環状交差点が普及するヨーロッパと、これから普及する日本の未来

5

2015年12月07日 22:00  FUTURUS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

環状交差点(ラウンド・アバウト)をご存知だろうか。

ヨーロッパを中心に普及している、信号のない交差点で、昨年から日本でも本格的に導入されたものだ。

とはいえ、まだまだ見慣れた存在とは言いがたく、環状交差点のメリット・デメリットについて触れ、欧米との意識差も比較してみたい。

環状交差点のメリット・デメリット

2011年の東日本大震災で問題となったことのひとつに、停電時の道路交通が挙げられる。

停電することで、地域すべての交差点の信号までブラックアウト、事故が多発することや、事故防止のために極端に速度低下、一時停止することで円滑な交通が妨げられてしまう。

環状交差点が着目されたのは、信号不要、停電時でも普段通りに機能することだ。

一方で、懸念材料としては日本では馴染みがないことで運転者が混乱したり、歩行者が渡りにくいといったことがあった。

試験導入期間を経て大きな問題がなかったことから、環状交差点は15都道府県、49箇所に導入されている。

混乱なし、大事故なし

導入した49箇所の環状交差点で、10月末までに起きた人身事故は5件、5名が負傷したが死亡・重傷事故はなかった。

また、1年以上経過した36箇所に限ると4件となり、導入以前の平均事故件数4.7件よりも減少している。

統計的にいうとまだサンプル数が少ないため、現時点で結論を出すのは早計ではあるが、概ね良好な結果といえよう。

特に、直進であっても環状にそってスピードを落として交差点を通過するため、スピードの出し過ぎによる重傷・死亡事故といったものを、抑制できる効果は認められそうだ。

この結果を踏まえ、警察庁では適切な場所への拡大採用を進めるという。

ヨーロッパとの風土・意識の違い

ヨーロッパでは広く採用されている環状交差点、日本でもそのような風景が広がるのだろうか。その点については、いささか疑問が残る。

というのは、環状交差点はその構造上、比較的広い面積を占有するため、日本のような市街地ではなかなか作りにくい。そのため北海道のような、ヨーロッパに近い風土の場所が適切であろう。

もうひとつ、大きな違いは交通に対する意識の違いである。

ヨーロッパで環状交差点が受け入れやすいのは、車を停止させることは無駄、円滑な交通の妨げになっているという意識がある。

平均速度をあげればあげるほど、目的地に到達するのが早いため、なるべく停止させたくないのだ。

一方、日本の場合はむしろ車を停止させて安全を確保したい、という意識が強い。例え、横からの交通がなくとも、赤信号で本線を停止させ、時間とガソリンを浪費することを容認している。

これを技術的に解決したのがハイブリッドカーであり、この無駄となっていた減速・停止を回生ブレーキでエネルギー回収、モーター駆動に生かしている。

ヨーロッパでハイブリッドカーが普及してこなかったのは、日本ほど信号で減速・停止しないために、エネルギー回収を効率良く行えないのも一つの理由として挙げられる。

信号で止まらないのであれば、エンジン車でも燃費が伸び、重い電池を積むハイブリッドカーとの差は大きくない。

環状交差点の普及とハイブリッドカーの効率は密接な関係にある。

環状交差点が普及すると、もしかしたらエンジン車も再び脚光を浴びるかもしれない。

【参考・画像】

※ リョウ / PIXTA

このニュースに関するつぶやき

  • 戦中に帝国陸軍が都市計画を下書きし、戦後は米軍が整備した相模原市中心部には、ロータリーが幾つかあった。それが70年代後半から通常の信号機付交差点に変えられ、ロータリーは全滅してしまった。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(3件)

ニュース設定