アナログ媒体重視する日本の通信事情に世界が注目、ファックスは不滅か?

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2015年12月04日 06:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

日本は“最先端テクノロジーの国”なのか?

確かに我が国は、世界に先駆けて二足歩行ロボットを開発し、本物と見間違うほどのコンピューターゲームを開発した。

だがその一方で、自分たちが日頃使うテクノロジーに関しては保守的な面もある。

一番顕著な例は、日本人は今でも紙になった文書を大事にする。ありとあらゆるクラウドサービスが提供された現代、我が国のビジネスマンは、それでもクラウド内のデータではなく紙に出力された情報を信用する。

それは果たして、「時代に取り残されている」ということだろうか?

クラウドよりも紙の上に

イギリスBBCが、そんな“もう一つの日本”についての記事を配信した。これが非常に興味深い内容になっているので、幾ばくか引用させていただこう。

<日本はロボットやハイテク機器に夢中な国、製造業の技術革新で最先端を走る国として知られる。だが一般のオフィスにおけるテクノロジーの現実は、このイメージから驚くほどかけ離れている。

(中略)

そこで日本の企業は、オートメーション化の波に抵抗するためにひたすら守りを固め、機械ではなく人手を極力使おうとしているように見える。ファックスにしても、届いた文書をいちいち取りに行く人が必要だ。(BBC 2015年11月6日付記事より引用)>

インターネットが世界の隅々まで普及し、誰しもがSNSやクラウドサービスを利用する中、日本企業はなぜか未だにアナログ媒体を重要視しているという内容だ。

そういう意味で日本が保守的な国だという指摘は、確かにその通りだと筆者は考えている。

例えば、日本には“ビジネス文書”という習慣がある。「すべてのやり取りを定型化された文書でやらなければ、先方を怒らせてしまう……」という発想が日本人の脳内にあるのだ。

だから、他社の重役に対して「例の書類はこのクラウドに保存されていますから、確認お願いします」とは言えない。その書類をプリントして丁寧なビジネス文書の挨拶状を添え、封筒に詰めなければならない。

「それが社会人に必要不可欠なマナーだ」という台詞を聞けば、シリコンバレーの住人は大笑いするだろう。

だが日本人は真顔で沈黙してしまう。それが我が国日本の特徴なのだ。

「印鑑の国」日本

筆者は商業ライターとして生計を立てている。これでも“澤田オフィス”という名の事業所を静岡市内に持っているが、同時に年の半分ほどは海外住まいだ。

だがそうであるにもかかわらず、日本国内の企業との様々なやり取りの中で、捺印書類を求められることがある。だから世界のどこにいようと印鑑は手放せないし、捺印書類だから紙に出力した状態で郵送しなければならない。

そう、日本は“印鑑の国”なのだ。それを忘れてはいけない。

そもそも印鑑を普及させたのは、戦国時代の大名と言われている。織田信長の愛用した「天下布武」とあしらわれた印鑑は有名だ。

これは大名があらゆる政策決定を打ち出すのに、効率性をもって対応しなければならないという事情があった。だが現代では、印鑑が効率性を削いでいるという側面がある。

しかし、どんなに愚痴を言ったとしても、日本社会では印鑑なしには生きていけない。

つまりBBCの記事に触発され「やり取りの全てをデジタル化しよう」と叫んだところで、印鑑の存在が真っ先に立ちはだかる。

ファックス付き複合機は死なず

だがそれらは、「日本が保守的な理由」のほんの一端に過ぎないとも筆者は感じている。

BBCは“未だファックスを使う日本人”に対して批判的なニュアンスで書いているが、物事には何でも“いい部分”と“悪い部分”が共存する。

まず、ファックスに関して言えば、あらゆる場面での融通が利く。手元にある資料をスキャナーに取り込んでデータ化したのち圧縮、という作業よりもそのままファックスで送ったほうが早いということは、誰しも否定できないだろう。そして、そのような場面が、ビジネスの中では案外多くある。

すなわち、「まだデータ化されてない画像を送るにはどうしたらいいのか」という問題だ。シリコンバレーでこうした問題はあまり起こらないかもしれないが、日本ではしばしば発生する。

そういうことがあるから、今も紙原稿の存在を前提にした通信機器が新発売されている。

現在筆者が注目しているのは、富士ゼロックスが開発したモノクロプリンター複合機『DocuPrint M260 z』である。

この製品は無線LAN搭載で、取り込んだ画像資料のデータを、モバイル端末に送信することができる。

もちろん複合機だから、通常のファックスとして使用することも可能だ。製品の大きさも、筆者のような個人事業主の身の丈に合うコンパクトサイズである。

『DocuPrint M260 z』は10月に発売されたものだが、こうした製品が今後も続々発売されるだろうと筆者は考えている。

日本人は紙の文書を捨てるつもりはないし、そのことをネガティブに捉える必要もないはずだ。

民法の体系が異なる国同士を比較して「あの国の事務処理は近代化されていない」と一様に主張するのは、いささかナンセンスにも感じる。

保守的なのには、何かしらの合理的な理由がある。

それを意識すれば、むしろ市場のニーズというものが掴めるのではないか。

【参考・画像】

ハイテク日本は実はローテク? まだファックスやカセットテープが – BBC

※ DocuPrint M260 z  – 富士ゼロックス

※ Dragon Images / Shutterstock

このニュースに関するつぶやき

  • 日本人の契約では、最後に押印をする前に、その内容を再考をすると言う重要なプロセスを経る。ITが発達しても、人の習慣は簡単に変えることは出来ない。
    • イイネ!15
    • コメント 2件

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