台所と風呂なし「趣味の家」を田舎に作る父ーー母は離婚すべき?【小町の法律相談】

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2015年12月04日 08:31  弁護士ドットコム

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(この質問は、「Yomiuri Online」の人気企画「発言小町」に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部が再構成したものです)


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「退職後の夫」という存在は、妻にとっては悩みの種となることが多いようです。何をするわけでもなく家にいる夫もストレスなら、突飛な「第二の人生」計画に家族が振り回されることもーー。そんな父をもった娘さんから、発言小町に「母は離婚すべきか否か」と投稿がありました。


トピ主の父親は、大企業を定年退職した後、別の会社で働いています。給料は大幅に下がり、夫婦2人とニートの息子との3人暮らしでは余裕もありません。ところが、父親はなぜか仕事を辞め、実家のある田舎へ引っ越し、家を建てる計画をたてています。


トピ主は「スーパーまで車で20〜30分、近くには田んぼしかない田舎に帰ってどうするの? という気持ちです。しかも仕事を辞めて」。また、父親への疑問が増しているのが「一人暮らしの祖母と同居するのではなく、同じ敷地に家を建てるのです。しかも完全に「父の趣味だけの家を」という点。


ほかにも、糖尿病という持病がありながら食事制限をしないところや、トピ主の母親が「家計状況を伝えたり今の家から離れたくないということを伝えているのですが、ほぼ独断で決めてしまいました」という点にも不信感を募らせています。


そこで、父親と離婚した方が母にとって良いのではないか? と考えているそうです。


しかし、さすがは発言小町のみなさん。レスには厳しい意見も並びます。


「あなたは、何様ですか? たとえ娘でも親の夫婦関係に口出し無用です」。また「お父様はもしや、生き急いでいるのでしょうか。糖尿病になったが故に、ヤケになって『出来るうちに親孝行する、最後にやりたいことをまとめてやるんだ!』という心理なのかと思いました。」と父親を慮る意見も。


こうしたレスを受け、トピ主は「台所と風呂は作らないということなので、ホントに趣味部屋だけなんです。そのために1,000万円近く使うことに怒っているんだと思います」と母の怒りを代弁しました。


父親の身勝手にみえるこの行動は、はたして離婚理由として認められるのでしょうか? 岡村 茂樹弁護士に聞きました。


(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「母は離婚すべきか否か」はこちら、http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/1030/737476.htm?o=0 )


A.  岡村弁護士の回答「話し合いをし、夫婦の絆を再構築してはどうか」


ご両親は、夫が定年に至るまで連れ添ってきており、それまでの夫婦関係に特段の問題は生じていなかったと思われます。それだけに、今になって、離婚をして赤の他人に戻らなければならないほどの積極的、合理的理由があるのかを考えてみる必要があります。


離婚は、そのほとんどが、双方の合意に基づく「協議離婚」によりなされています。


通常、当事者間の話し合いによる「協議離婚」が成立しなければ、家庭裁判所の「調停」へと場を移しますが、ここでも行われるのは第三者を交えた話し合いです。


つまり、名称こそ「調停離婚」となりますが、裁判所における協議離婚にほかなりません。ただし、調停でも離婚できない場合、訴訟、つまり「裁判離婚」に持ち込まれます。


熟年夫婦の離婚問題の多くは、長年にわたり我慢を強いられ、不満が蓄積して最終的に爆発するという形で起こるように見受けられます。しかし、ご両親の場合は、きっかけは直近の「趣味の家」計画であり、長年の不満が爆発したわけでもなさそうです。


いっぽうで、夫の行動は、妻を意に介さず、晩年を迎えて自由奔放に振る舞っているかに見えます。その行動は妻の期待に反するものであり、妻が離婚を考える根拠にもなり得るものでしょう。


そこで、ご両親が話し合った場合ですが、夫が離婚に応じないために、妻が離婚を求めて訴訟を提起することも考えられます。裁判所で離婚が認められるためには、民法が定めた5つの離婚理由にいずれかに該当する必要があります。


5つの離婚理由とは「不貞行為」、「悪意で遺棄された」、「配偶者の生死が3年以上明らかでない」、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」です。


ご両親の場合、裁判所では、5つ目の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に該当するかどうかが争点となるでしょう。しかし、裁判所は、晩年を迎えた夫婦を強制的に離婚させるだけの「重大な事由」は存在しないとして棄却されると考えます。


ここは、長年連れ添ってきた夫の性格を知る妻として、転居して夫の舵取りをしながら生活を共にするしかないと思います。ご両親は、積み重ねのある夫婦であり、話し合いにより、お互いを再認識し、夫婦の絆を再構築することができるのではないでしょうか。




【取材協力弁護士】
岡村 茂樹(おかむら・しげき)弁護士
埼玉県さいたま市生まれであり、1982年の弁護士登録後33年間、地元近郊に密着する市井の弁護士として、市民の方々に寄り添いながら相談、依頼を受けています。
事務所名:岡村法律事務所
事務所URL:http://www.okamura-law.com/outline.html


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  • 田舎に離れを建てて母親を世話しつつ、ニート息子に農業を教えて両親の死後自活できるようにして、母親の死後その家を相続させようという父なりの深謀遠慮があるとみた。
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