ラマディ陥落か、ISISで残ったのは外国人戦闘員だけ

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2015年12月24日 17:31  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

 イラク西部アンバル州の州都ラマディには、今ではテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)の外国人戦闘員しか残っていない。州知事のスタッフが22日夜、本誌に明かした。5月にISISがラマディを制圧した際、ISISを支援した地元のイスラム教スンニ派民兵はイラク軍の大規模攻勢をを前に怖じ気づき、市外に逃亡した模様だ。


 地元のスンニ派の一部は、市民に紛れて長期間潜伏する「スリーパー・セル」や二重スパイとしてISISに協力していた。彼らが逃亡した今、抗戦を続けているのは数百人の外国人戦闘員だけだと、アンバル州のソハイブ・アルラウィ知事の補佐官兼報道官ムハナド・ハイムールは本誌記者宛ての電子メールで伝えた。


「ダーイシュ(ISISのアラビア語の略称)に関与した地元の人々は逃亡した。市内に残って戦っているいるのは外国人の戦闘員だけだ」


住民を人間の盾に立てこもり


 ハイムールによると、イラク軍の攻勢で市の中心部まで追い込まれた外国人戦闘員は、人質を「人間の盾」にするため「住民が市内から脱出するのを阻止している」という。


 イラク当局は今月に入って、クリスマスまでにラマディを奪還できる見通しを発表。イラク軍と地元のイスラム教シーア派民兵組織は米軍主導の有志連合の空爆に支援され、22日にラマディ中心部に進攻した。作戦は「計画通りに進んでおり、大きな勝利をもたらすだろう」と、ハイムールは述べ、クリスマスまでにラマディを解放するという目標に「着々と近づいている」と保証した。


 しかし、22日に電話で記者会見を行った有志連合の対ISIS作戦担当の米国防総省報道官スティーブ・ウォレン大佐は、ラマディ解放にはもっと時間がかかると語った。


「ラマディの完全な解放を宣言できるのはかなり先になる。攻略困難な地区が多くあり、1つずつ切り崩していかねばならない」


 イラクの首都バグダッドから約90キロの戦略的要衝ラマディを奪還できれば、14年6月以降、支配地域をイラクの広い地域に広げていたISISに対し、イラク政府は決定的な勝利を挙げることになる。サダム・フセインの出身地ティクリートは3月末に解放され、ISISの戦闘員が多数敗走したが、ラマディのほうがティクリートよりも大きな都市で、首都バグダッドにも近い。


イラク兵になりすまして残虐行為を


 5月にISISの手でラマディを制圧されたときは、ISIS掃討を誓うイラク首相、ハイダル・アル・アバディ率いる「挙国一致」政権の面目はまるつぶれになった。22日に市中心部に入ったイラク軍は自爆攻撃や狙撃、建物に仕掛けられた爆弾などに手を焼いたと、イラクのテロ対策局の報道官はAFPに語った。ウォレン報道官も、ラマディは建物が「非常に密集した」都市で、「狭く入り組んだ路地」に手こずらされると述べている。


 アンバル州政府はラマディ解放に備えて、避難した住民が自宅に戻れるよう発電機や給水設備を設置するなど、「安定化計画を実施する準備を進めている」と、ハイムール報道官は楽観的だ。


 だがウォレン報道官のツイッターへの投稿をみると、ISISはラマディの東に位置する都市ファルージャで、イラクの治安部隊の兵士になりすまして「残虐行為を働くよう」戦闘員に命じたという。


 防衛・安全保障の分析会社IHSジェーンズによると、今年に入ってISISは毎月後退を余儀なくさせられ、今や年初に比べ支配地域は14%縮小している。イラク軍とシーア派民兵組織はこれまでにティクリートと北部の都市バイジにあるイラク最大の製油所を奪還。しかし、5月にラマディを失ったために対ISIS作戦は当初の計画より遅れ、ISISの本拠地になっている北部の都市モスルの奪還は来年に持ち越された。




ジャック・ムーア


このニュースに関するつぶやき

  • ISIS自体が上級幹部が死にすぎて指揮系統が滅茶苦茶になって蜘蛛の巣から蜘蛛の子状態になったのかな。あとは蜘蛛の子同士で連携しないかぎりは無法地帯に陥るだけかと。
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