通年性アレルギー性鼻炎の根本治療に期待　アレルゲン免疫療法に舌下錠タイプが登場

症状が一年中続く、通年性アレルギー性鼻炎

千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頚部腫瘍学 教授 岡本美孝先生

　アレルギー性鼻炎の患者数は増加を続けており、日本国民の約4割が罹患していると推測されています。アレルギー性鼻炎と聞くと、花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎を思いがちですが、症状が一年中続く、通年性のアレルギー性鼻炎の患者数も増えています。

　止まらないくしゃみと水のような鼻水、鼻づまりだけでなく、頭がぼんやりしたり、夜眠れなくなったりなど、QOL（生活の質）も著しく下げるアレルギー性鼻炎。こうした症状が一年中続くのは大変つらいものです。そんな通年性アレルギー性鼻炎の主な原因の1つが、「ダニ」です。主に室内に生息するヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニと、彼らが出す糞に含まれるたんぱく質が、アレルギーの原因となる原因物質（アレルゲン）です。

　アレルギー性鼻炎の治療においては、アレルゲンと接触しないようにすることが第一。ダニが原因となる通年性アレルギー性鼻炎では、掃除の徹底が推奨されていますが、現実的にはなかなか難しく、これまでは対症療法としての薬物療法が主流でした。しかし、服薬を中止すると症状が戻ってしまうことが課題となっていました。

室温保存可能、増量方法も簡単な、舌下錠タイプのアレルゲン免疫療法

　そこで最近、注目されているのが、アレルゲン免疫療法（減感作療法）です。アレルギーの原因となるアレルゲンを、少量から繰り返し服用し、体を慣らしていくことで、アレルギー性鼻炎の症状を和らげる治療法です。治療終了後も治療効果が持続するため、アレルギー性鼻炎の根本治療として期待されています。

　11月26日、新しく舌下錠タイプの免疫治療法薬「アシテア(R)」を発売した、塩野義製薬株式会社がプレスセミナーを開催。登壇した千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頚部腫瘍学教授の岡本美孝先生に、アレルゲン免疫療法について、お話をうかがってきました。

　岡本先生は、「アレルゲン免疫療法は、アレルギー性疾患の自然経過を改善させうる唯一の治療法であり、治療終了後も症状の改善効果が長く続くことが期待される治療法です。また、アレルゲン免疫療法の効果が、科学的にも裏付けられてきました」と語り、千葉大学医学部付属病院で行われた、アレルギー性鼻炎患者の長期経過に関する調査結果を紹介しました。

　同病院を17年前に受診したアレルギー性鼻炎患者について、現在の症状を調査したところ、以前より症状が改善していた人が、薬物療法を受けていた小児では25％だったのに対し、アレルゲン免疫療法を2年以上受けていた小児では77％でした。成人では、薬物療法を受けていた人は40％、アレルゲン免疫療法を2年以上受けていた人は81％が症状改善していました。

　「ただ、これまで行われてきた皮下注射によるダニアレルゲン免疫療法薬は、投与時に痛みを伴ううえ、複数回の通院が必要でした。さらに、アナフィラキシーショックなどの副作用も懸念されていました。しかし、今回発売した『アシテア』は、抗原エキスを舌下の粘膜を介して投与する舌下錠タイプなので、自宅での投与ができ、痛みもなく、重篤な副作用が激減しました。室温保存ができ、増量方法が簡単なのも特長です。期待される効果は、鼻や目の症状を抑える、アレルギーの治療薬が減る、QOLの改善などです」（岡本先生）

高い脱落率が課題。患者の理解がカギ

　「効果はどのくらい続くのか、寛解する割合はどのくらいか、副作用はどういったものがどの程度認められるのか、また、効果が確認できるバイオマーカー、あるいは本格的に治療を始める前に効果が予測できるものが解明されていけば、もっとアレルゲン免疫治療は普及しやすくなると思う」と、岡本先生はアレルゲン免疫療法に期待を寄せます。

　アレルゲン免疫療法は、効果が出るまでに時間がかかり、治療期間が長いため、脱落率が高いことが課題です。「そのため、医師は正確な診断後に、患者に十分にメリット・デメリットを説明して、治療を開始する必要があります。さらに、その後も治療経過を評価することが重要です。また、患者側にも治療内容についての十分な理解が必要です」と、岡本先生は話しました。

　一年中続く、くしゃみ、鼻水、鼻づまりはつらく、鬱陶しいもの。今回発売されたアシテアが、通年性アレルギー性鼻炎の根本治療となることが期待されます。（QLife編集部）

関連リンク

• QLife家庭の医学「アレルギー性鼻炎」
• 塩野義製薬株式会社「ダニによるアレルギー性鼻炎に関する情報サイト」

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