夫が妻子を置いて行方知れずにーー「蒸発夫」と離婚する方法

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2015年12月22日 11:41  弁護士ドットコム

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夫が荷物をまとめて、姿を消してしまったーー。


弁護士ドットコムの法律相談には時おり、そんな相談が寄せられます。


家族は右往左往しますが、時間が経つにつれ、「きっぱりと縁をきって、子供と新しい生活を始めたい」と考える方もいるようです。


しかし、連絡がつかない相手とどのように離婚ができるのでしょうか?


ある方は「夫が4年前のある日、私と子供を置いて蒸発してしまいました。夫の実家には、公衆電話から連絡が入るようで、生きてはいるようです。ただ、4年もの間、生活費はもちろん養育費も支払いがありません」といい、離婚だけでなく、養育費の請求も考えていますが、それも可能なのでしょうか?


西田広一弁護士に詳細な解説をしていただきました。


A.  相手の所在が不明でも養育費や慰謝料の請求が可能。


生きてはいるけれども、所在が不明という場合、状況により「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)、あるいは「婚姻を継続し難い重大な事由」(同条1項5号)に該当して離婚できるときがあるでしょう。


「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助義務を果たさない場合です。


「婚姻を継続し難い重大な事由」は、婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことです。


4年間の蒸発で婚姻費用も一切払わず何の連絡もない状態というのは、この「悪意の遺棄」あるいは「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しますから離婚可能です。


過去の裁判でも、1年程度の行方不明で同様に理由で離婚を認めた裁判例があります。


しかし、所在不明の相手と、どうのように離婚手続きを進められるのか不安があるかもしれません。


通常、離婚訴訟を提起するためには、その前に、調停を経る必要があるとされています(「調停前置主義」、家事手続法257条)。しかし、夫が蒸発しているときは、調停を経ずに離婚訴訟を提起できます。


そして、離婚訴訟提起の際に夫の居所や住所が分からない場合には、「公示送達」によって訴状を送達できます(民訴法110条)。送るといっても、相手が最後に住んでいた所在地にある簡易裁判所に申し立て、裁判所に掲示、官報に掲載する手続きとなります。


裁判には、夫は出頭しないでしょうが、質問者の尋問などをして次回の判決となるでしょう。


また「蒸発」であっても、慰謝料や養育費の支払いを求められます。慰謝料、財産分与、養育費などは質問者の言い分のみで判断されますが、適正な証拠のある範囲で判断されると思われます。


通常、慰謝料請求権は、損害と加害者を知った時から3年の時効です。しかし判決があると、判決から10年の時効となります。


財産分与に基づく請求権も、通常は離婚から2年以内であるのに対し、判決があったときから10年で時効となります。


金額が決まっている養育費については、各支払期日から5年で時効となります。


法律には、ご相談者が直面しているような状況に対処する手立てが用意してあります。しかし、慰謝料請求権のように3年で時効となるようなものもありますので、早期に弁護士に依頼して対処されるようにして下さい。




【取材協力弁護士】
西田 広一(にしだ・ひろいち)弁護士
1956年、石川県小松市生まれ。95年に弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪を拠点に活動。大阪弁護士会消費者保護委員会委員。関西学院大学非常勤講師。最近の興味関心は、読書(歴史小説)、食品の安全、発達障害など。

事務所名:弁護士法人西田広一法律事務所
事務所URL:http://law-nishida.jp


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