この頃耳にする「インボイス方式」って何?仕組とイメージから解説

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2015年12月09日 06:00  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

「消費税に軽減税率ってやつが導入されて、『インボイス』ってのが必要になるって、なんだか増税される上に複雑になって、泣きっ面に蜂って気がしねぇかい、熊さん?」

私が落語家なら、消費税増税をネタに創作落語を一席ぶちたいところだが、お後はよろしくなさそうだ。

前回の増税で景気悪化を招いたにも係わらず、2017年4月にはいよいよ消費税が10%に成る見込みだ。

この間、軽減税率や『インボイス方式』の導入を巡って議論が盛んに行われているが、いつの間にやら増税ありきの議論が進められてしまった気がする。

ところで『インボイス方式』とは何だろう。なぜ、軽減税率とセットで議論されているのか? 基本的なところを押さえておきたい。

まずは仕入税額控除の仕組みから

12月3日、自民と公明の両党は『消費税軽減税率制度検討委員会』を開いて『インボイス制度』の設計で大筋合意している。

現在は事業者が消費税を納税する場合、売上税額から仕入れ税額を差し引いた額を納税している。

分かり難いかも知れないので、簡単な例を作ってみたい。

あなたは文房具店で3,000円の万年筆を消費税(10%として)を含めた3,300円を支払って購入したとする。

それでは文房具店は消費者から預かった消費税300円を納税するのかというとそうではない。なぜなら万年筆を仕入れるときにメーカーに対して1,000円+消費税100円を支払っているからだ。

これによってメーカー側で100円納税することになるので、文房具店は300-100=200円を納税すれば良いことになっている。

これが、売上税額から仕入れ税額を差し引いた納税額だ。

そのため、この計算を裏付けるために、現在は仕入れ先が発行した請求書の保存が義務づけられているわけだ。

ところが軽減税率が導入されると、消費税が10%の商品もあれば、8%(あるいは5%)の商品もあるという事態が生じてしまう。これがちょっとやっかいなことになる。

そこで、既に軽減税率を導入しているイギリスやフランスなどをみると、『インボイス方式』が導入されている。これを真似れば良いだろうと言うことだ。

「インボイス」方式のイメージ

もともと『インボイス』とは送り状や納品書を示す言葉だが、軽減税率とセットで使われている『インボイス方式』では、仕入れ先に税額と、その商品を売った事業者を示す登録番号が記載される必要がある。

つまり、『インボイス方式』とは、現在の請求書に、納品物毎の税率と税額、登録番号が付加されたものを発行する方式だと考えれば分かり易い。単純化したイメージを作成したのでご覧いただきたい。

この『インボイス』の発行を義務づけるのだ。

『インボイス方式』が採用されれば、例えば販売時は消費税8%で売っておいて、仕入れは10%扱いにすることで、納税額を少なくしてごまかすといったことが難しくなる。

また、税額の確認や販売者の確認を追跡調査することが容易になってくる。

正しい議論は行われているか

ただ、この方式は事業者の経理負担が増えるし、経理システムの変更に時間やコストがかかってしまう。

そこで、軽減税率の導入直後は、一時的に現在の請求書に税率の違いをマーキングするだけで良いとする、簡易な方式が認められる予定だ。

とはいえ、いつかは対応せねばならないのだから、事業者にとっては頭が痛い所だろう。それに、軽減税率の対象を決めるのも、判断するのも面倒だ。

そもそも、軽減税率を導入してまで消費税を増税する必要は無いのではないか、といった議論がもっと盛り上がって欲しかった。

それは、法人税の軽減のために外形標準課税を拡大して、中小企業を倒産に追い込む(かもしれない)といったおかしな方向に向かっていることにも言えるのだが……。

【参考・画像】

※ 『請求書等保存方式』と『インボイス方式』 : 財務省

※ kou / PIXTA

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