肢から瞬時に適切な判断を行う能力に長けていることを示している。

サッカー以外の分野ではどうなのかも知りたい

この研究では、サッカーの熟練者がサッカー以外の場面でも状況判断が速いことがわかったわけだ。

もっとも、被験者がサッカーの練習によって情報処理能力を習得したのか、情報処理能力が高いから全日本大学選手権で優勝できるチームのレギュラーにまでなれたのかの答えは、この研究からは出てこない。

スポーツと脳の関係は非常に興味深い。両者は密接に関連しているにもかかわらず、スポーツというのは身近な活動でありながら、脳というのはあまりにもまだ未知の部分が多いからだ。

この研究ひとつとっても、「ではほかのスポーツの熟練者の場合はどうなのか?」「サッカーでもポジションによる違いはあるのか?」「スポーツに限定せず、例えば将棋の熟練者の場合などはどうなのか?」など、知りたいことは山ほどある。

もっとも、スポーツと脳の関係がどんどん解明されていくと、スポーツの神秘的な側面がなくなっていってしまうのではないかと、少しだけ不安もあるが。

【参考・画像】

※ サッカーにおける状況判断の速さの秘密〜事象関連電位による判断速度比較〜 – 国立大学法人 筑波大学

※ Luis Louro / Shutterstock

※ barman / PIXTA

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