男女関係を破局させる「別れさせ工作」 どんなときに「公序良俗違反」になるのか?

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2015年12月02日 11:31  弁護士ドットコム

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探偵業者が依頼を受けて、男女関係を終わらせるように仕掛ける「別れさせ」をめぐる契約が、公序良俗に反して無効かどうかが争われた訴訟の控訴審判決が11月上旬、大阪地裁であった。佐藤哲治裁判長は「契約が公序良俗違反とはいえない」と判断。探偵業者が求めた報酬など約97万円の支払いを、依頼者の女性に命じる判決を下した。


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共同通信によると、依頼者の女性は2014年9月、好意を寄せる男性の交際相手と考えていた女性を調査対象とする契約を、大阪市内の探偵業者と結んだ。男性工作員が対象女性と連絡先を交換すれば90万円、別れさせた場合は45万円を報酬として支払う内容だったという。



探偵業者の男性は、対象女性に声をかけて、その数日後に偶然を装って再会を演出。食事をしたり、電話番号交換や無料通信アプリのLINEでデートを約束するなどしていた。依頼女性はその後、好意を寄せる男性と対象女性が交際していないことに気付いて、工作の中止を探偵業者に求めた。



佐藤裁判長は、今回の契約の内容について、(1)対象の女性らが独身だった(2)工作の過程で性的関係を持つなどの方法も予定していなかったと指摘。「実際に関係が終了するかは、対象者の意思次第で、業者が別れさせる目的を達成できる可能性が高いともいえない」として、公序良俗に違反しないと判断した。



今回の裁判のポイントはなんだろうか。どんなときに「別れさせ工作」は公序良俗に反するのか。男女問題にくわしい渡邊幹仁弁護士に聞いた。



●対象者が独身でなかった場合、公序良俗違反になった可能性がある


「今回の裁判では、『別れさせ工作』をするという契約が『公序良俗』に違反すると言えるかどうかが争点となりました。



本来どのような契約をするかは自由です。これを『契約自由の原則』といいます。しかし、違法な内容の契約など、どんなものでも常に、『契約自由の原則』として有効とするわけにはいきません。



民法でも、『公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする』とされています(民法90条)」



渡邊弁護士はこのように説明する。今回のケースは、なぜ公序良俗に違反しないとされたのだろうか。



「今回の判決では、対象者である女性らが独身だったということが理由の一つに挙げられています。



したがって、仮に、対象女性が独身でなかったとしたら、公序良俗違反と判断された可能性があると考えられます。



さらに、判決でもう一つの理由にあげられている『別れさせ工作』の手段として、肉体関係を持つことを予定していたとしたら、なおさらです」



●肉体関係を前提とした契約の場合、「公序良俗違反」の可能性が高い


探偵業者が対象女性と肉体関係を持つことが前提だったとしたら、結論が変わるということだろうか。



「たとえば仮に、対象女性が既婚者で、夫と別れさせようとする場合について考えてみましょう。



そもそも、夫婦間には貞操義務があります。これに違反して不貞行為をすれば、離婚原因となります(民法770条1項1号)。



対象女性とその夫は、婚姻により法的に保護されている夫婦関係を築いています。別れさせ工作は、この法的に保護された関係を積極的に破綻させようとするものです。



特に、その手段として肉体関係を持つ場合、貞操義務を侵害する違法な行為となるものです。そのような違法行為を前提とする契約は、公序良俗違反と判断される可能性が高いでしょう。



今回のケースのように、対象女性が既婚者でない場合、パートナーに対する貞操義務はありませんが、探偵業者が肉体関係まで持って別れさせるという手段となると、違法性が認められ、やはり公序良俗違反と判断される可能性があります」



このほかにポイントはあるだろうか。



「今回のケースからいえば、比較的穏当な手段を用いて、あくまで対象女性が、自分自身の自由な意思で正常な判断ができる状態で、男性工作員の誘いに乗ってこなければ、成功するものではなかったという点もポイントだと考えられます。



したがって、たとえば実際に渡していなかったとしても、モノやお金でことさら関心を引きつけるような手段を用いた場合、判断が変わる可能性も十分考えられます」



渡邊弁護士はこのように話していた。



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
渡邊 幹仁(わたなべ・みきひと)弁護士
新潟県弁護士会所属
離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件を数多く取り扱っている。
事務所名:新潟菜の花法律事務所
事務所URL:http://niigata-nanohana.com/index.html


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  • この女性、とんでもない。被害を受けていなくても、この男性は「50メートル以内に近づかないよう」申し立てをしたらいい。
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