今や中国は世界の中でも有数の工業国だ。
衣料から電子機器まで中国で生産されない工業製品はないといっても過言ではない。この生産を支えているのが低所得労働者だ。
彼らは安い賃金で単純作業を強いられており、それが安くて高性能な製品の源となっているのは周知の事実だ。
スマホを生産する工場の劣悪な労働環境、過労から自殺といった負の側面もメディアで報じられた。また、目覚ましい経済成長を続けてきたが、昨今その伸びが鈍化している。
変化する社会情勢に合わせ、安い労働者から高性能な工業用ロボットへのシフトがはじまろうとしている。
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世界有数の工業用ロボット輸入国
北京で開催された、世界ロボットカンファレンスでは、ロボット掃除機からドローンまで様々なロボットが展示されたが、その中でも注目は武骨な工業用ロボットだ。
工業用ロボットは、それまで多くの労働者が行ってきた単純作業を置きかえるものだ。
また、人間よりも高い精度で組みつけたり、複雑な制御をおこなうことで、これまで人間の労働者ではできなかったことが効率よく行えるのも特徴のひとつだ。
“世界の工場”だけに、この工業用ロボットへのシフトの影響は大きい。
2年前、既に世界一の工業用ロボット輸入国となり、2018年には世界で3番目に多く、工業用ロボットを保有することになると予想されている。
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全労働者に対するロボットの割合は、他の工業先進国に比較すると依然低いが、今後の成長の潜在能力は高い。
世界に影響を与える「インダストリー4.0」
急激に工業用ロボットへとシフトする背景には、2011年にドイツが打ち出した『インダストリー4.0(第4次産業革命)』に大きく影響されている。
工場のデジタル化により高い効率を求め、コストを削減する手法は、国際社会における競争力を飛躍的に上げるものだ。
『インダストリー4.0』を進めるには、労働集約型の従来の組立工場では実現できないことは言うまでもないだろう。
工業用ロボット生産国への変化
ドローン技術をみればわかるように、中国は既に、単なる“世界の組立工場”ではない。
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最先端技術を持ち、中国国内で高度な製品を生産することができる。
これまで輸入が盛んだった工業用ロボットも、最先端技術が集まる上海で、最新鋭の工業用ロボットが開発されている。
またロボット研究も盛んとなっており、世界中からロボット研究者や起業家を受け入れるとしている。
労働者はどこに行くのか?
ここで一つの疑問がわく。
今現在多くの労働者たちが働いているが、ロボット化が進むと彼らはどこへいくのだろうか。
もともと地方出身者が多いとされる工場労働者であるが、職を奪われると地方へと戻るのだろうか。
それとも失業者として都市にとどまり、スラム化、治安の悪化を招くのだろうか。
もっとも、単純労働からの解放により、よりクリエイティブな仕事へとシフトできたらそれが理想なわけだが……。
ロボットが人間の職場を奪うのはSFでのテーマのひとつであるが、10億人の人口をもつ中国でのインパクトは大きく、“デストピア”にならないことを祈るばかりである。
【参考・画像】
※ China Wants to Replace Millions of Workers with Robots – MIT Technology Review
※ Supertrooper / Lienhard.Illustrator – Shutterstock